原告代理人弁護士は、大津市への公文書公開請求等により多数の文書を入手しておられます。そしてそれらを精査したところ不審な点があるとして、本年2月、私の意見を求められました。その際に示された公文書には私も知らなかった事実が記されており、私は本年3月、一問一答形式で「回答書」を作成しました(この「回答書」は、昨年作成した「陳述書」と同じく証拠として大津地裁に提出されています)。
大津市の公文書管理の状況を理解する一助になると考え、ここに「回答書」を掲載します。ただし、回答書で取り上げた公文書(大量のコピー)はすべて割愛しますので、やや読みづらい部分があることをご容赦ください。青い文字の括弧書きは、ブログ掲載に際して加筆した説明書きです。分量が多いので2回に分けます。
回答書(原告代理人弁護士あて・2019年3月26日作成)
貴職より去る2月12日付でお尋ねいただいた下記の事項について、私の元大津市職員としての経験と知識に基づいて回答させていただきます。
1 平成25年ないし26年当時の大津市における公文書の作成・保管について、以下の事項についてご教示ください。
(1) 大津市では公文書公開請求・個人情報開示請求に対する処分を通知する文書は様式が定められていますが、通常はどのように通知文書の作成の事務を進めますか。
(回答)
公文書公開請求・保有個人情報開示請求に対する決定通知文書の様式は、大津市情報公開条例、同規則、大津市保有個人情報保護条例、同規則で厳格に定められ、それぞれの決定に見合う様式が用意されています。これによらず事務を行うと結論である行政処分を誤るため、正しい様式を選択することが基本です。大津市職員はすべて庁内システムから行政処分の内容に対応する通知様式を選択し、個別にダウンロードして使用しています。
(2) 大津市の職員が処分を通知する文書を庁内システムに用意された様式のワードで作成する場合に、当該文書の表題を書き換えることはありますか。
(回答)
処分を通知する文書の表題を書き換えることはあり得ません。文書の様式は、処分内容ごとに、例えば保有個人情報開示請求の場合は「開示決定」、「部分開示決定」、「不開示決定」などと個別に定められているため、そもそも表題を書き換える必要がないのです。かりに表題を書き換える必要があるとすれば、それは異なる処分を意図するわけですから、改めてそれにふさわしい様式を選択したうえ決裁文書を一から作り直します。
(3) 大津市職員が決裁文書を起案する場合に、決裁区分が部長専決又は課長専決とされている文書について市長決裁とすることはありますか。
(回答)
大津市事務決裁規程で決裁内容に応じて決裁すべき専決権者が定められ、その決裁区分に基づき決裁が行われます。意思決定内容の重要性によっては、定められた決裁権者のさらに上位者に決裁をあおぐこともあり得ます。ただし、それも予め考慮して決裁区分が定められているので、通常の事務において部長専決を市長決裁とすることは例外的です。
(4) 公文書公開請求・個人情報開示請求に対する公開・部分公開・非公開等の決定が市長決裁とされることはありますか。また、貴殿の副市長在任中に市長決裁とされたことはありましたか。
(回答)
本件のように市長の関心の大きい事案等において、公文書や保有個人情報を公開するかどうかの決定が市長決裁とされることがあったと記憶しています。私も副市長として決裁印を捺したことがあります。
2 甲第76号証の2~5は当職が大津市に対して公文書公開請求をして入手した文書ですが、以下の事項についてご教示ください。
(1) 甲76号証の4(保有個人情報開示請求に対する処分を決定するための起案決裁文書)の1~5枚目の文書は、決裁区分が部長専決とされていますが、実際には越市長及び茂呂副市長の決裁印が押印されています。貴殿はこの文書を決裁した記憶はありますか。
(回答)
私が副市長として行った決裁は多数あり、年月も経っていますから全てを克明に記憶しているわけではありません。お示しの文書の決裁印は間違いなく私のものですが、正直に申し上げて、文書を見て、こんなこともあったなと想起する程度であり、決裁をしたときの鮮明な記憶はありません。
(2) この文書は1/3頁の本文の「部分開示」部分が手書きで「不開示」と訂正されていますが、このように本文の主要部分が手書きで訂正された文書が決裁に回されることはありますか。
(回答)
決裁文書の表紙に記されている処分内容が手書きで修正されて決裁に回されることはあり得ません。決裁は、例えば「Aという処分をしてよろしいか?」と決裁権者の判断を仰ぐものです。それと異なる「B」という判断を求める場合は、当然ながら、それにいたる論理、根拠、引用資料、参考文献なども異なることとなり、文書の一部修正では対応できません。
このような安易な修正は事務的なミスの原因ともなり、職員の姿勢としても考えられないことです。特に市長決裁の最重要文書となれば尚更です。
いずれかの決裁者の理解が得られなかったり修正を指示された場合は、起案文書を一から作成しなおしたうえ再度決裁を回します。私は職員として数えきれないほどの起案を作成し、決裁を行いましたが、この文書のように処分内容を手書き修正したことはなく、また、決裁者としてそのような文書を見たこともありません。
(3) この文書は、2/3頁に「部分開示とすることを決定し」との記載があり、3/3頁には「6 保有個人情報部分開示決定通知書」が「別紙(案)のとおり」と記載されています。ところが、添付されている別紙の通知書案は「保有個人情報不開示決定通知書」となっています。
このように決裁文書の処分決定内容と、別紙の通知書案の処分決定内容が異なることはありますか。
また、このような決裁を決裁者が見逃すことはありますか。
(回答)
このように決裁文書の処分内容と通知文案が異なることは絶対にあり得ません。そもそも、職員が本件のような出鱈目な起案をすることはなく、こうした文書が決裁に回されることはあり得ません。万一、決裁に回されたとして、これだけ多くの決裁者の誰もがそれに気づかないことなどあり得ません。
通常の事務において、決裁者は、細かい添付資料のすべてを点検する時間がなかったとしても、少なくとも決裁本文の表題、内容、結果である通知文を確認したうえで決裁印を押します。特に本件は市長決裁ですから、起案者も決裁者もその重要性をよく認識し、より慎重な処理を行います。
もし私のところにこのように根本的に誤った文書が回ってきたら(想像しがたいケースですが)、即座に起案者を呼んで文書の作り直しを指示するとともに、部長に対し重大な誤りを見逃したことを注意していたと思います。
(4) 甲76号証の4(前出:個人情報開示に関する起案決裁文書)の6~8枚目は、期間延長を決定していますが、他方で、「公開・非公開の区分」に「部分公開」と記載されています。この記載からは、延長決定の時点では部分公開を予定していたと考えて良いでしょうか。
(回答)
この記載から期間延長の決定時には部分公開を予定していたものと考えられます。
公文書公開請求や保有個人情報開示請求に対し、全面公開もしくは全面非公開とする場合は、実務上あまり時間がかかりません。期間延長が多いのは部分公開の場合であり、どの箇所をマスキングするか事由ごとに意思形成を図って決定し、実際にその作業を行うことに多くの時間とエネルギーを要します。定められた期間で処分決定するのが本来ですが、やむを得ず期間を延長する場合はこのような事情によります。
私は、この文書の記載どおり「部分公開」の方針のもと、多くの作業量を見込んで予め期間延長の決定をしたものであると判断します。
なお、当該起案文書の「公開・非公開の区分」覧に「部分公開」とあるのは、この文書自体が情報公開請求を受けた場合に部分公開とすることを作成時点で決定したことを示すものです。
(5) 甲76号証の5(個人情報保護審査会への諮問にかかる起案決裁文書)は、甲76号証の4(前出:個人情報開示に関する起案決裁文書)の決定に対する異議申し立てを審査会に諮問することについての決裁文書ですが、甲76号証の5の8枚目の文書(前出:審査会への諮問の起案文書に添付された文書。すなわち甲76号証の個人情報開示に関する起案決裁文書のコピー)は、甲76号証の4(前出:個人情報開示に関する起案決裁文書)の1枚目とは異なり、「部分開示」部分が手書きで訂正されていません。これは何を意味するのでしょうか。
(回答)
起案文書において、過去の経過を説明するため決裁済みの関連文書を添付することは実務上よくあります。甲76号証の5に添付された文書も同様で、これはその時点で正規に保管されていた決裁文書です。したがって、添付された決裁文書は、決裁された時点では手書き修正されていなかったものと考えられます。
申し上げた通り、大津市の意思決定過程において、決裁による処分の内容とそれに基づく通知文が異なることはあり得ません。本件は、決裁完了後に意図的な修正が施されたもので、残念ながら公文書改ざんの可能性が極めて大きいと言わざるを得ません。
(6) 甲76号証の4(前出:個人情報開示に関する起案決裁文書)が何者かによって決裁文書の本文が手書きで「改ざん」されたものであるとしたら、誰が、いつ、どのように行ったと考えられますか。
(回答)
この個人情報開示請求に対し、起案者および副市長以下の決裁者は法律、条例に照らして部分開示すべきであると判断しており、それは決裁文書に明らかです。「決裁上は部分開示ですが、実際の処分は不開示にします」などと言う職員は誰一人いません。私も当然、部分開示という認識で決裁印を捺したはずです。これを覆すことができたのは市長しかありません。
まことに不可解ながら、越市長が「部分開示」の起案文書に決裁印を捺し、同時に「不開示」を指示されたとしか考えられません。そして通知文書のとおり、その指示が実行されたのだと思います。
※以上が「回答書」の前半です。ここでいったん止めます。
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