大変遅くなりましたが9月24日の公判の模様をお伝えします。同時進行する2つの裁判において共通して問われているのは「越市政における公文書の取り扱いの是非」、当面のテーマは「大津市の行った内部調査の結果」ですから、簡明を期して2つの法廷を区分せずに書きます。公判で明らかになった事実については原告代理人弁護士のお話に基づいており、私なりの説明を加えた部分もあります。
まず初めに、問題となっている公文書とは何か?これまで何度も書いてきましたが改めて整理しておきます。それは、「セクハラ疑惑をめぐる職員への聴き取り調書」、「セクハラ職員の処分を求める匿名の怪文書」、「職員が右翼関係者を伴って自らの異動とセクハラ職員の処分を求めて行った不当要求の記録等」の3つです。当該文書の主張にそって「セクハラ職員」と表記しましたが、これは「濡れ衣」で既に裁判で無実が確定しています。その時の裁判の証拠とするためにこれらの公文書の公開請求が行われましたが越市長はこれを拒否。その背景で許しがたい公文書の隠蔽、捏造、廃棄が行われていました。
今回の市の調査で「越氏が不当要求の記録等を綴じた自分のファイルの廃棄を職員に指示したこと」及び「それが2017年5月頃であること」が明らかとなりました。前後関係を見ると市の非公開決定は違法であるとの最高裁判断が示されたのが同年2月、市が「文書はこれしかない」として「A4一枚」を公開したのが同年6月、まさにこの中間の時期において請求対象となっていた公文書がごっそり廃棄に回されたというわけです。つまり越市政は文書を捨ててから「文書が存在しない」と説明したことになります。越氏の廃棄指示を受けた職員が訴訟関連資料であると気づいて保留扱いとし,今回の調査で証言したことからこの事実が判明しました。
少し前から経過をたどると「原告が公文書公開請求」 ⇒「市が拒否」 ⇒「原告が個人情報開示請求」 ⇒「市が拒否」 ⇒「弁護士会照会」⇒「市は無視」⇒「原告が提訴」⇒「市が一審で敗訴」⇒「市が控訴」⇒「市が2審も敗訴」⇒「市が上告」⇒「最高裁判断で1審判決が確定」⇒「越氏によるファイル廃棄指示」⇒「市による紙1枚の公文書公開」という流れです。
越氏は在任中に原本は廃棄したことを認めていますが、一方で今回の市の調査結果を報じた京都新聞の取材に対して「指示した覚えはない」と答えています。また、「ファイル自体に覚えがない」、「文書管理は部下に任せており廃棄の指示は絶対していない」とも説明しています(京都新聞9/24配信記事)。
越氏は、「大津市役所は訴訟対象となっている公文書を市長に無断で廃棄するずさん極まりない不法組織である」と主張しているのと同じです。それなら8年間市長を務めた越氏自身の監督責任も問われます。しかし私は断言します。大津市役所の職員が市長の指示なしに重大な公文書を捨てるようなことはあり得ません。いや私が力み返るまでなくこれは「組織の常識」です。
ある職員の良心により不法廃棄から免れた越氏のファイルの写しを原告代理人から見せてもらいました。私もよく知る不当要求の時系列記録や「怪文書」が綴じられており、私への接触も試みた検事と越氏のやりとりメモもありました。あちこちに越氏の特徴ある筆跡の書き込みもありました。このファイル自体を覚えていないと越氏が仰るのは不可解です。
「文書管理は部下任せ」との説明は一般的な説明として頷けるところもあります。確かに文書の作成、仕分け、編綴、保管、廃棄などの実務は職員がルールに基づいて行っており、市長どころか部長でも直接に手を出すことはありません。しかし、問題となっている公文書は、私が繰り返し述べている通り原告と被告(市)の攻防の焦点となっていた文書であり、市の内部でも一時は越市長一人が非公開を主張し、当然ながらそのとおりに組織決定がなされた文書です。このような重大文書を、しかも保存期間中に市長に無断で職員が捨てることは絶対にありえません。今回の市の調査結果が示すように「越市長が廃棄を指示した」と考えるのが自然です。
越氏は、ガラスの天井挑戦記でも「市長の仕事は決めることだ」と語っています。その言葉どおり「公文書廃棄」も決定し、指示をしたのではないか。この点について越氏には重大な説明責任があります。越氏は公の場で包み隠さず明瞭に説明をされるべきであると思います。それも「公務」であり「残務」ではありませんか。
今一度、越市政において蹂躙された公文書を掲げます。人に名前があるように文書にも文書名があります。訴訟上の分類で整理します。
公文書1「セクハラ関係文書」
公文書2「不当要求関係文書」、うち文書ア「不当要求の録音」、文書イ「不当要求の録音反訳」、文書ウ「時系列の記録」、文書エ「不当要求の報告書」、文書オ「不当要求者持参の書面」
公文書3「怪文書」
これらは私が在任中に主として元人事課長らから報告を受けた際にコピーも受け取り何冊かのファイルに綴じて副市長室の書庫で保管していたもので法廷でも証言ずみです。越市長も同様に保管をしていたはずで、このうち公文書2の文書ウ、エ、オと公文書3が、越氏が廃棄を指示したファイルに綴じられていました。
ちなみに文書ウは、市が今回の準備書面で「いまだに存否すら明らかにできない」と主張する一方、越氏のファイル中の文書として公開されています。担当部局には、越市政の残滓と決別して風通しよく、また筋も通った対応をお願いしたいと思います。
その他の報告です。今回の裁判では、市から再調査結果をまとめたものや認否のやり直しについて提出されませんでした。そこで、市の再調査を時系列で確認し、不法行為についての議論を再整理して進行スケジュールを決めるということになりました。 市としては、調査は行ったもののすでに辞めている越氏と元人事課長を調査対象としなかったため、一般職員の聞き取りだけでは、根幹部分が詳しく分からなかったとのことです。
また、原告代理人から「原告以外の文書は今も残っているのか。原告の文書だけがないのか。他の同種の文書も同じように廃棄されているのか客観的な事実を示してほしい」との主張があり、市の代理人からは「原告の文書だけは何故か本来のあり方とは違う。通常のとりあつかいとずれているという認識を持っている」との見解が示されましたが、何故そうなったかは把握できないとのことでした。
こうしたやり取りを踏まえ、裁判所からは、具体的な判断材料として大津市から客観的事実を提出するよう促されたことに加え、今回の内部調査だけでは不明点が残ることから、市の判断材料の提出もふまえて争点を整理し、原告側の求める越直美氏の証人尋問について今後しかるべく判断をする方向となりました。
次回は11/13(金)10時30分から第二次公文書部分公開決定取消訴訟、11時から国賠訴訟(弁論準備のため非公開)となりました。今回の裁判の結果をふまえて原告が書面提出し、大津市が応答することになっています。 今度こそ大津市から客観的事実を記載した報告書が提出されることを期待するものです。
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