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2015/10/17

37)大津市政の現状16(教育行政・社会教育)

 しばらく間があきましたが今回は社会教育(生涯教育)です。
 「大津市政」のページで同じテーマにつき正確を期すため法文を引用して記述していますが,
ここでは平たく書きます。もっぱら一般行政事務に従事してきた者にとって教育行政はなかなか難しいです。もし不十分な箇所があれば詳しい方の補足コメントをお願いいたします。

 全国民を対象として組織的に行われる教育活動のうち「学校教育」を除くすべてが「社会教育」です。幼児から高齢者までの生涯にわたっての学び(学習、趣味、文化、スポーツ等々の広範な分野における活動)を支援するわけですから守備範囲の広さには驚かされます。
 主な関連施設としては公民館、図書館、博物館、体育館、プールなどがあり、取組みとしてはこうした施設を活用した講座、展示、体験提供などがあります。美術展や写真展も文化振興に寄与する社会教育の一環です(これらの例示はごく一部に過ぎません)。

 社会教育は、古くは国民教化の手段とされましたが、今日では国民が生涯を通じた学びを通して心身共に豊かに生きるための環境整備として国や地方公共団体の任務が決められており、行政のたいへん重要な仕事の一つです。
 専門家からはよく「社会教育はいくらやってもやり過ぎということはない」との指摘があり、現場スタッフからは「日々の仕事を通して重要性を実感している」という声を多く聞きます。そして市民からは、社会教育全般でなく個別の体験にもとづく評価として、肯定的なご意見がたいへん多いと思います。

 しかし社会教育が重要であるといっても、稼いで食べるという日々の暮らしに直結せず(もっとも法によれば市町村教育委員会の事務には職業教育も含まれます)、カルチャーセンターやスポーツジムなど民間サービスは花盛りの今日、地方財政が厳しいなかで、ともすれば首長が手を抜きたいという誘惑にかられる行政分野かも知れません。
 
 いま大津市では、公民館や図書館のあり方の見直しが進められています。
 「学び」や「文化」などに関する施策の評価は、十人十色の個々人の知的満足度や「身についた感」を社会的・総量的に計測しようとする試みでもあり、誰もが納得する客観的指標の設定はなかなか困難であると思います。だからといって「無鑑査」で事業を進めていいはずがありません。
 適正評価に向けた努力は継続しつつ、こうした施策の見直しにおいては、利用者の声、現場の声に十分に耳を傾け、法の趣旨を意識しつつ、十分な協議・検討をおこなうことが大切であると考えます。


大津市政の現状16(教育行政・社会教育)










 

大津市政16 ~教育行政~ 社会教育(生涯学習)

 社会教育に関しては教育基本法の精神にのっとり、社会教育法において地方公共団体の責務、市町村の事務などが規定されています。
 社会教育は、「学校教育法に基づく学校の教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行う組織的な教育活動」と定義されており、その奨励に必要な施設の設置・運営、集会の開催、資料作製・頒布等の方法によって、すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して自ら生活に即する文化的教養を高めるような環境を醸成するよう努めなければならないとして、生涯学習の振興にも言及しています。
 併せて地方公共団体は、社会教育が学校教育や家庭教育と密接に関連していることから、「学校教育との連携確保に努め家庭教育の向上に資することとなるような必要な配慮と、学校、家庭及び地域住民その他の関係者相互間の連携及び協力の促進に資するよう努めなければならない」とされています。
 そしてこれに基づく市町村の事務として社会教育法第5条に19項目が掲げられています。
 学校現場においてコミュニティスクールの導入がクローズアップされているように、学校教育と家庭、地域関係者等との連携は今日的な課題解決に向けての新たな方向性だと言えます。

 しかし、少子高齢化、核家族化などによる社会関係の希薄化、子育て不安、児童虐待など家庭機能の弱体化が進む現代の社会では、社会教育を行う役割までが学校現場に求められています。
 学校は第一に教科教育等を施して人格形成を行う場所であり、保護者、家庭、地域の役割をすべて補完できる場所ではありません。しかし今日では、個々の家庭の個別的な問題にまで教職員が深く関わらざるを得ない状況にあります。
 こうした時代に社会教育が青少年及び成人に対しての組織的な教育活動という役割を果たすためにも、市は社会教育団体の育成や家庭教育の振興のために積極的な役割を果たすべきであり、「地域人材の学校」とも言うべき公民館等の社会教育施設の重要性は増しています。

 こうした中、越市長は行革の一環として公民館の見直しに乗り出されました。
 ここで越市長と教育委員会との協議経過を振り返っておきたいと思います。
 平成24年度事務事業評価で越市長が公民館のあり方検討を指示されたことを受け、平成25年1月、教育委員会は社会教育委員会議へ「公民館のあり方」を諮問、同会議で5回の協議が持たれ、併行して公民館長による検討会議も開催されました。
 同年10月に答申が出され、社会教育委員会議と教育委員との意見交換の後、3回の教育委員会協議会を経て、12月、「大津市の公民館のあり方について~地域の魅力が輝く大津の社会教育~」が議決され、市長との協議が行われました。

 協議内容の詳細は省きますが、教育委員会で議決された「公民館のあり方」の中に「一学区一公民館の体制を維持していく」との記載があったことが問題になりました。
 越市長は、支所の統廃合と合わせて公民館の整理も進める考えから、「支所をなくすことは人を置かないということであり、仮に公民館を残しても人を残すことはない」という主張をされました。
 これに対し教育委員会からは、市長指示により検討を重ね議論を尽くして議決した経緯を踏まえ「これは公民館のあり方に関する教育委員会の考え方である。公共施設すべてのあり方に関する全体の方向性が決まれば当然それに従う。文言削除や修正の必要はない」との説明がありました。
 ここでは双方の見解の紹介にとどめていますが最後は越市長が、「まずは行革の観点を考えている。公民館を残すか残さないかは最終的には予算の問題であり、予算権限は市長にある」と主張され、教育委員会の「あり方報告書」に市長意見を付記する形で決着することとなりました。

 先日、ごみ処理施設に関する投稿コメントで「検討過程の中で越市長の強引な誘導や捻じ曲げはなかったか」とのお尋ねがあり、「その件に関してはそのようなことはなかった」と私はお答えしました。この問答を想起された方もあるかも知れません。
 行革の項目で見たとおり越市長の改革は経費節減最優先で進められています。
 確かにそれも大事ですが、すでに指摘したとおり行革には複数の重要な観点があります。
 また同時に、大切な手順を省いてはならないと考えます。すなわち、現場の声、地域の声に耳を傾け、現状をどのように変えるのか(或いは変えないのか)について多数の知恵を集めて議論するという手順です。

 地域の力の低下が懸念される今日、公民館は単体として重要な存在であることに加え、大津市では支所と共に市民センターを構成し、学区単位のまちづくりの拠点として機能してきた実績があります。変わりゆく時代の中で永久にこの形がいいとは言えませんが、より望ましい形を展望するにあたって、是非ともいま述べた手順を踏むことが必要ではないでしょうか。
 社会教育に限っても図書館、博物館、芸能会館、少年自然の家等々、大切な施設は他にも多数あります。改革は力技(ちからわざ)の側面も必要ですが、いま現に存在する施設(資産)の見直しは丁寧に進めることが大切であると考えます。