2020/08/27

123)人口増加の立役者?

 ガラスの天井挑戦記の第1回「やり切った8年 顧みて」(1月26日掲載)で越氏は次のように書いています。~当選後は、全国で人口が減る中、子育て施策を充実させ、「大津に住む人を増やす」ことを一番の目標として働いてきました。(中略)一番うれしかったのは、16年から市の人口が増加したこと。「大津に住む人を増やす」という一番の目標が現実になりました。~

 連載は誇らしげな「勝利宣言」から始まります。これを読んだ人は文脈に導かれ、「大津市の人口は全国と同じく減少傾向にあったが、越市長が子育て施策の充実を図ったおかげで出生数や転入世帯が増え、ついに2016年から人口増加に転じた」と解釈するでしょう。しかし事実は全く違います。

 順調に増え続けてきた大津市の人口も近年は伸び率が鈍化し、2014年をピークとして停滞局面に入りました。詳しく見ると越市長就任後の2012年度は340,339人(前年比1,588人増)、翌13年度は341,489人(1,150人増)、14年度は342,343人(854人増)と微増を続け、15年度は342,031人(312人減)と減少に転じました。しかし16年度に342,163人(132人増)と増加に反転。その後17年度は342,154人(9人減)、18年度は342,088人(66人減)と減少し、19年度(越市政最終年度)は342,695人(607人増)とやや持ち直しました。

 繰り返します。①大津の人口は増加を続けていた。②越市政になっても増加を続けたが4年目に初めて減少した。③しかし、5年目にわずかに増加した。④6年目、7年目は再び減少し、8年目には増加した。以上が事実経過です。これにより、越市政5年目となる2016年から「市の人口が増加した」と言えるのでしょうか。

 次に増減の中身です。もし、越氏の「子育て施策」が多少とも功を奏したなら、この間の「出生数」や「転入者数」が増加しているはずです。ところが2012年度から19年度までの年間出生数は、13年度を除いて毎年減り続けており(3,062人から2,541人まで減少)、転入者数も増えたり減ったりの横ばい状態です。

 ここでもう一度、冒頭の「挑戦記」をご覧ください。「大津に住む人を増やすという一番の目標が現実になった」とまで書かれています。たしかに単語レベルで明白な嘘はありませんが、事実とまったく異なるイメージをふりまく手法は悪徳業者も顔負けです。しかし一番の問題は狡猾な言葉のテクニックではなく、わずか3~4年の施策実施で人口を増やすことができるという安易で不遜な発想です。市長として目標を掲げ努力するのは当然ですが、その結果、短期間のうちに統計数値に現れるほど人々の行動、しかも出産や転居という重要な行動が変容すると考えるのは余りに短慮、人間存在への理解が足りません。権力者のおごりも見え隠れします。

 大津市市民意識調査を見てみましょう。市民の方々が感じる大津のまちの魅力ベスト3は、「琵琶湖や山並みの自然」、「お寺や神社など歴史遺産」、「京阪神等への交通の便利さ」であり、子育てや教育の環境、高齢者や障害者への福祉施策などを大きく引き離して不動、断トツの3要素です。中でも「交通の便利さ」(加えて地価の安さ)は京阪神大都市圏から人々を引き付ける大きな要因になっており、似通った条件の草津、栗東、守山でも人口が増加を続けています。政策に工夫を凝らして「選ばれる都市」をめざす努力も大切ですが、自然・歴史文化・広域交通の3要素(自然の恵みと先人の遺産)には敵わないなあと、私は現役時代に痛感していました。

 さらに付け加えると毎年度の人口は4月1日現在の「瞬間値」です。たとえば大津市では、陸上自衛隊駐屯地(教育大隊)の多数の方々の転入・転出の一括手続きが何かの事情でずれ、数字が大きく変わったことも過去にありました。人口の増減は、あくまで複数年の推移で判定するものです。これでもまだ越氏は「私が人口を増やした」と豪語されるのでしょうか?「市長になって一番嬉しかった」とまでおっしゃる越氏のご意見をぜひとも伺いたいところです。次は越氏と「公」の問題を取り上げます。


                 (ウラムラサキ)



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