2025/08/14

284)「なめられてたまるか!」

 石破首相の啖呵はまだ記憶に新しいところです。7月10日、千葉県船橋市での参院選の街頭演説で彼は言い放ちました。「 いまトランプ関税で国益をかけた戦いをしている。たとえ同盟国であっても正々堂々と言うべきは言う。なめられてたまるか!」。私は、よくぞ言った、でも相手は太平洋の向こうだから少し惜しい、思いました。

 これは「なめられている」と実感しているゆえの発言であり、赤澤(格下)大臣はいざ知らず、米国政府と向き合う多くの政治家に共通する思いでしょう。一般人の私さえ不愉快です。しかし政治家たるもの、その思いは心に秘めて交渉力に転化させるべきでした。口に出した以上、相手が感情を害しても構わないというメッセージになります。相手は感情的でしたたかな独裁者です。これは短慮の発言であったと思います。

 「日本と米国はパートナーシップで結ばれた同盟国である」と政府は言いますが自己欺瞞はもうやめましょう。まるで序二段や三段目の力士が大関や横綱を友人扱いするようなものです。あるいは少年野球のエースが大谷翔平選手を「君づけ」で呼ぶようなものかも知れません(これは愛嬌があるけれど)。この80年の日米関係をふりかえると、どう見たってアメリカが親分で日本が子分でした。トランプは遠慮会釈がないだけです。

 対米依存は経済や軍事をテコに内政まで及びます。基地を経由して米国関係者はいくらでも密入国ができるし密出国できます(ふつうは成田経由だとしても)。スパイ天国です。いや米国はロシアや中国に対しては真剣に諜報活動を行っても、手のうちにある日本には本気モードにならないでしょう。まことに腹立たしいけれど日本は属国です。ふつうに考えてそのように思わざるを得ません。

 520人が亡くなった日航機墜落事故にしても原因者であるボーイング社の責任を追及できないまま40年が経過したではありませんか(米軍基地を原因とする数々の犯罪もしかり)。草の根の市民交流は大切だし私もアメリカの友人がいるけれど国家関係は対等ではありません。関税交渉の合意文書を作れなかった理由はこれにつきます。スピードを重視したという首相の言い訳は「ああ、アホらし!」のひと言です。

 案の定、8月1日に米国が日本製品に一律15%の関税を上乗せすると発表し、あわてた日本政府は「強く遺憾の意」を表明しました。この件は近いうちに何とかなりそうですが、NHKの世論調査の結果では「日本側もよくやった」と回答する人が目立ちました。まったくもって寛大な人が多い日本です(とくに自国の政権に対して)。自他の状況をもう少しリアルに見たほうが「国益にかなう」と思う次第です。

 赤澤(格下)大臣が「ベッちゃん、ラトちゃん」と書いたらしいけれど、恥ずかしいのひと言です。政権担当者の役割は国民に対して率直に事実を伝えることであるはずです。一緒に夢にひたってはいけません。こう考えると、広島と長崎の大切な式典において、原爆投下がまるで「自然災害」のように語られることにも疑問を感じないではいられません。これは未曽有の災いではありましたが、多数の実行者、協力者、因果関係者が引き起こした人災ではありませんか。

 いま、石破氏は仲間に「なめられてたまるか」と頑張っています。リーダーが弱りだすと群れの餌食になります。このあたりは政治家はとてもリアルな感覚を発揮します。「共食い」を見かねたのか内閣支持率が上がりつつありますが一寸先は闇。とにかく政治家諸氏には国民のために頑張ってほしいと思います。
 若い友人Nさんが「地域デビュー読んだよ。えらいね。続きを待ってるよ」と(丁寧な言葉で)励ましてくれました。私は私益しか背負っていないけれど頑張らねばなりません。










いまこの言葉を蒸し返すのは意地が悪いじゃないかと思う「愛国者」もおられるでしょうが、私は自民党の有力者の中で石破氏はよい部類に入ると思っています(旧安倍派の人々と比べると明瞭)。

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