② 市民への周知について
この項の最後に、越市長の「予算の見せ方」にふれます。
越市長は平成27年度予算編成に着手する時点で既に「対前年度比マイナス予算とする方針」を固めておられたのではないかと推測します。もしかすると1期目最後となる次の編成作業(28年度予算)でも、早々とマイナスシーリングを決意しておられるかも知れません。
越市長は「改革を進めた節約市長」として評価されたいとお考えのようですから、各年度の予算額と4年のトータル額を大いに重要視されることは間違いないと思います。
先にも述べたように、地方自治体の予算は所得の再配分という意味合いが強く、市税を徴収し、
これを中心に交付税などと合わせた一般財源をいかにバランスよく市民に再配分するかが予算編成の基本です。
もし仮に、越市長が新年度の税収見込みが試算されるまでに、新年度予算を対前年度比マイナスにする方針を決めておられたとすれば、財政状況の厳しさを市民に訴える意図があったとしても、余りに早すぎるでしょう。税収見込みが明らかになった後も方針変更はありませんでした。
平成27年度は市税だけを見れば前年度比マイナスですが、地方消費税交付金等を合わせれば前年度比プラスですから、予算総額は若干のプラスとする(その分だけ多く市民に還元する)ことが妥当であったと考えます。
予算案のプレス発表は越市長の得意とされるところで、その際には「平成27年度大津市予算案の提案に際して」と題した市長メッセージが添付され、市長自ら説明をされました。
予算案の重点分野のうち「子ども・子育て・教育・女性活躍」では「待機児童ゼロからその先へ」というサブタイトルがつけられました。
「高齢者施策」は内容の充実に疑問符がつきますが「高齢者が輝くプラチナ社会へ」という輝かしい副題がつけられ、「観光振興」では海外渡航客の入り込み促進のため「インバウンド元年」との位置づけがなされました。
これらを嘘とは言いませんし、よりよく見せる工夫も大事です。しかし、ここまで見てきた予算編成の経過、結果としての予算の中身、市民への周知を考え合わせると商品に比べて包装の美しさが目立ちます。
よく言えば宣伝上手、悪く言えば過剰包装が越市政の特徴的な一面であるという気がします。
(これはこの連載の最後に述べる「越市長の政治家像」の一つの要素です)。
以上、この項目では、越市長の「予算編成および財政運営」を見てきました。
これらは主として市の事務管理や意思形成にかかる事柄、すなわち市役所の内部事情です。
ここで数々の問題点を指摘しましたが、「その結果として市民生活にどんな実害が生じたかを具体的に述べよ」と言われると、実はなかなか難しいのです。
なぜなら、たとえ内部でどんなプロセスを経たとしても、市役所のアウトプット、つまり市民生活との接点としては「施策」でしかありえません。施策とは「 ~ 整備事業」、「 ~ 改良事業」、「 ~ 支援事業」、「 ~ 補助事業」といった名称から分かるとおり、市民のために役立つことを目的とするものです。
基本的に「良いこと」をする以上、仮に量の過剰や不足の問題があったとしても「実害の証明」は困難です。
まして、大津市は現在、合併、鉄道駅や橋の建設など大きな課題に直面しておらず、一方で庁舎整備や競輪場跡地の利用問題は先送りにされています。ほかにも大津駅の整備は本当にこれで良いのか?大戸川ダムは今後どうするのか?など重要課題はあるのですが、これらについて越市長は正面から取り組もうとしておられるように思えません。
結果として市民意見が大きく分かれるような政策選択は背景に退いており、より日常的な施策の集積が市民生活との接点にあって市政評価の手掛かりとなっています。
こうして見ると、内部的に紆余曲折を経て出来上がった平成27年度予算案の問題点も越市長の政治家としての主張の反映であり、一概に不適切と断ずることはできません。だからこそ議決が得られたわけです。
しかし、予算案が可決されたことと編成過程など内部の意思形成プロセスがすべて良とされたこととは別問題です。こうした認識を越市長がお持ちかどうかは不明です。
ちなみに今、「越市長に目立つような失政はあったか、なかったか」という視点から越市政を評価する試みがあると聞きます。確かに一つの尺度だと思います。
しかし、先ほど述べたとおりの状況のもとで「基本的に善を行う自治体」の首長が、平素の仕事すなわち通常の施策の実施において目立つ失政をする、というのはなかなか考えにくい事態です。「現職は強い」という理由の一つはこれでしょう。
この尺度を補う複眼的な視点として「施策の後年度評価」があると思います。
例えば教育施策のように結果が明らかになるのに時間を要するものは4年で評価が出来ないかもしれません。評価が固まった時にはすでに手遅れかも知れませんが。
もう1つの視点は「やめた施策をもし実施していたらどうなっていたか、という仮想評価」です。
しかし全市を2グループに分けて社会実験をやるわけにも行きません。実際のところこれらは実施困難な評価です。
だからこそ、「後年度評価」を不完全ながら先取りするものとして、現在の施策立案に際する「プロセスや熟議」が重要であると思います。後述しますが、教育において熟議の上のマイナーチェンジを基本とすべきこともこういった事情です。
「行わない施策の仮想評価」に代わり得るものとしては、市役所の外部から提示される「別メニュー」であろうと思います。例えば選挙の際に対立候補が自分の政策を訴え、現職の政策とどちらが良いかを問いかけるような場合です。
何だか自分の設問に自分自身が上手く答えていないかもしれませんが、こうした事情を押さえておかないと市政の評価は難しいということを申し上げたいのです。
現行のメニューだけを眺めて失政の有無を論じることは、あまり有効ではないと私は思っています。
私見ですが、市民生活との接点は薄いものの組織運営や内部管理の問題も極めて需要です。
(このことに関連して、税金がどれだけ躍動しているか?というコメントは興味深く拝見しました。)
越市長の財政運営や予算編成についてはこれで一応終わります。
次からは教育問題です。
この記事を読みますと、越市長は、かなりの内弁慶みたいですね。
返信削除庁舎整備、競輪場跡地利用、大津駅の整備、大戸川ダムといった課題が先送りされているということですが、私には、外へ向かっての勝負を避けているように思われます。
待機児童解消も、中学校の英語教育も、市の公務員に言うことを聞かせればやれる政策です。利害を主張し本気で反対してくる相手と直に立ち向かう難しさがありません。茂呂さんが「現職は強い」という言い方をしていますが、現職の強さを損なわない範囲でやっておこうの意図が見え隠れします。
この記事中には、仮想評価や後年度評価の難しさも述べられています。たしかに非現実的な手法であると私は思いますから、やるだけの値打ちがあるとも思えません。
反面、たとえばですが、大津駅前はライブでリアルな市政評価材料です。前副市長が「結果として市民意見が大きく分かれるような政策選択は背景に退いており」だけで済ませていいことかと、私はむしろ茂呂さんのケツを叩きたい。
駅は駅、町は町とでも言いたげなあの空間設計には人の観点が欠けています。駅と町を一体化させるのは何やねん?人やないのかいと、私はかねてから思っています。
あれは誰だったか、「越直美市長でなければ大津駅前はまったく別の姿になっていたはずだ。それをこの目で見てから辞めたかった」と語っていたベテラン職員がいました。
平成26年度予算において、越市長は国民健康保険料の15%値上げ案を提案されましたが、市議会で値上げ幅を約8%まで抑えるように修正されています。どなたか別のコメントでも書いておられますが、聞いた話によると、市長は当初20%以上の値上げを主張されていたが職員の抵抗にあい、15%で妥協されたのだとか。いっそ20%値上げしていれば、多くの市民も目が覚めたのではないでしょうか。議会も市職員も、100%市長の思う通りにやらせてみればいいのに。そうすれば国保料は20%値上がりし、市民病院や図書館は民営化され、市民団体は補助金を打ち切られ、学区は統廃合で解体されて、すばらしいユートピアが実現するでしょう。そのときは、他市から生暖かく見守っていたいと思います。
返信削除大津市役所正規職員時代に南部クリーンセンター建設事業にも係わり平成24年3月にOB嘱託を退職した者で、初めて投稿させていただきます。開設者の記事をはじめ、読みごたえのあるレベルの高いご意見も多く感服しておりますが、これまでよく出ている越市長の聞く耳持たない独裁的な姿勢について、かつ市にマイナスの影響を与えていると思われる一つの例を藤井哲也市議会議員のブログを援用しながら紹介します。
返信削除越市長は当選直後の平成24年2月市議会定例会竹内照夫議員の代表質問に対して、ごみ処理施設についてのそれまでの市の方針である3施設体制(北部、中部、南部)を踏襲する旨の答弁を行いました。ところが、直後にこれを見直すためのごみ処理施設整備検討作業を担当部課に行わせ、翌25年3月付けで「大津市ごみ処理施設整備検討報告書」を公表し、北部(伊香立の北部クリーンセンター)と中部(富士見の環境美化センター)の2施設体制として、これらを建て替えることを新たな市の方針としました。20年間で90億円、30年間で120億円削減することになると平成25年2月市議会定例会の市長提案説明で胸を張った件です。この検討作業の過程においても越市長はやはり聞く耳を持たなかったそうです。
この報告書の結論が妥当、適切なものであるなら、市議会代表質問において嘘の答弁をしたことを差し引いても、議会や職員を相手に市民の利益のために頑張ったということになるのでしょうが、どうもそうではありません。越市長が最重視するはずの経済性においても、ごみ処理事業の円滑な実施という点においてもベストな選択とは考えられず、越市長に合わせただけのズサンな報告書のようです。藤井議員が自身のブログの
◎2013年8月30日の「環境影響評価方法書についての意見書」(大津市環境美化センター改築事業)を提出しました。と
◎2013年4月16日、4月29日、5月7日、5月21日の「大津市ごみ処理施設整備検討報告書」のズサンな内容
において詳しく説明されています。
経済性の観点だけから見ると市内3施設体制よりも2施設体制の方が有利であり、公平性やリスク等の点で劣ってはいても一つの考え方だと思われますが、問題はそれぞれ老朽化している3施設のうちどこを建て替えるのかということであり、北部(伊香立)南部(大石)の2施設体制が経済的にも、適切・スムーズなごみ処理のためにもベストであったと考えられるのですが、なぜか北部と中部(富士見)を選択したことです。藤井議員ブログによれば、この場合の建設費や20年間の維持管理費その他必須経費を加えて、15億円程の経費高が見込まれるとのことです。
平成24年度における検討作業の中では地元学区住民の気風までもが話題に出たそうで、種々検討されたということなのでしょうが残念な結果です。
現在環境アセスメントが後半段階にある富士見学区の環境美化センターの建て替え事業における大きな課題として、地元還元事業で建設された焼却余熱利用の富士見市民温水プール(富士見学区住民は無料)の移設及び大津市直営ごみ収集作業基地の移設がありましたが、これらについては次のような驚くべき対処がなされました。
平成2年末に完成のプールはまだ十分使用可能にもかかわらず、700mほど東側の池を買収して埋め立てて新設する、しかも焼却余熱を用いるのではなく普通の温水プールです。加えて、多大な経費が必要なのにもかかわらず「環境美化センター改築事業とは別の事業であるから、比較検討に用いる経費には算入しない」などという詭弁を弄しているのです。直営収集基地については、少なくなったとはいえ20人程の収集業務担当職員が大型ごみの収集を中心に業務を行っていましたが、これらを民間に委託して直営収集基地を無くしてしまうという、とても考えられないような対応を行ったのです。収集業務のために採用され、それを得意分野とする専門集団を別の業務に回し、その分新たな収集業務委託費用を発生させたのです。このような大きな無駄を出してでも南部クリーンセンター建設事業を中止して環境美化センターの建て替えを行わねばならなかったのでしょうか。
それ以外にも、この越市長の新方針に伴って、自区域内処理が当然とされているごみ処理業務、その中でも中心的な焼却業務を長期継続的に多量に市外業者に委託しなければならないという、自治体として恥ずかしい状態に立ち至っていることもあります(大津市HPの「大津市のごみ処理の流れ」参照)。
以上のように、市民から見えないところで経済的無駄を発生させるだけでなく、適正なごみ処理を阻害し、またごみ処理施設地元住民の方々の信頼を失うという損失をもたらしているものです。越市長の聞く耳持たない独裁的な姿勢の影響は、なにも市役所内に止まるものではないと考えるべきです。
―――――ギャベジン(ペンネームで恐縮です。)
何故南部を避けたのか。
削除検討の経過は適切なもので、結論ありきではなかったのか。
地元との協議はどうだったのか。
そもそも経済的に合理性がある計画なのか。
このあたりは、当時、現職だったブログ主が内情に詳しいと思われますので、そのうち記事にされることを期待します。
藤井議員のブログは携帯で見にくいのでまた、家からチェックしたいと思いますが、せっかくなので議員さんからのコメントも期待したいところですね。