おめでとう、と言っていられない人のために今年も頑張ると山本太郎氏が言いました。その言やよし。経団連の新年会場では政財界のお偉方が満面の笑みで祝杯を上げていますが、巷には年金支給日を指折り数えて待つ人、子どもの塾をやめさせる人、仮設住宅から出られない人などが大勢います。政権が自らを利する層すなわち社会の勝ち組を重視するのは世の習いであり、それを糺すところに野党の存在意義があります。その面で今は好機、各野党が本来業務に励まれることを期待します。
昨年は能登の地震で始まりました。発生確率が低いと予測された地域で大地震が起きたこと、珠洲原発が建設に至らなかったこと、志賀原発が運転休止中であったこと等を忘れてはなりません。1年が過ぎて被災地に日常が戻らないことは政府の責任も大きいけれど、「破壊の規模」と「復旧復興の能力」の差があまりに大きい現実があります。ここに核汚染が加わっていたらどうなったでしょう。それでも原発回帰を強める政府。「国を愛せ」という彼らの好きな言葉をそのまま返したいところです。
昨年はSNSが社会の前面に躍り出た年でもありました。石丸伸二氏や斎藤元彦氏はどれほど好意的に考えても首長や政治家にふさわしい人物ではないけれど(完全不適格者)、SNSを駆使した選挙で驚くほどの支持を集めました。この現象を「オールドメディア対 SNS」の構図で捉える見方に頷きます。既存と新参、権威と自由、陰謀と真実の争いだとも言います。トランプ氏は二大政党の対立を梃子としてこれを最大限に利用しました。
欧米や日本などの「民主主義社会」は、自由な個人が客観的な事実に基いて議論し行動することにより「公共空間」を形成することを目ざしてきたはずです。こうした原点を考えるとSNSはその社会の申し子のようなツールであり、特に「同時中継性」は戒厳令にすぐさま立ち上がった韓国の人々に見るように市民の武器となり得ます。それがどうして石丸、斎藤、トランプのような有害な人物を利することとなったのか。
選挙を離れた日常生活にもSNSの黒い影は差しています。ネトウヨ、闇バイト、子どもの性被害、いじめ、被害者への中傷、人種差別、デジタルタトゥー等々。オーストラリアでは16才未満の子どものSNS使用を禁止する法案が可決されました。民主主義の原理の否定とも言えるこの措置を私は大いにアリだと受け止めました。飲酒制限と一緒です。それにしても何故ここまで来てしまったのでしょうか。
SNSはカオスです。空間的に寝室やリビングが駅前広場とつながって更に海を越え、身体的には頭も心も下着の中も一緒くた、物事の真実と虚偽の見分けがつかず、しかも皆が競って拡大再生産に励んで情報量は爆発的に増加しています。加えてAIの跋扈。デジタルの地球とも言うべき情報プラットフォームが僅かな私企業に独占されていることも怖い話です。その無料サービスを利用している私の個人情報は筒抜けだろうし、「胴元」は広告宣伝を通じて文化への関与を強めています。社会と政治がSNSに引っ掻き回され「公」が溶融しています。
私は過渡期の人間としてアナログとデジタルを併置して眺めざるを得ませんが、SNSワールドに生まれ育つ若い世代の見る景色はまったく違うでしょう。そんな人々が大多数を占めたら「社会」や「人間」に対する考え方も大きく変わるはずです。あまり良い方向に変わる気が私はしませんが、しかしこれは、個人の自由と幸福を追い求めてきた社会の進歩発展の果実でもあります。
私たちの社会が求める価値が間違っていたのか、求める方法に妥当性を欠いたのか、いやこれでよい万事OKなのかよく分かりませんが、もはやSNSを抜きに「公」を考えることが出来なくなったことは確かです。ギリシャに直接民主制なるものがあったそうですが、私はそれにあてどない郷愁を覚えます。
年賀状を一切やめて何年か過ぎましたが今も年賀状を下さる昔の仲間があり、その度に心の中で手をあわせてお詫びとお礼を申し上げています。60才を機に市役所をやめるという人が複数いました。ええ?若手だったのにと驚くけれど私が72才!ですから無理もありません。就職した頃、「なに茂呂くん昭和27年生まれか、何と若いなあ、わしらが年とるはずや」と言われたことを思い出します。何だか年寄りの繰り言めいてきました。
前回記事の最後に今後「ユダヤ人」について考えたいと書きました。イエスキリストも彼を裁いたのも共にユダヤ人でした(実行者はローマ人)。キリスト教がユダヤ教のうちに胚胎した経緯もあります。ずっと以前には「日本人とユダヤ人」という本が売れました。先日、私の友人は「僕なあ、世界史を教えてたけど『ユダヤ人』て今も説明できん」と言いました。私もまったく一緒で、内田樹の「私家版・ユダヤ文化論」に目を瞠ったけれど本を閉じてわが身に残るものがありません。万事がこんな調子です。今年もボツボツ書いていきます。
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