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2015/10/04

32)大津市政の現状14(教育行政・学力調査)

 教育行政の3番目は全国学力・学習状況調査(学力テスト)です。これは中3と小6だけを対象とし、数学(算数)と国語に限って行われる「状況調査」であり、子どもの学力や学校のレベル(?)の正確な指標ではありません。しかし全国実施のためつい比較したくなるのが人情で、結果公表を求める世論が多数だと思います。逆に、この調査をよく知っている人は公表に慎重であるようです。
 私自身、かつては「公表派」でしたが、現場の話を聞き実態を知るにつれ慎重論に傾きました。

 現場の話はつぎのようなものです。
・子どもの成績や能力の正確なバロメーターであると解釈され、子どもたちを過剰な競争に巻き込むおそれがある
・各家庭の経済状況と学力調査の結果にはある程度の相関関係があると考えられる。塾などの教育にかける費用が捻出できる家庭は、結果的に子どもの基礎学力が高くなる傾向がある
・もう少し広げて見ると、家庭の経済状況による地域間の格差が顕在化する可能性がある。これは家庭にも地域にも責任のない統計学的な話であるが、結果として点数の高低が地域のイメージを左右する可能性がある
・学校間の成績の比較ではなく、学力調査により個々の子どもや家庭に対する教育の在り方を子ども本人、その保護者、教員が相互に理解しあうこと、その家庭だけで対応できない教育環境は学校と地域が連携して支えていくことを共通理解しあうことが大事である
・誰のための教育か、何のための学力状況調査なのか、学校教育の本旨は何か等の原点に戻って考えるべきである

 これらは公表を望まない保護者等の意見であり、いずれもうなずける理由です。
 文科省の方針変更もあり今後は公表が進むでしょうが、ここにおいても現場の声や少数の意見にも耳を傾けることが重要であると考えます(大津市は昨年からレーダーチャート方式で結果公表しています)。

大津市政の現状14(教育行政・学力調査)









大津市政14 ~教育行政~学力調査

 ここで「全国学力・学習状況調査」の結果公表に関して記述します。
 この調査は一般に「学力テスト」と呼ばれていますが、これが誤解のもとかもしれません。ここでは「学力調査」と略記します。
 学力調査は、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検討し改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立て、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することを目的としています。
 対象は小学校6年生と中学校3年生に限定され、教科は、算数(数学)と国語(※3年ごとに理科も実施)における知識の習熟度や知識・技術を活用する力を調査、分析するとともに、対象児童生徒と学校に対して、学習環境、生活習慣、指導方法の取組、教育条件の整備状況等についても調査されています。

 ところが最近、この調査が児童生徒の「学力測定テスト」であり、結果は公表すべきとの見方が世間で多数を占めるようになり、中には、学校間比較の結果成績が低い校長の処罰問題にまで言及する首長が現れたかと思えば、高校入試の内申に学力調査の結果を取り入れるという自治体まで出てきました。学力調査の本来の趣旨から外れた首長の一方的な考えによる公表は、いたずらに児童生徒や保護者の不安感をあおる結果を招くだけです。
 文部科学省では、こうした公表をめぐる事態に対処するため、平成27年度実施要領において、学力調査の実施、公表は教育委員会の職務権限であり、調査の実施、調査結果の活用や公表の取り扱いは、教委が主体性と責任をもって当たることとしました。

 さて越市長も、就任後、学力調査の結果について、学校別の結果を公表すべきである、市民の税金によって運営されている公立学校に関して、その情報は公表し、市民に対する説明責任を果たすべきであると主張してこられました。
 地域や市民に必要な情報を開示し、それにより学校と地域が一体となって開かれた学校運営をしていくことは重要です。しかし、学力調査に関しては、その調査目的を理解されるならば、学校ごとの結果公表をすべしとはならないと思います。学校ごとの公表は一面的な序列づけと過当競争を招き、その被害を受けるのは子どもたちであろうと考えます。
 各学校は詳細に結果を分析し、今後の学校現場での指導方法だけでなく、児童生徒はもとより、家庭学習の重要性も考慮して保護者や学習支援地域ボランティアの方々等に対しても指導助言を行っています(各小中学校のホームページを見ていただければよくわかります)。
 また、教育委員会は学校現場の状況を把握し、教育センターを中心に必要な施策を行っています。

 学力向上は学校教育だけではなく、家庭での学習習慣等も大きく関わっています。いたずらに学校現場だけの批判をするのではなく、調査から見えた現状をしっかりと受け止め、学校教育はもとより家庭の教育力向上支援に向けた総合的な取り組みを市として考えていくべきではないのでしょうか。
 文部科学省から改めて通知されるまでもなく、学校教育、家庭教育、社会教育等に関しては教育委員会が職務権限として責任をもって主体的に取り組んでいかなければなりません。
 新しく設置された総合教育会議において、教育行政を主体的に展開する教育委員会と予算や人事の権限を持つ首長とが、未来を担う子どもたちの学力向上はもとより、一人ひとりが心豊かにたくましく生きる力を身につけられるよう、力を合わせて取り組みを進めていくことこそが改正された地教行法が求めているものであると考えます。