前回は越市長が策定された大津の今後5年の活性化方針である「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成27~31年度)をテーマに国と地方の関係を考えました。地方の立場から「国こそしっかりしてくれ」と注文をつけましたが、もちろん地方も頑張らなければなりません。その頑張りどころとして地域コミュニティの再生を考えたいと思います。
越市長の「まち・ひと・しごと戦略」は国の基本目標を受け、「子育て支援・女性活躍の推進」、「近隣と市内就業 '' 快適家族 ''」、「インバウンド魅力倍増」、「持続可能なまちの再構築」という4つのテーマを掲げています。スポットライトを浴びているのは「子育て世代」、「働く女性」、職住接近の「快適家族」であり、少子化対策が喫緊の課題であるとはいえ、越市長の興味・関心が自分と同じ年代層に集中していることが伺えます。
高齢社会であるにも関わらず高齢者自身は施策の対象にさえならないのか(?!)と目をこらすと、「持続可能なまち」のテーマに位置づけられた「その他大勢」的な施策の中に申しわけ程度の記述がありました。
高齢者は若者と同じく今の社会に生きる主体(まちづくりでも大活躍している)であり人口比の大きい年齢層ですが、いくら何でもその扱いとして軽すぎるのではないかと感じます。
これでは一線を退いた後、生涯現役をめざして張り切るシニア世代から「越さんは高齢者に無関心である」「高齢者に冷たい」などという苦情の一つや二つ出ても不思議ではありません。
4つのテーマに戻りますが、これらはすべて地域コミュニティの健全性を拠り所としています。
「戦略」の記述を見ると「子育て」のテーマでは、安心して生み育てられる社会の実現を支えるものとして「地域内で助け合うコミュニティ」の重要性が指摘され、「快適家族」では「住民同士の心が通い合う風土の魅力を高める」とされています。
さらに国外から誘客をめざす「インバウンド魅力」では、おもてなし(見る間に手垢のついた言葉です)の基礎として「あたたかさを意識したコミュニティの絆」が、また「持続可能なまち」では「地域への関心を高め愛着心を育む」ことの重要性が強調されています。こうした考えは妥当なものだと思います。
そこで今後ますます地域づくりの重要性が増してきますが、越市長に行政のトップとして地域コミュニティの再生の旗振り役を期待することはまず無理でしょう。
越市長が、地域を支える住民の活動に対していかに無関心・無理解であるか、地域の財産である市民センター(支所+公民館)の機能をいかに軽視しているか等々、繰り返し書いてきたとおりです(先日、公民館のあり方協議の議事録を読み返し、越市長の浅慮と強引さを再確認しました)。
ここから本論です。人口減少・少子高齢時代の社会づくり、地域づくりにおいて高負担高福祉の北欧流も一つの解ですが、低負担で安心社会を実現している沖縄がむしろ日本型モデルになるかもしれません。以下、沖縄の事例を簡単にご紹介します。
なお、昨日の記事におけるわが国の動向や諸外国の例、これから記述する沖縄の話などは大津市の中心市街地活性化基本計画(第1期)の策定でお世話になった立命館大学の高田昇教授の論文「大都市圏における『地方創生』」からの引用や、最近お目にかかってお伺いした内容です。 体系だった高田教授のお話から私が任意にピックアップさせていただいたことのお詫びとお断りを申し上げます。
非婚、晩婚、晩産などが少子化の要因とされていますが、少子化を克服しているフランスや北欧では「非婚」による出産・子育てを社会が支え、結果として出生率の低下を食い止めている側面があります。沖縄の離婚率は全国平均の1.7倍と群を抜いて1位ですが、それでも安心して生み育てられる地域社会があり、出生率は12.2人(人口千人比)とこれまたダントツの1位です。
ここでシングルマザーを奨励するつもりはありませんが、結婚と少子化をセットで考えるだけでは女性への責任転嫁に終わりかねません。
子どもを生み育てたいと望む女性が、どんな境遇にあってもその望みを叶えられる環境づくりが重要ではないか。そして問題の核心は、安心して生み育てられる社会をどう作るかであり、その主な要素は、人生のライフステージの各段階をクリアして健やかな高齢期を迎えることのできる「社会のあり方」である。とは高田教授のご指摘であり、私もそのように思います。それは制度設計と地域づくりの併せ技で目ざすべきものであると思います。
沖縄は年少人口の割合(18%)も全国(13%)に比べ格段に高く、若者が転出しない、むしろ転入するという傾向があります。これはその背景に地域経済、文化、医療、コミュニティ等の面で希望をもって暮らせる環境が整っていることを示唆するものです。
県民所得は低いのですが家賃が東京の半分であるように物価水準も低く、貯金に頼らなくても不安が少ないという利点があります。
基地経済に支えられているとの指摘もありますが、県内総生産に閉める基地関連収入は終戦直後に50%、本土復帰時に15%、現在は5%にすぎません。国庫支出金と地方交付税の合計も全国17位、人口当たりでは6位です。
また沖縄は、今の日本経済の弱点となっている製造業、輸出産業への依存度が低い反面、年間観光客数は15年間で300万人から600万人に倍増、外国人観光客も今年上半期で既に66万人を数えておりたいへん好調です。
また、IT産業に県独自の優遇策(通信コストの7割削減)をとることやインターネット接続拠点(GIX)の構築を進めることで、IT関連産業はここ10年余りの間に52社(2002年)から346社(2014年)まで7倍増し、県の目玉産業の一つとなっています。
地域経済の構造自体がすでに全国を先取りする形で若者の誘因に一役買っています。
こればかりでなく、沖縄の強みは共助のコミュニティがいまもしっかり引き継がれていることにもあります。地域の「子育て力」や高齢者を支える「地域包括ケア」が重視される中で沖縄が共助社会を維持している事実に注目すべきであると思います。
さらに、いつでも誰でも受け入れる医療の独自体制も注目に値します。その中核を担っているのは県立中部病院で、ここは縦割り組織を越えて病院の全診療科が連携して患者を診るシステムを構築しており、24時間365日受入れOKをうたっています。
いろんな患者に対応することで研修医希望全国一でもあるようです。設備や金ではなく、人の協力により医療不安のない地域社会を実現していることも、安心して生み育てるための条件となっています。
これらの土台に、独自の高い食文化や芸術文化、日々のゆとりある生活時間、やわらかでぬくもりある地域の人間関係、自然と生きるスローライフの遥かな先取り等が、子どもの成長、若者の活躍、高齢者の現役生活の源泉であり、生活習慣病やがん死亡者数で群をぬく好成果につながっている点も見逃せません。
そうした土壌は450年不戦の琉球王国の平和主義に培われ、その理念がいまに受け継がれて命どう宝(命こそ宝)という県民共通の価値観となっていることはよく指摘されるところです。
幼いころから競争にさらされてストレスのたまる人生と社会、食べ物から環境、医療にいたるまで身の安全を守るのに苦労する日々、あまりに重い子育てと教育の負担、こうした社会からの脱皮こそ少子化・人口減少を乗り越える道ではないか。沖縄はこのような問いかけを発しています。
(少子化・人口減少問題をめぐる諸外国の政策や沖縄の状況及びそれらをどう読み解き方については高田先生のご教授によります)
こうした沖縄の良い所をそのまま大津に移植するわけにはいきません。沖縄県と大津市では自治体としての区分も規模も違いますし、歴史、文化の背景も異なります。
しかし、向こう三軒両隣、遠くの親戚より近くの他人、地震や土砂崩れの助け合いはまず近所同士です。大津市基本構想は「結の湖都」を掲げて「助け合い・お互いさまのまちづくり」をうたっています。新たな「総合戦略」の底流をなすのは地域コミュニティへの期待です。
このように考えてくると、「沖縄のまちづくりをいかに地域コミュニティが支えているか」という関係性を学ぶことは大いに可能かつ有効であり、それは大津の個性ある各地域の潜在力を正しく評価するためにも役立つと思います。
越市長が地域に根ざした優れたリーダーでないことはきわめて残念ですが、地域にとって、市民にとっては、市長が唯一無二の絶対権力者ではありません。
市内各地域に蓄積された力や主体性、自発性により大津のまちづくりが進んでいくことと思います。
そしていずれ、そのような地域を尊重し、まちづくりを担う人々に敬意と共感を寄せるまっとうな市長・行政とのパートナーシップにより各種課題の解決が図られていくことと思います。
本格的な少子化・人口減少時代を迎えて、すべての市民がライフステージの各段階をクリアして安全に健やかに高齢期を迎えることのできる社会を構築することは行政の使命です。
国も地方も協力してこれを追求していかなければならないと考えます。
この4年間を評価する為に、このまま更に4年間現政権が継続した場合に、大津市がどうなるか想像してみてはいかがでしょうか。
返信削除支所、公民館、図書館、幼稚園、保育園、小学校、中学校、給食センター、ゴミ焼却場、市役所といった施設は?
地域との関係、市役所職員さんとの関係、他市との関係、滋賀県との関係、議会との関係は?
人口、観光、産業、労働環境などは?
あとは、、、財政、いじめ対策、中学校給食、公立幼稚園の3年保育、待機児童対策、外国人観光客誘致、などの目玉政策は?
資質もですが、政策で判断すべきとの考えもあるかと思います。