大津市政 4 ~市長としての姿勢 ①自治体運営と企業経営~

 先に「資質」について述べましたが、これから、政治家としての基本的な考え方、すなわち市長としての姿勢について記述します。

   自治体運営と企業経営
 越市長の政治家としての大きな特色は、本来は別物の自治体運営と企業経営を区別せず、大津市を一つの企業のように見なして経営しようとする姿勢にあり、行財政改革も予算編成も人事異動も全てこうした考えが基調となっていると私は見ています。
 そもそも株式会社は「有限責任」の組織であり、仮に社長の失敗によって倒産してもその責任は株主の出資金の総額を超えることがありません。倒産は、従業員の失業を始め地域経済の衰退、法人税収の消失など無視できない社会的影響を伴う場合があるものの、倒産した以上は現実的にその責任をとるべき主体がなく、企業はこうした損害を突き詰めて問われることがありません。
株式会社は決して無責任な存在ではありませんが、世の約束事として、いまの社会経済のルールとして、企業責任には自ずから限度があり、そのもたらした損失は最終的には外部に転嫁できることとなっています。

これに対して地方自治体は(国家も)、「無限責任」の組織です。
住民の生命財産を守り、教育により次世代を育て、産業経済の基盤を整備し、環境を次代へ引き継ぐことに伴う責任は限りがなく、国家や自治体の外部に転嫁しようがありません。会社の場合、破産をすればそれ以上の責任の追及ができないことに対し国家や自治体に破産宣告はありません。
 従って有限責任体である会社において経営者の最大の責任の取り方は辞任でしょうが、無限責任体である自治体の場合、首長が辞任すればそれでお終いとはなりません。自治体の運営責任には限りがありません。
越市長は、「私の政策に文句があるなら次の選挙で落とせばいい」と臆することなく発言されます。裏を返せば「自分は民意により市政を任されたのだから4年間は思うようにやる」ということでしょうか。
しかし、市長の「落選」は「今後4年間」にかかる未来の話であり、「これまでの4年間」の市政運営の責任の重さと天秤にかけられるものではありません。
現在の責任を問う手段として不信任決議やリコールもありますが、後述するように、市長任期の4年を超えてようやく結果の可否が見えてくる行政テーマはたくさんあります。だからこそ市長には深い自覚が求められます。公職の重みへの感覚です。
こうした市長の責任の限りない重さに対して、越市長は畏れかしこまるような気持ちをお持ちでしょうか。十二分に認識をお持ちでしょうか。越市長の言動を拝見して私はこの点が疑問なのです。

 このことに関連して、有権者の負託を越市長がどのように受け止めておられるかを見たいと思います。
 選挙で選ばれることの意味は大変重く、首長の正当性を担保しパワーの源泉ともなるわけですが、越市長はその点を重視されるあまり、ご自分の意思は市民の意思であると見なし、ご自分を絶対視して事を進めがちであると私の目に映ります。
 有権者は、候補者のマニフェストや人となりを主な判断材料にするでしょうが、マニフェストに書かれる内容には限りがあり、候補者の人となりについても直接知る人以外はイメージの域を出ないのが普通です。有権者はこうした限られた情報を手掛かりに、候補者が当選後においても市民の声に耳を傾け、適切な市政運営をしてくれるであろうとの期待を込めて一票を投じるのであり、「あとは好きにやってくれ」と白紙委任するわけではありません。

 加えて投票率と得票率の問題もあります。
 2012年1月の大津市長選挙の投票率は約44パーセント、越市長の得票率も約44パーセントで掛け合わせると約20パーセント、越市長に投票したのは有権者の5人に1人でした。
このことにより選挙結果の正当性がいささかも損なわれるものではありませんが、越市長はもっと謙虚に市民負託の意味を考えられるべきではないでしょうか。そして、二元代表制のもう一つのセクターである議会に対して、もっと誠意をもって真剣に向き合うことが必要だと私は考えます。
 選ばれた存在であることへの越市長の過信と、それと繋がる思考の軽さ(「自分に文句があるなら次の選挙で落とせばいい」という発想)は、公(おおやけ)或いは公職に対する認識の不十分さと無関係ではないと思われます。

なお、誤解のないよう記しますが、株式会社が無責任だと主張するものではありません(株式会社がないと社会がたちまち立ち行きませんし、社会に貢献しない会社が淘汰されるのが現実です)。
 ここでは、有限責任システムである株式会社の経営と、無限責任システムである地方自治体の運営は、お互いに学びあう点があるとしても、本来的に全く別個のものであるという当たり前の事実を指摘しているだけです。
 いま、学びあうと書きましたが、実際には官が民から、手法において学ぶ点が圧倒的に多いでしょう。自治体の仕事は、市域の中の互いに対立する利害の調整に重点が置かれることや、達成度を測る客観的な尺度の設定が難しいこと、原理原則を重んじること等の特徴があり、機動的、効率的なマネジメントはどちらかというと不得意です。
 一方、企業は、市場は正しい(売れるものが善である)という共通ルールのもとで厳しい自由競争にさらされスキルを磨き、機動的で効率的なマネジメントを追求してきたわけですからその点でレベルが違います。かつて公共サービスの提供においてニューパブリックマネジメントが提唱されたのは、こうした事情によると思います。近年は公民の中間域を豊かにする多様な試みがなされ、「新しい公」の考え方も現れて公と民のシンプルな二分法は昔話となったようです。
 それでもやはり企業経営と自治体運営は本来的・原理的に異なるものです。両者を同一視した自治体の運営姿勢は不適切だであるというのが私の意見です。

ちなみに、企業経営者には、周囲の声に耳を傾け、部下を信頼して任せ、責任は自分が引き受ける人物、そのことを組織トップとして当然の行いであると考えている人物が多数存在しています。企業経営を範とされる越市長は、こうした点もご参考になさったらよいと思います。
(この項では責任の有限性、無限性という切り口で自治体の仕事を論じています。これは思想家・武道家の内田樹氏の著書に教えられました)










7 件のコメント :

  1. 大津市議会 藤井哲也議員がこのブログに関して越市長に質問されます。9月8日の予定です。興味のあられる方は大津市議会のサイトで動画が見られますのでどうぞ!

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  2. 「これは思想家・武道家の内田樹氏の著書に教えられました」と茂呂さん自身が正直に書かれてます。
    今回の記事に関しては、ちょっとまだ理論が消化不足で、言うべき点をうまく表現できてないと思いました。
    けれども、茂呂さんが何を訴えようとしているのかはよく伝わってきます。

    市長任期4年間になされた決断が、その後長きにわたって、大津市政に好影響なり悪影響なりを与えます。もし、それが負の方向に働く決断であったなら、市民生活にツケを残すわけです。市長さんがやめてもツケは残ります。
    だから、市長さんの決断は、重く、大きい。いまそのとき自分の頭のなかにある考え方でいいのかどうかを、いつも自問自答しなくてはなりません。民意を託された身だからこそ、狭い視野に基づく独断を排除していく努力が必要です。

    企業の社長さんも、同じことだと思います。利潤追求とか企業の社会的責任とか、そのへんは違いますが、やっぱり視野が広くないと優れた決断ができません。

    市長や社長って、リレーランナーみたいなもんだと思います。最善を尽くした走り。最善のバトンタッチ。
    越直美市長が最善のリレーランナーであろうとしているのか、どうか?ですね。

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  3. 長年図書館と関わって、市民活動している一市民です。『図書館県、滋賀』にあって、長年大津は別と言われ、登録者数、貸出冊数、資料代ともに県の平均値を下げるのに貢献してきた大津です。女性市長誕生と喜んで応援もしました。越市長になって、悲願であった図書館協議会もでき、専門職館長・副館長も実現しました。やっぱり市長が変わるといいな。と思ったのもつかの間。樋渡氏を尊敬するという越市長。武雄の図書館を視察されてから、『図書館を目玉に市政改革』と思われたのか、「図書館は指定管理にはみあわない」という館長・副館長を異動。次の館長も協議会と同じ方向になると、館長・次長ほか主幹以上8名の異動。トップ二人ともが連続して異動などふつう考えられません。1月には「図書館を考える大津市民の会」ができ、その中で勉強を重ねていくと、ますます「おかしい」という思いを深くしていました。新年度から数か月の図書館の混乱ぶり。これこそ、税金の無駄使いではないか。適材適所で人を使う方がずっと市民にとって良いサービスが受けられる、有効な税金の使い方。いったい何を目指しての行政改革かと思っていました。今回、このブログを見て、図書館問題は、図書館だけではなかったんだと納得いたしました。職員が安心して働ける職場であってこそ、質の高い市民サービスが受けられます。不安定な雇用条件や人事にひやひやしてものも言えない閉ざされた環境にあっては、本来の力も発揮できないでしょう。
    市民は、ちゃんと見ています。

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    1. すみません、教えてください。

      図書館協議会がやろうとしたことと越市長がやろうとしたことの間には、どのような食い違いがあっったのでしょうか?
      また、越市長の方針よりも図書館協議会の方針のほうがより市民にとって有意義であるということを、もう少し詳しく教えてもらえませんか。

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    2. 大津市立図書館のホームページから大津市図書館協議会の会議録が公開されています。図書館協議会は一期2年かけて、2014年「大津市立図書館の現状と今後のあり方」をまとめました。(ホームページに公開)、協議会は、図書館無料の原則、憲法に示されたすべて国民は、学ぶ権利があり、知る権利がある。その基本的人権を保障する場としての図書館。社会教育の一端を担う図書館に民営化、指定管理は見合わないという立場でした。ただし、図書館の本幹にかかわる業務以外での指定管理はかまわない。(つまりビルメンテナンス、掃除、移動図書館の運転など、これはすでに民間委託されています)という立場です。越市長は、4月から(マスコミに図書館問題がでるようになってから)「私は何も言っていない。民間委託など一言も言っていない。ただ、指定管理という方法もあると言っただけだ」とおっしゃっています。しかし、指定管理、民営化に異を唱える職員は異動になりました。最終人事権はどなたがお持ちでしょうか?協議会は、市民の代表として、館長の諮問機関としてあります。協議会ができて3年。その間、諮問機関の方の協議会のメンバー全員一致で民営化にNO.といえば、大元の館長がこの3年で3人の館長。この事実をどう見るか?
      しかも、平成14年(2002年)合議され、「図書館は指定管理には見合わない」と議会でも結論が出て行革から外されていたにもかかわらず、一体なぜ?と聞きたいです。

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    3. ありがとうございます。
      教えていただいた資料で、だいたいで申し訳ないですけど、図書館協議会のビジョンが分かりました。

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  4. 市長選挙でのマニフェストに期待しましょう。
    多分、図書館には触れないでしょう。
    市民センターの統廃合、小学校の統廃合、幼稚園の統廃合、何も触れないで、聞こえのいい言葉か並ぶでしょう。
    騙されてはいけません。
    私は今回は騙されない。

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