ふたたび大津市政に話を戻します。財政運営および予算編成に関連して、財源確保の観点から庁舎整備について記します。
庁舎整備はゼイタクではなく、古い、狭い、弱いという課題克服のための切実な話です。
これまで耐震診断を行ったほか、整備の必要性や手法について公募委員にも加わっていただき種々検討してきた経緯があります。
こうした中、市役所の隣接国有地を利用できることとなり、現地建て替えの可能性が広がりました。とはいえ庁舎整備は大事業。いまのところ市民の理解はとても得られていない状況です。
この項目では、何がなんでも庁舎を建てるべしなどと主張するものではありません。
むしろその反対で、庁舎整備の実現性が大幅に下がりつつある現実を市民に説明すべきだと主張するものです。ここ3年ほど庁舎問題に積極的に取り組んでこなかったため、期間限定の「合併特例債」の活用が見込めず、庁舎整備が限りなく遠のきつつあるという状況説明を、今の市政の責任者として行うのが市民への務めではないか?という問いかけです。
このまま手をこまねいていては、大きなチャンスを見逃して将来にツケを残した市長と言われかねません。
大津市政7(財政運営と予算編成・合併特例債をめぐって)
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2015/09/10
大津市政7 ~財政運営および予算編成~ 合併特例債をめぐって
話のついでに、財源確保の観点から大きな問題に直面している庁舎整備について述べます。
市民からご覧になると市庁舎は市職員の執務場所であり、ご自分は年に一度行くか行かないかの縁遠い所。庁舎整備には関心が薄いかも知れません。
しかし市の業務は、戸籍、住民基本台帳、税、国保、国民年金、福祉、介護、消防、救急、水道、ガス等々、市民生活の全般に及んでいます。
これらに関する膨大な情報を蓄積して日々更新・活用しており、また各種サービスの担い手を抱えています。市庁舎も中で働く職員も市民の財産です。
外観からは分かりませんが大津市庁舎は、躯体、設備とも老朽化が著しいうえ、昭和42年の建設当時から人口が2倍以上になっているため大変狭く、執務空間はもちろんのこと福祉や税、戸籍など窓口スペースの不足が深刻です。
さらに問題なのは、耐震性能が公共施設として守るべき基準を大幅に下回っていること(基準耐震指標が0.9必要であるところ最低箇所はわずか0.11)。大規模地震の際には、とても来庁者や職員の安全を守ることができません。いま「おもてなしの日」があるようですが、強度的には「おもてなし」どころではないのです。いざという時、災害時緊急対策や復興対策の拠点施設が機能しないという最悪の事態は何としても回避しなければなりません。
そこで市は、10年ほど前から庁舎整備の手法や財源について様々な検討を重ねてきましたが、折から、隣接国有地利用の目途がたち、経費面でも建設中の市民サービス維持の面でも大変有利な現地建替プラン(既存建物一部活用、仮庁舎不要)の実現可能性が大きく開けました。
そして平成26年10月、国は大津市をこの土地の処分の相手方とし、とりあえず2年間は大津市が国有地の管理を受託するという契約が結ばれました。
越市長は庁舎整備の必要性に対する認識が低かったのか、或いはマニフェスト事業以外の支出を回避したかったのか長らく傍観者のような態度でしたが、議会からも認識を問われようやく管理受託契約となったところです。
そして、いまから一定期限内に庁舎建設を完了すれば極めて有利な「合併特例債」が活用できます。
この起債は、平成の大合併による新市町村建設計画の事業費として特例的に起債できる地方債で、事業費の95%に充当でき国が返済の75%を負担してくれるという、大津市にとって(どこの自治体にとっても)極めて有利な財源です(償還期間は3年据置の25年以内)。発行期限は合併から10年(平成18年度~27年度)ですが、合併建設計画の延長の議決があれば5年間の延長は可能です(平成32年度まで)。
もし国有地を購入するなら、大津市は2年の受託期間内に態度を決めなければなりませんが、このことと合併特例債の活用は切り離せないワンセットの話です(隣接国有地以外に移転先を決めて用地交渉のうえ取得し、平成32年度までに設計、建設を完了することは事実上不可能です)。
もし仮に、庁舎の建設費が100億円とすれば、起債95億円、当座の一般財源は5億円です。将来的には95億円の70%(66.5億円)は交付税で返ってくるので、実質一般財源は利息も合わせて40億円にも達しないと考えられます。もちろん決して安くない金額ですが、大津市の一般会計予算の4%未満の額で、しかも分割払いです。
大津市はこれまで学校やその他の公共施設の耐震化を優先してきましたが、それが一段落した今、大規模災害への備えの点からも庁舎整備は待ったなしの課題です。そして越市長はご自分の任期中に、隣接地と特例債がセットで活用できる千載一遇のチャンスを迎えています。というより正確には、チャンスを逃しかけていると言った方がよいかも知れません。特例債の期限は今年を入れてもあと5年。それなのにまだ計画作りの段階というのではあまりに遅すぎると思います。これを見送っても庁舎整備は避けて通れない重要課題です。いずれ、より高い事業費で、圧倒的に不利な財源で着手せざるを得ません。
民間住宅の耐震改修も思うように進まない中で庁舎に税金をかけるのか、という声も当然あるでしょう。住宅耐震化も大事ですが、災害時の市役所の機能維持は別次元の問題として極めて重要です。庁舎整備は十分な市民合意を得て進めるべき大事業ですが、内部的な調査検討はすで2回も実施済みであり、市民への問題提起および説明の機会はこれまでにあったはずです。その機会を作ろうとしなかったわけですから、現段階で庁舎整備が市民合意を得ているとはとても言えません。その中で整備を前提とした合併特例債の話を持ち出すことは現実離れかも知れません。
しかし、越市長は、いま極めて有利な財源を活用するかしないかの分かれ道に立っておられます。次の市長(或いは越市政2期目)の時は、特例債の活用は現実的に不可能です。その選択の時は今です。越市長は、「あえて合併特例債を活用しない」、すなわち「将来に約束される極めて大きな利益をあえて求めない」という大津市にとって重大な決定を行うことを、市民に対し明らかにすべきだと考えます。停留所で待っていても既に発車したバスには乗れません。越市長は、もう巡ってくることはないバスを見送る考えのようです。それならそうと市民に説明すべきです。そして、「大地震が来ても庁舎の機能維持はこのように行うから大丈夫」という対案を同時に示すべきです。それが市長の責任でしょう。
ちなみに越市長は、毎年度の予算の見た目(すなわち事業費)を大変気にされます。大津市民の利益を考えるなら市の直接負担である「一般財源」がいくらかが重要です。これに国県補助金や起債などを足すと事業費になります。起債は借金ですが、だから悪ではありません。負担の平準化になるうえ、優良な起債もあります。一般財源を抑えつつ補助金などを最大限に活用して事業費を確保し、駅周辺整備、道路整備、福祉の充実、産業の振興などを進めるのが市の仕事です。仮に前年と比べ事業費が増えても一般財源が減れば収支両面において市民のためになるわけですが、越市長は、あくまで事業費を減らすことを第一とする発想です。その理由は、「市民の印象は新聞の見出しなどに左右されるのであり、見出しにはまず事業費が載る」というものです。
説明し理解を得て大津市のために良いことをするという姿勢が重要ですが、特例債の話も事業費のアナウンス効果にこだわる話も根は一つという気がします。
マスコミを通じて広がるイメージ(表層的な印象)や目先の自分の利益ではなく、将来にわたる市民の利益を追求するのが政治家というものでしょう。
ついでと言いつつ長くなりましたが、財源確保に関して合併特例債という今だけの制度にふれました。最近の例では米原市が合併特例債を活かして庁舎整備を進めているとの報道がありました。
市民からご覧になると市庁舎は市職員の執務場所であり、ご自分は年に一度行くか行かないかの縁遠い所。庁舎整備には関心が薄いかも知れません。
しかし市の業務は、戸籍、住民基本台帳、税、国保、国民年金、福祉、介護、消防、救急、水道、ガス等々、市民生活の全般に及んでいます。
これらに関する膨大な情報を蓄積して日々更新・活用しており、また各種サービスの担い手を抱えています。市庁舎も中で働く職員も市民の財産です。
外観からは分かりませんが大津市庁舎は、躯体、設備とも老朽化が著しいうえ、昭和42年の建設当時から人口が2倍以上になっているため大変狭く、執務空間はもちろんのこと福祉や税、戸籍など窓口スペースの不足が深刻です。
さらに問題なのは、耐震性能が公共施設として守るべき基準を大幅に下回っていること(基準耐震指標が0.9必要であるところ最低箇所はわずか0.11)。大規模地震の際には、とても来庁者や職員の安全を守ることができません。いま「おもてなしの日」があるようですが、強度的には「おもてなし」どころではないのです。いざという時、災害時緊急対策や復興対策の拠点施設が機能しないという最悪の事態は何としても回避しなければなりません。
そこで市は、10年ほど前から庁舎整備の手法や財源について様々な検討を重ねてきましたが、折から、隣接国有地利用の目途がたち、経費面でも建設中の市民サービス維持の面でも大変有利な現地建替プラン(既存建物一部活用、仮庁舎不要)の実現可能性が大きく開けました。
そして平成26年10月、国は大津市をこの土地の処分の相手方とし、とりあえず2年間は大津市が国有地の管理を受託するという契約が結ばれました。
越市長は庁舎整備の必要性に対する認識が低かったのか、或いはマニフェスト事業以外の支出を回避したかったのか長らく傍観者のような態度でしたが、議会からも認識を問われようやく管理受託契約となったところです。
そして、いまから一定期限内に庁舎建設を完了すれば極めて有利な「合併特例債」が活用できます。
この起債は、平成の大合併による新市町村建設計画の事業費として特例的に起債できる地方債で、事業費の95%に充当でき国が返済の75%を負担してくれるという、大津市にとって(どこの自治体にとっても)極めて有利な財源です(償還期間は3年据置の25年以内)。発行期限は合併から10年(平成18年度~27年度)ですが、合併建設計画の延長の議決があれば5年間の延長は可能です(平成32年度まで)。
もし国有地を購入するなら、大津市は2年の受託期間内に態度を決めなければなりませんが、このことと合併特例債の活用は切り離せないワンセットの話です(隣接国有地以外に移転先を決めて用地交渉のうえ取得し、平成32年度までに設計、建設を完了することは事実上不可能です)。
もし仮に、庁舎の建設費が100億円とすれば、起債95億円、当座の一般財源は5億円です。将来的には95億円の70%(66.5億円)は交付税で返ってくるので、実質一般財源は利息も合わせて40億円にも達しないと考えられます。もちろん決して安くない金額ですが、大津市の一般会計予算の4%未満の額で、しかも分割払いです。
大津市はこれまで学校やその他の公共施設の耐震化を優先してきましたが、それが一段落した今、大規模災害への備えの点からも庁舎整備は待ったなしの課題です。そして越市長はご自分の任期中に、隣接地と特例債がセットで活用できる千載一遇のチャンスを迎えています。というより正確には、チャンスを逃しかけていると言った方がよいかも知れません。特例債の期限は今年を入れてもあと5年。それなのにまだ計画作りの段階というのではあまりに遅すぎると思います。これを見送っても庁舎整備は避けて通れない重要課題です。いずれ、より高い事業費で、圧倒的に不利な財源で着手せざるを得ません。
民間住宅の耐震改修も思うように進まない中で庁舎に税金をかけるのか、という声も当然あるでしょう。住宅耐震化も大事ですが、災害時の市役所の機能維持は別次元の問題として極めて重要です。庁舎整備は十分な市民合意を得て進めるべき大事業ですが、内部的な調査検討はすで2回も実施済みであり、市民への問題提起および説明の機会はこれまでにあったはずです。その機会を作ろうとしなかったわけですから、現段階で庁舎整備が市民合意を得ているとはとても言えません。その中で整備を前提とした合併特例債の話を持ち出すことは現実離れかも知れません。
しかし、越市長は、いま極めて有利な財源を活用するかしないかの分かれ道に立っておられます。次の市長(或いは越市政2期目)の時は、特例債の活用は現実的に不可能です。その選択の時は今です。越市長は、「あえて合併特例債を活用しない」、すなわち「将来に約束される極めて大きな利益をあえて求めない」という大津市にとって重大な決定を行うことを、市民に対し明らかにすべきだと考えます。停留所で待っていても既に発車したバスには乗れません。越市長は、もう巡ってくることはないバスを見送る考えのようです。それならそうと市民に説明すべきです。そして、「大地震が来ても庁舎の機能維持はこのように行うから大丈夫」という対案を同時に示すべきです。それが市長の責任でしょう。
ちなみに越市長は、毎年度の予算の見た目(すなわち事業費)を大変気にされます。大津市民の利益を考えるなら市の直接負担である「一般財源」がいくらかが重要です。これに国県補助金や起債などを足すと事業費になります。起債は借金ですが、だから悪ではありません。負担の平準化になるうえ、優良な起債もあります。一般財源を抑えつつ補助金などを最大限に活用して事業費を確保し、駅周辺整備、道路整備、福祉の充実、産業の振興などを進めるのが市の仕事です。仮に前年と比べ事業費が増えても一般財源が減れば収支両面において市民のためになるわけですが、越市長は、あくまで事業費を減らすことを第一とする発想です。その理由は、「市民の印象は新聞の見出しなどに左右されるのであり、見出しにはまず事業費が載る」というものです。
説明し理解を得て大津市のために良いことをするという姿勢が重要ですが、特例債の話も事業費のアナウンス効果にこだわる話も根は一つという気がします。
マスコミを通じて広がるイメージ(表層的な印象)や目先の自分の利益ではなく、将来にわたる市民の利益を追求するのが政治家というものでしょう。
ついでと言いつつ長くなりましたが、財源確保に関して合併特例債という今だけの制度にふれました。最近の例では米原市が合併特例債を活かして庁舎整備を進めているとの報道がありました。