2015/12/27

73) まちづくりの課題(市役所パワーの維持・増強)

 個別の課題は他にもありますが、少し切り口を変え「行政の出力」について考えたいと思います。すなわち「市役所パワー」の考察です。大きなトレンドで見ると、少子高齢・人口減少時代を迎えて生産年齢人口の割合と絶対数が減るわけですから税収の減少を前提にものを考えなければなりません。
 したがって税収に基づく「公助」や個人の活力による「私助」に対して、中間領域である「共助」の役割がおのずと比重を増してきます。これは「公」がお役御免になるということではなく、反対に限られた資源の中で行政が如何に高度のパフォーマンスを発揮するか、あわせて如何に「共助」を豊かにするための働きかけを行うかという面で「公の使命の追加」であるということができます。
 市役所パワーの重要性が増すゆえんであり、越市長のリーダーシップと職員のモチベーションが問われます。

 ここで越市長の組織マネジメントについて考えるわけですが、幾つかの大きな課題があると思います。
 人事では、もの申す職員を遠ざける、1所属の大幅入れ替えも辞さない、人材育成の視点に乏しい厳罰主義といった傾向があります。
 予算編成においては細かな「万円査定」や、カットと押し付けの「併せ技」等により部局や財政課の判断が軽視されがちです。
 庁内協議では、二役会・部長会が不活発なことにくわえ、周囲の意見をかえりみず先入観に頼る、外部人材への信頼と対をなすごとき職員への不信頼といった傾向を否定できません。

 時には多数の協議等の際「私は商店街が滅びてもいいと思っている」、「高齢者福祉のお金を削ってでも子育て支援に回す」、「教育委員会は不要だと思う」などと不用意な本音発言をされることもありました。
 これらの結果、すでに私の在任中から市役所内に閉塞感が広がりつつありましたが、今はその程度が確実に増しているようです。
 こうした中、職員の皆さんは法令と使命感に基いてそれぞれの持ち場で頑張っておられるわけですが、この状況が継続するとモチベーションの低下が懸念されます。
 市長をトップに市役所が一丸となってパワーを発揮することが強く求められる時代において、これは大きな課題であると考えます。
 

 「共助」を強く豊かにするための市の働きかけはどうでしょうか。リーダーである市長の対外的な言動が問われるところです。
 すでに書いたことですが、越市長は市民団体や地域組織(防犯、防災、女性、市民スポーツ、文化、生涯学習などの諸団体、さらに公的な機関である学区社会福祉協議会や民生委員児童委員協議会など)に対しては、従来、大きな関心を払われませんでした。
 そうした人々の話を聞いたり共感を寄せる姿勢に欠け、それらの人々がボランティア精神に基づいて行っている「共助」の活動を鼓舞しようとされないことを私は常に残念に感じていました。
 また、経済団体、三師会、大学など関係機関とのお付き合いも極めて淡白で、どちらかというとギクシャクしたものであり、対話の不足や杓子定規の対応によって不信を買うこともありました。
 住民への説明(例えば教育問題や廃棄物処理に関する地元協議)においては、市の最高責任者として正面から向き合う姿勢が弱く、部下まかせとなりがちでリーダーシップにかける点があったと私は感じています。
 
 さらに「共助」の考え方を市外に拡大すると近隣市との連携協力の問題になります。
 ここでも越市長の大津市代表としての働きぶりはあまり芳しくありません。
 まず、市長会など県内他市長との公式会議(会場はほとんど大津市)への欠席が多いことが気にかかります。出席された際の発言やそれ以外のトップ同士の接触の場においても、他都市の首長の印象はよくありません。基本は「よそはよそ、うちはうち」ですが、広域的な課題(琵琶湖、交通、防災、観光、後期高齢者医療など)の解決に他都市との連携協力は欠かせません。
 こうした局面で越市長のお得意の「トップセールス」は一向に発揮されません。

 ついでながら、新たなまちづくりの指針である「大津市まち・ひと・しごと創生総合戦略」のなかで転入人口の増加を図るべく「県内や近隣の都市から若い家族に大津に移り住んでいただいて、、」という記述があり、その了見の狭さにガッカリしました。
 都市間競争とはいうものの、本来、地域創生は東京一極集中に代表される大都市圏と地方との構造的構図的課題に向き合うべきもので、そのための地域共闘があってもいいとさえ思います。ここは、「京阪神から誘因する」という表現だけでよいと思うのです。

 脱線しましたが話をまとめます。
 私は越市長の市政運営により行政の出力が大きく低下しつつあると感じています。客観的評価にはなじみませんが、庁内外の多くの人々から同様の感想を聞きます。
 職員はじめ関係者の努力は大いに多とすべきであり、あまり悲観的になってはいけませんが、長のマネジメントは組織を大きく左右します。
 こうした状況が「普通」にならないよう祈らずにはいられません。


14 件のコメント :

  1. 12月26日、27日の朝日新聞滋賀版に「検証 越市政」との記事が出ている。朝日にしては掘り下げの浅い大本営発表のような記事で、これでは読んだ市民が「難しい時代によくやってるやん・・」程度の理解しかしてくれないのではないか。
    *市長自らが選任した前々教育長、前教育長、前副市長が相次いで辞任に至ったこと、
    *議会や市民団体、他団体との適切な意思疎通が図れないこと、
    *小学校一年生からの英語教育、中学校給食を独断的、拙速に進めていて、ケアセンターおおつの民営化も含めて実現性に問題のあること、
    *大津クリーンセンター建替え中止が財政的にもベストな選択ではなく、その結果2倍以上の処理コストをかけて長期・大量に市外委託したり、ごみ処理手数料の値上げ等市民に過度な負担を強いていること、
    *民営化に疑問を持つ図書館長、次長を異動させてまでTSUTAYA図書館の検討をさせた問題、
    等々本ブログで議論されているように資質に疑問のある市長であると思う。
    市民の判断に供する検証記事なら、それにふさわしい内容にしてもらいたいものである。
    ――――― ギャベジン

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  2. ギャベジンさんの意見に賛同します。
    朝日の記事は提灯持ちです。事実を切り取るアタマと目がないのはお粗末です。学級新聞よりまだひどい。
    越さん自身の誇大広告も問題です。ゴミ処理で大金を浮かせたというけれど、市外委託の経費や新築が遅れたことによる旧施設の修繕費に莫大なカネがかかるのに隠している。これを差し引いて説明すべきです誇大広告と提灯持ちはいいセットです。心ある市民と讀者は離れます。

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  3. これまでのコメントでも資質云々が多数書かれていますが、シンプルに考えて市長とは何ぞやと考えるまでもなく選挙に出馬したら当選しちゃった。人との付き合い方、駆け引きも偏った世界でしかなく、泣き笑いを共有するような人生を歩んできたとは到底考えられません。抑揚のない挨拶。人の心を動かすにはどのようにしたらいいのか。かけ離れたところをひたすら歩んでおられるとしか思えない。
    それでも反対票を対立候補で食い合いしてしまうであろうことを考えると、職員だけでなく市民はさらに四年間冬の時代を過ごさなければならないのでしょうか。
    有権者よ目を覚ましましょう。

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    1. 現職を支持する訳ではありませんが、いろいろ読んで感じるのは、現職は情を持って、知識をつけ、何より周りの換言を受け入れる懐の深さ、それと仕事を選り好みせず、自分が辞めた後の長期的な視野、必要な事を反対する立場に根気よく説明する態度があれば、なかなか良い市長になってたのでは。
      そして、その全てはM&Aを専門とする弁護士には必要ないものなのかなぁ、と思います。
      弁護士のまま市長になり、弁護士として裁判やM&Aのような仕事を市長としてされたのでしょう。
      そんな気がします。

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    2. 一つや二つが欠けているのではなく、それらのすべてが足りてないわけですからね。なかなか良い市長になったのではといわれましても、欠けているものが多すぎますよね。

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  4. 民間のいいところを市政運営に持ち込もうとする越市長の場合、職員の人事制度に手をつけるべきだったと思います。成果主義を昇進・昇給に持ち込む改革を進めてほしかった。公務員にはリストラがありませんから、茂呂氏がいうところの出力と人件費のコストパフォーマンスが低下しやすい。いい仕事ができない職員の年収がなかなか上がらないようにしないと無駄を生み出しやすくなります。これは、行政サービスの民営化による歳出抑制を好む越市長の流儀とよく一致した考え方だと思います。市職員組合と真っ向から対立することになりますが、そこでこそ情のなさを発揮すべきです。

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    1. もし現市長のもとで成果主義が導入されたらどういうことになったかは自明かと思います。そうでなくても公務員の評価に成果主義は難しいと思われます。

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    2. 情けない。やっぱり市役所はぬるま湯だ。じゃあ、職員を何で評価する?成果主義になじまないだなんて、特権ですか公務員というのは。
      たとえば、新たな部や課が必要でもないのに部課長に昇格する仕組みとかあるわけで、昇格試験で一定の点数をとれば部下なしの部課長になれます。その職員を部課長にするための昇格です。
      公務員に成果主義がなじまないというのなら、私たちは私たちの尺度で好き勝手に公務員を評価していいんですね?越市長の再選がなかったとき、その場合はこの4年間の市政に対するノーですから、それを支えてきた市役所職員はみんな無能だと評価していいですか?私はそういう見方がしたいからそういう見方をするんだということでいいですか?
      越市長自身が、これに近い人事をやってきたのですが、それではいけない。職員に厳しさを求めるのなら、恣意に流れず制度をいじれと私は言っています。有能な職員を育てて、これからの難しい時代を乗り切る知恵と実行力を組織で発揮してもらわないと困るんですよ。
      厳しさとはそういうものだから、そのような厳しさを実践せよという趣旨がわからないのかなあ。かなりの読解力不足ですが、読解力不足が多数いるのではなくて、おそらく同一人物が浅薄な短文コメントを繰り返しているのでしょう。

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    3. 成果主義って、もう導入されてるんじゃなかったでしたっけ。
      藤井議員がブログに書かれていましたよ。
      公務員に成果主義が難しいって、じゃあ民間は?仕事はすべからく成果主義でしょう。たとえば、現状維持を目標とするなら、どれだけの品質低下を防いだとか、何でも目標と数値はいけると思います。
      まぁ、確かに市長車の運転手なんかは、少し難しいかも知れませんが。やってみればいいのです。ダメなら辞めればいい。やる前から馴染まないなんて、公務員らしい考え方です。変化する者だけが生き残る、です。

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  5. 現職は見処があったかもしれないという好意的なコメントに反論させてもらいます。涙をこらえて行革をしたわけではなく元々涙がありません。パフォーマンス用は別として。
    聞く心がなければ周囲が何をいっても無駄。育てようで化けるというものではありません。根本的な質の問題で改良の余地はないと思います。

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  6. 読解力のない人がいますねえ。こういう読解力不足も聞く耳がないのうちです。越市長と五十歩百歩です。
    「現職を支持するわけではありませんが」のコメント主はひとつも越市長を誉めてませんよ。見どころがあるなんてことも言っていない。市長に必要な資質がひとつもなかったという趣旨の文章です。

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    1. コメント主です。
      仰る通りで、別に見所があるなんて思ってません。支持もしていませんよ。
      むしろ、全く仕事に適応してないという点で、自己改革さえ出来ていないという印象です。
      情熱と方針は選挙で選ばれたのでしょうが、残念ながら市長ではなく、弁護士を雇ってしまったようです。
      弁護士の頭脳を持った優秀な市長であればよかったのが、只の優秀な弁護士のままだったという事が言いたかったわけです。
      同じ事が他の候補者にも言えます。
      県議員のまま、プロデューサーのまま、共産副委員長?のまま、では市長にはなれない。
      変われる人が必要です。

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  7. 何人かの方のコメントにコメントします。
    越さんは企業合併の事務的な法律関係の仕事をされていたと聞きますがクライアントの意向をキチンと聞いておられたかどうか疑問です。少なくとも優秀であったと証拠立てるものはありません。学歴は立派ですがいわゆる横入りですよね。
    市役所はぬるま湯だという方は内部事情をご存知ないようです。少なくとも大津市役所では部長昇進に試験はなく実績と能力が判断材料です。
    越市長が落選したら職員が無能だといいますが、運転が下手で事故を起こしたら自動車の責任というのと一緒です。有能な職員を育てることは大事ですがトップの資質と姿勢のために下がっているモチベーションを上げるほうが先決です。越さんが退くことは市役所と市民のためによいとおもいます。

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    1. めちゃぬるま湯!

      >市役所はぬるま湯だという方は内部事情をご存知ないようです。少なくとも大津市役所では部長昇進に試験はなく実績と能力が判断材料です。

      その実績と能力が大津市のためにどれほど価値があるのか、その診断基準に成果主義をもっと持ち込めと言ってます。透明性、公平性のある厳しさを築けという趣旨です。

      >越市長が落選したら職員が無能だといいますが、運転が下手で事故を起こしたら自動車の責任というのと一緒です

      そしたら茂呂氏はなぜ辞任した?茂呂氏の辞任は不合理ですか?市長を変えることができず、市役所職員とのパイプ役を果たせなかったのは自らの力不足、だから引責すると言って辞めました。茂呂氏はそこまですることなかったんですか?
      あなたの言い分だと、市職員全体にはとんでもない市長の暴走を食い止めるためい気力を振り絞らなかったということでいいんですね。

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