しかし、市民ニーズの多様性や地域との関わりなどを考えると、集団確保一辺倒で十分なのでしょうか。さらに、幼稚園の在り方検討においても「階段の2段目」から踏み出す越流スタートを切ったことにより保護者の不信を招いているように見受けられます。
市は、10月下旬から12月にかけ、「市立幼稚園の規模適正化に向けた実施計画案」の保護者や地域に対する説明会を行い結果を公表しています。説明会では参加者から次のような意見が出されました。
・3年保育をすれば園児も増える。統廃合の検討を行う前に3年保育を優先して実施してほしい。
・子どものためと言うのであれば1年でも1日でも早く3年保育の実施が必要。
・統合しても従来の2年保育であれば園児数は増えずに同じことが繰り返されるのでは。
・預かり保育の時間延長をしてほしい。実施日も増やしてほしい。
・小規模園には小規模園の良さがある。画一的に基準を設けるべきでないと思う。
・園が小規模になったのは市がニーズを捉えていなかったからではないか。
・集団行動になじめない子どものためには小規模園も必要ではないか。
・集団生活を体験するために幼稚園に行くので、ある程度の集団規模は必要だと思う。
・一定の集団規模が必要なのは理解できるが、解決方法は統廃合だけか。
・市立幼稚園、小中学校は地域の核であり、出来れば残してほしい。
・地域との連携というが統廃合された地域からなくなれば連携も難しくなる。
・学区に1つは幼児教育施設が必要だと思う。
・(統廃合されると)小学校との交流、学びの連続性が失われる。
・市民の意見をしっかり取り入れてほしい。等々
かなりの部分を引用しましたが実際にはもっとこれら多くの意見が出されています。
越市長は、まずこのような意見をしっかり聞いたうえで適正化計画の作成を指示するべきではなかったでしょうか。階段の2段目とはこのことです。
「意見を聞くには手ぶらで地域に出かけられない。たたき台を示す必要があった」と越市長は反論されるかも知れません。しかし適正化計画はすでに具体的な実施計画のレベルになっています。これから市民の意見をきちんと反映することが現実的に可能なのでしょうか。また、越市長にその意思があるのでしょうか。
実はこれらの市民意見は「現場の認識」とも共通している部分が多いのです。
これまで担当課は、3歳児保育の実施をはじめとして多くの意見具申を行ってきましたが、越市長はまったく聞く耳を持たれませんでした。その模様は私の記憶ばかりでなく、教育委員会の会議録にもしっかり残されているはずです(公民館のあり方協議でもまったく同じ状況でした)。
その結果として、適正化計画は越市長の意図を色濃く反映したものとなり、それに対して上記のような市民意見が出されたわけです。
先の記事で市民センター統廃合を理念なき改革と言いましたが、幼稚園、小学校の在り方を検討する際にも、その根本に「これから地域はどうあるべきか」というビジョンが欠落しています。
もちろん、教育については「まず子ども自身にとってどうか」という視点が重要であることは言うまでもありません。しかし「集団の確保」を最優先することについて、どれほど多角的、専門的な検討がなされたのか、市民の要望との調和を図ることについてどれだけの工夫がなされたのか大いに疑問です。小学校1年生からの英語教育にしても同じことが言えると思います。
越市長の「理念なき改革」は一体どのように評価されるのでしょうか。