6月のある日、私は草津市の社会福祉協議会に行き「何かお手伝いできることはないでしょうか」と尋ねました。さんざん迷ったあげくです。係の女性にうながされカウンターをはさんで座りました。「ボランティアのご希望ですね?」、「はい、スキルはないけれど動くのは苦になりません」、「ご希望の分野などありますか」、「齢も齢ですが、できることなら何でも、、、」、「いっぱいあります。90歳の方も活動されてますよ」、「ぎょぎょ」
こうして100以上あるボランティア団体の一つにつないでもらい、翌週から活動に参加しました。この団体は草津市社協の事業支援に特化したグループで「キラリエ」という複合施設で活動しています。当面の業務は、市内の小中学校はじめ各施設のトイレに配置する生理用品の小分け作業です。段ボール箱から取り出し1個ずつビニール袋に入れるのですが、SOSの連絡先が書かれたカードを同封します。単純きわまりない反復作業です。
この日のメンバーは私をいれて4人でみんな手を動かしながら挨拶しました。代表者は私より一まわり上の男性、女性の一人は次に学童保育の仕事に駆けつける人、もう一人の女性は複数のボランティアを掛け持ちし、私に手話グループに入れと勧めてくれました(にこやかにお断りしました)。2時間作業してあっさり解散。なかなかいい感じです。この団体はバルーンアート(細長い風船細工)の出前もしていますが、私は今のところこの作業だけ参加するつもりです。
草津市社協の人との立ち話の中で、大津市社協のXさんの名前が出て驚きました。Xさんは別組織から大津市社協に出向していた人で、私が高齢福祉担当課長であった時、出向期限の延長について「親元施設」に頼みに行ったことがあります。もちろんこの件は黙っていましたが世間は狭いものです。Xさんの名は草津市社協でも売れています。いまは新天地で活躍されているそうです。
別の日、私は草津川の河川敷公園(であい広場)の管理事務所を訪ね、草むしりをさせてくださいと言いました。ここでは「グラッシー」という市民団体が活動しています。10数年まえのこと、アヅマと私はその団体の設立会議に参加しました。公園のグランドデザインに携わった人が私たちの知人であった縁によります。当時は時間の余裕がなく、いずれ参加しようという話で終っていました。
さいわい私の申し出は笑顔で受け入れられ、次の土曜日に初出動しました。そのエリアを受け持っている数人の人と一緒に植栽の根元の雑草をぬきました。両側が堤防ですから、お湯を抜いた長い湯船の底で熱気につつまれ這いまわっている感じです。係の人が大丈夫かと声をかけてくれますが、私は家でもっとキツい作業をしているので平気です。
2回目の活動では除草してから草花の苗の植えました。前回あいさつした女性から、あなたはぜひレイカディア(龍谷大学の市民講座)に行きなさいと言われました。いや勉強は苦手ですと答えたら、そんならガーデニングや陶芸教室が向いていると二の矢が来ました。ホームページを見て考えますと答えましたが、次回は態度を明確にさせなければなりません。
こうして6月から地域デビューを果たしました。私は人嫌いではないけれど(むしろ逆)、これまでは家族との時間に満ち足りていたので友人以外にあえて世間の人と交流する気が起こらなかったのです。しかし世間なんてどうでもよいと思いません。人の役に立ちたい気持ちは人並みにあります。70歳で献血できなくなった時は門前払いをくった気がしました。ならばとユニセフのマンスリーサポート(毎月寄付)も始めました。
一方で、アヅマの手さばきを思い出しつつ料理をつくり息子一家にクール便で送りつけています。毎回とても好評ですが、私の腕がいいのか彼らが優しいのかというファクトチェックが難しいところです。あまり調子に乗ってはいけないと自戒する間もなくメニューが尽きてしまいました。ではいかがいたそう。私は要するに、自分のためにだけ時間を使うことに飽きたのです。結構な身分やなあと思う方がおられても甘受するしかありません。
このような経過があって今回はじめて世間にアプローチしました。「まよったあげく」と冒頭に書きましたが、実際に行ってみれば皆とても気楽そうに楽し気に活動しています。いや確かにこんな世界もありました。私の市役所時代(企画、協働、まちづくりなどの分野にいたとき)親しくお付き合いさせていただいた人々の世界です。あの時から時間がたち、立場が変わり、場所も変わって、「そちら側」に仲間入りした気持ちです。
今週はもう一つの団体を見学させてもらう予定です。私事ばかり書いてしまいました。
【棚から言の葉】
~ いやあ、こんだけ暑いと帰ってシャワーあびて「これ」やらなあかんねえ!~
桐生でいつもすれ違うおじさんの言葉。互いに名前を知りませんが、最初から「よい人オーラ」を発していたこの人は、最近私を見かけると旧友に再会したような笑顔をみせてくれます。先日はおじさんが東屋に座っており、私が前をとおり過ぎる間ずっと会話がありました。おじさんが「これ」と言いながらジョッキを傾ける真似をしたので、私もふりかえりつつ同じ仕草で答えました。もう友達です。