大津市は、食生活を通じた児童生徒の健全育成、さらには子育て支援、親の就業機会の確保などの理由から共同調理場方式による中学校の学校給食導入を決定しました。
今まで「愛情弁当論」による中学校昼食を堅持してきた教育委員会ですが、全国の自治体の多数が中学校給食を実施している中、これまで給食実施の内部検討を行ったこともあり、突然の方向転換というわけではありません。この項目は中学校給食導入の是非を云々するものではないことをあらかじめお断りしておきます。
学校給食は、子どもの栄養摂取や栄養教育、食に対する感謝の気持ちの醸成、食材を通じた地域産業への理解促進など「食育」の効果が期待される反面、基本は一律提供ですから個々の子どもの体格差や嗜好の違い等をどこまで適切にフォローすべきかが問題であり、また給食残飯(残滓)の大量発生が深刻な課題となっています。
さらに食物アレルギーへの対応や食材の安全性確保、食中毒のリスク管理など共同調理場方式による学校給食のあり方には数多くの懸案事項があるのも事実です。
これまで大津市が一部の中学校を除き学校給食を実施していなかったことに対し、PTAからの給食導入要望もありましたが、当の中学生の6割超は実は家庭弁当を望んでいる状況です。
また、越市長が導入されたスクールランチは利用率が大変低いものの、それを是非とも必要とする家庭にとっては保護者の負担軽減になっていると思われます。
こうした中、学校給食移行については、教育委員会自身が5年後を目途に実施する方針を決定したと聞きますが、前述した課題等について具体的な検討協議が十分になされたのかまったく不明です。しかも、調理場建設に必要な用地の確保など具体的な条件整備もないままに早々と市長から公表されたことにも違和感を覚えます。
そもそも弁当づくりは保護者にとってどれ位の負担なのか、保護者と生徒とのコミュニケーションツールとしての弁当の意義についてはどうか、食育を担うべき栄養職員の人数やその指導方針について議論したのか、一番の当事者である生徒の意見はどのように反映されたのか等々、課題や疑問は尽きません。
建設、運営に多額の税金を投入する給食導入は、市としての重要な政策決定です。ここで指摘したような数々の課題について本当に内部で熟議されたのでしょうか。これまでの越市長と教育委員会の協議の実情を知る私としては大きな疑念を抱かざるをえません。
これは政治日程をにらんだポイント稼ぎではないかと勘ぐる複数の声も聞きました。
合併特例債と同様に中学校給食の導入も明らかに説明不十分です。
越市長は市民への説明責任をしっかりと果たされるべきであると考えます。