2015/10/20

42)大津市の現状 19 (歴代市長との比較)

 職員の受け止め方をご紹介しましたが、この項目と関連するので歴代市長との比較をしたいと思います。本来は政策や時代背景をふまえた考察をすべきですが今はそこまで出来ません。私個人の感想、寸評としてお読みください。
 
 山田豊三郎氏は、昭和55年から平成15年まで23年余の長きにわたって大津市長を務められました。「伝統と文化、自然にはぐくまれた心かよう幸せなまち、ふるさと都市大津」の実現をめざして調整型の市政運営を行い、都市基盤の整備に大きく貢献されました。
 職員から助役を経て市長になられ、しかも長期政権であったので、小さな道路、ごみの収集、地域の人材等々、大津のことを本当によくご存知で、また深い愛着を持っておられました。
 職員から畏れられていましたが、同時に親しみやすい大先輩でもあり、一言でいうと広く敬愛の念を集めた市長であったと思います。
 スト直前の体勢にあった労働組合委員長を市長室に迎え入れ膝詰め談判したり、自ら行う職員の処分に涙を流されたという逸話があります。

 目片信氏は、平成16年から24年までの2期8年、大津市長を務められました。当時は「平成の大合併」が進められる中で夕張市の財政破綻という衝撃的な出来事もあり、地方自治の一つの転換期であったと思います。
 目片市長は、「変革の時代において、市民と行政の協働により自立した都市経営を行い、魅力と活力あふれる都市を築く」という方針のもとに総合計画を策定され、市民・事業者・行政の三者協働を積極的に進められました。
 生まれも育ちも大津の方ですが、県議、代議士を経て就任されたことから、市役所が久しぶりにお迎えする「外部」の市長でした。しかし、飾らない人柄と率直な物言いで職員の心をつかみ優れたリーダーシップを発揮されました。
 敬愛された点は山田市長と同じですが、豊かな経験に裏付けられた政治的センスを有しておられ、国県との交渉や市議会とのやりとりにそれが発揮されました。庁舎3階の議会フロアにもよく足を運ばれ議員と談笑しておられた様子を記憶しています。たとえ意見の相違はあっても各会派から人間的な信頼を得ておられたのもうなずける話です。
 
 このお二人をふり返って「人間味」という共通点に注目したいと思います。
 少しあいまいな言い方ながら山田氏と目片氏には「人の情け」があり、それが、時に非情な決断を強いられる市長に対する職員の信頼や共感の母胎になっていたという気がします。
 これと関連して、お二人が大津に暮らす家庭人あるいは地域住民としての実感を保持し、そこから市政全般に視野を広げていく確かな「生活感覚」を持っておられたと私は思っています。
 もう一つは親分肌というべきか「後はお前に任せる、責任は俺がとる」的な態度を示されました。それは、経験にもとづく組織運営の知恵であったかも知れませんが、そのような計算を超えたスケールの大きさを感じさせるところが山田市長、目片市長にはありました。

 越市長は、平成24年1月に全国最年少の女性市長として颯爽と登場し、はやくも1期目の最終段階を迎えられました。そして「大津をもう一度活気ある町にしたい、笑顔あふれる大津にしたい。この4年間で大津を変えたい」という宣言どおり、精力的な市政運営に着手されました。
 しかし就任6か月後に「いじめ事件」が全国的な社会問題となって、その対応が市政の緊急課題となりました。このことにより越市長の行政哲学も何らかの影響を受けたことと拝察します。
 事件にかかる協議、調査、説明、対策立案などを最優先事項としつつ、一方で市政全般に取り組まなければならないという事態は、越市長にとって試練であったと思います。

 さて、越市長の特色は、ご自身が有する「外部の視点」を維持していこうとする志であると思います。越市長にとっては初心を忘れないことにもつながります。
 先ごろ「市役所の常識は民間の非常識である」とのコメントに反論した私ですが、外部の視点はとても大切であり、職員は襟を正して外部の視点と向き合うべきだと考えています。
 しかし、それだけでは不十分で、組織の長は組織内部の視点と部内責任をも併せ持つべきだと思うのですが、ここでは書きません。

 もう一つ、越市長の特筆すべき点は、マスコミへの鋭い感覚です。
 山田市長も目片市長も市民に訴える手段としてのマスコミの意義を熟知しておられた筈ですが、ご自分が報道されること(報道されないこと)に対してとても鷹揚であったと思います。
 これと比べて、越市長は鏡を見るごとくマスコミが報道するご自身の姿を意識されているように思います。学校の視察、災害現場の視察などにもカメラを同行させようとされます。新聞報道の内容について自ら報道機関に意見を述べるということも、前の市長の時代には考えられなかった事態です。
 しかし、これらはマスコミの注目度の高さを踏まえたPR戦略として評価されるべきだとも考えます。同時に、マスコミ戦略は手段が目的にすり替わる危険が常にあります。これに関する私の意見は脱線になるので申し上げません。

 職員にとって市長は最高権力者です。
 越市長は若い女性であるゆえ何かと不利益をこうむっているとの意見が一部にありますが、それは市役所の内情を知らない人の推測です。市長の権威はきわめて大きく、それに対して職員は十分に敬意を払っています。むしろ越市長は職員から強くおそれられているといってもいいほどです。
 しかし、職員の心の中で、大津市長と越直美市長という二つの記号がいまだに一人の人物像に収斂しないという実感があると私は感じており、この点が先のお二人の市長と異なる点であると思います。
 これは年齢、性別の差に起因するものではなく、先に述べた視点の位置の問題に加えて、人間味を感じにくいという点が作用していると思います。

 先のお二人は評価が確定しているといっていいと思います。
 これに対して越市長は1期目の途中で現在進行中の取組みが多いこともあり、十分な比較にならなかったと自分でも思います。私の越市長に対する見方は随所に書いてきました。

 最後にひとこと申し上げたいのですが、すべての市長は先行市長の遺産を相続しています。
 目片市長は山田市長の達成を踏まえて三者協働のまちづくりを進められました。
 越市長も大枠は同じです。目片市長の功績がスタートラインです。
 こし直美後援会ニュースに書かれている成果の中には、以前に種がまかれたもの、あるいは刈り取り寸前だったものが幾つも含まれています。
 例えば、病児・病後児保育の充実、こども医療費の拡充、発達相談センターの開設、小中学校や幼稚園のエアコン導入、在宅看取りのネットワーク整備、認知症サポーター増強、介護予防の各種取組み、グランドゴルフ広場の整備、膳所駅リニューアル、大津駅西・堅田駅西口整備、161号バイパス整備、道の駅等々です。中には越市長がブレーキを踏んだ事業も胸を張って並んでいます。
 でもそれで差し支えないと私は思います。
 そもそもまちづくりが4年で出来るわけがありません。先行世代の肩車にのって今の世代が進むのです。多段ロケットです。もちろん負の遺産もあるでしょう。正負の遺産を引き継いでいかざるを得ないから、残すものと捨てるものの見極めに集団の英知がいるのです。
 実力があり、ある時は「こわもて」でもあった山田市長、目片市長は、とても謙虚な方でもありました。だからこそ長年にわたる先人の営為を感謝の念をもってふりかえり、上首尾に遺産相続をされたと思うのです。この点でも越市長と対照的であったと思います。

 また脱線したかもしれませんが、書き直さずアップします。
 次あたりで越市長の優れておられる点を記述する予定です。




 


7 件のコメント :

  1. 懐かしくなって投稿します。ふるさと都市、流汗努力、三者協働、懐かしいです。長い日がたったような、ついこの前のことのような。いまも市役所は浮き足立っているように見えます。
    人間味という指摘はよくわかります。最終的に有効なものは人間性かもしれないです。権限とか役割とか義務とかで人は動くのですが、心から動かすのは人間としての共感かも?なので外交でも元首同士の人間関係が重視されていると思います。越市長にはわからないかもしれません。

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  2. うまくまとめられた比較論だと思いました。商工団体青年部と行政の関わりも密接でいろいろなイベントやら一緒にやらせてもらいました。いまは昔と比べて疎遠になっていますが、大津っ子祭もごみゼロも官民協働の成果だったと思います。目片市長も協働路線を引き継がれたと思います。そのようなことが断ち切られたように思えて残念です。昔はよかったで終らせたくない気持ちです。

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  3. おもしろい記事、興味深く読ませてもらいました。ありがとうございます。時代背景の考証なしだとおっしゃってますが、市長そのものが時代をよく表していますね。

    いまの大津市にどういうタイプの市長がいちばん向いているのか、えらく見えにくいことです。

    私は、このブログで毎回のごとく越市長をわるく言っています。でも、越さんが行政の「素人」である点については、とてもいいことだと思っています。
    越さんが市長に選ばれたひとつの要因は、地元出身職人型市長の意思決定手法といまの市民心理との間に何か乖離があったからではないでしょうか。大津市への転入は、20~40歳代の年齢層(まさに有権者)がもっとも多く、気風も暮らしぶりも本当の大津っ子たちとは大いに異なります。山田さんや目片さんの生活感覚でこの層の受け皿になれたかどうか、はなはだ疑問です。
    それに、越さん以前に、女性であり学者である嘉田さんが、メッセージ性の強さもあって、人気を得ていました。嘉田県政は、清濁併せ呑まず輪郭のくっきりした行政だとの印象を県民に与えていました。それと似たような市政を、既存権益とのしがらみが薄い越さんに期待する票もあったと思います。

    越さんではなくて、越さんのように頭脳明晰な素人市長が、行政手腕を次第に成長させながら、新しい感覚で市政をリードしていくのは、いまの時代の大津市に望ましい姿だと思います。市職員の方々の言い分を見ていますと、「外部の視点」の必要性は茂呂氏が思っている以上です。いまの暮らしがユニクロやニトリを必要とするように、目の前のニーズをそこそこのクオリティーで満たす市政も必要だと思います。玄人志向の市職員がそんな仕事では満足できなくても、です。

    越さん、心を入れ替えませんか? そしたら私は迷わず1票を投じます。

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    1. 同感です。
      越直美市長は大津市の従来の市民ではなく、転入者のニーズを汲み取れるのではないかという期待と、その輝かしい経歴に期待されて誕生したものと思います。
      かくいう私もその一人です。

      しかし、この四年で判明したのは、越直美市長は、期待した転入
      というよりも、さらに狭いご自分の周りの狭い視野しか持たず、他人の意見を聞かず、従来の市民を必要以上に邪険にし、職員との敵対関係?をりようしたパフォーマンスを繰り返し、大津市の疲弊と混乱を、持ち前のパワフルで優秀な力で促進したという、間逆の効果でした。
      例え心を入れ替えても、裏切られ邪険にされた市民の信頼、敵と認定された職員との信頼関係を結び直すのは時間がかかるでしょう。
      無理かもしれません。
      それこそ、民間では、考えられないのでは。
      私は例え心を入れ替えても票を投じることはありません。

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  4. 英語教育は導入に際してのプロセスに問題があり、待機児童対策は保育所新設プランだけにあとさきを考えず金を投じすぎです。給食は肝心の立地関係に課題があり事業化が難しそうという見方があります。いずれも職員がついていけないから時間がかかっているのではないと思われます。やはり進め方とピーアールの仕方に問題があるのと違いますか?政策がいい悪いより越さんのやり方の問題と考えます

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  5. 越さんがココロを入れ替えるとはどういう意味かと考えます。ブログの中だけでなく外も世間の声からも越さんを悪く言う声を良く聞きます。越さんが自分の考えに凝り固まって人の意見を聞かないという声です。だとするとココロを入れ替えたら一票という呼びかけも耳に入らないのでは?
    これだけの状況なので出来るのであればとうにココロを入れ替えていると思います。
    これから支援者にお願いに行く時にはココロを入れ替えると約束されると思います。それがココロからでているように見えても、私だったら信じられないです。トータルに見て思います。

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  6. 転入する若い世代のニーズを受けきれなかった前の市長、という見方がありました。そうかもね、と思います。でもそんな人たちの投票率はあまり高くないですね。越さんが選ばれたのは当時の民主党の勢いと、目片さんの健康不安があったんではないですか?若い女性新人への期待もあったけれどそれは手ひどく裏切られた思っています。今朝の滋賀報知みましたが市議会の市民ネットが越さんに厳しい目を向けていると知って、それも当然と思い市民ネットの姿勢を支持したいです。

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