2021/05/09

145)コロナと社会 2

 人生で遭遇した大きな災厄は何かと問われたら、私は迷わず阪神淡路大震災、東日本大震災と福島第一原発事故、新型コロナのパンデミックをあげます。一つ目は自然現象、二つ目は自然現象と人為である未必の故意の複合、三つ目は地球規模の生命現象と態様は異なりますが、いずれも多くの命と暮らしが犠牲となり、それを守るためにこそある政治の機能不全を私たちは目の当たりにしてきました。ここで政府の対策に3つの疑問を呈しますが世の多くの見方も同様だと思います。

<PCR検査の不実施>

 感染症対策は迅速な検査により一人を救い、伝播をとめて社会を守ることが重要ですが、感染力が強く無症状者も多いコロナの場合は尚更です。国内で初の感染事例(武漢のツアー客から日本人へ)が確認されたのが昨年128日、翌2月にはもう経路不明の感染が広がり始めました。国は、遅くともこの時から全力をあげてPCR検査や抗体検査の体制整備に着手すべきであったと思います。その代わりに行われたのが37度5分の熱が4日続くまで自宅待機を呼びかける「受診の目安」の公表で、それを守って亡くなる方も出ました。

 当時トランプ大統領は「混乱するから検査をするな」と指示しましたが日本政府も同じ考え方であったようです。検査には手間がかかり熟練した技術者の大量動員が必要との説明もありましたが言い訳にすぎません。そのころ国内のベンチャー企業が開発した全自動PCR検査機と試薬キットがフランスで大活躍し、同国大使から感謝状を贈られたとの報道がありました。「まず日本で使ってほしかったが誰も取り合ってくれなかった」とは社長の弁です。

 早い時期にPCR検査を健康保険の対象として国民の選択に任せた(放り投げた)ことも問題でした。他の感染症検査の兼ね合いもあったのでしょうが、一方で、国が10万円や布マスクをばらまいたのは新型コロナが「別格」であるとの認識に基づいていたはずです。その後、さすがに検査数は増えたものの発症者の検査⇒コロナ診断⇒濃厚接触者の検査という「後追いスタイル」は基本的に変わらず、限定的検査の結果が対策の基礎となっています。そして現在、全国民を対象とする予防的検査の実施に程遠いまま医療体制が危機的状況を迎えています。そもそも国にはまともなPCR検査を実施する意思がないのだと私は考えています。

<火に油のGO TOキャンペーン>

 この事業に関する不透明な金の流れや実施のドタバタ劇を忘れてはなりませんが、それはさておき、感染予防と経済対策を天秤にかけて間を行き来する対策の立て方にまず問題があります。そして全国でコロナが流行っているさなかに広域・大量に人の移動を促したこと常軌を逸しています。「検査の手抜き」と「人流の促進」。菅内閣は国民のために働く内閣だと自称していますが、これでは「新型コロナウイルスの繁栄のために仕事をしている」と言われても仕方ありません。

 Go To事業が政府の説明どおり観光関連産業を救うためなら人を動かさず金だけ動かす、つまり手厚い補償しかなかったであろうと思います。緊急事態宣言や蔓延防止措置による移動抑制もバランスの悪い中途半端な施策に終始しています。これは後知恵の批判ではありません。すでにコロナ500日です。政府は感染状況と対策を並べ効果を検証した報告書を作成し国民に説明すべきです。そうでなければ日本のコロナ克服は困難であると思います。

<五輪中止の不決断>

 東京オリンピックの延期決定は昨年324日、開幕まで残り4カ月の決定に遅すぎるとの声が国の内外から上がりました。ちなみに当時の感染者は国内で約1千人、世界で約40万人。現在は国内で約63万人、世界で約16千万人。「復興五輪」を標榜した際には安倍首相が「福島原発はコントロール下にある」と表明し、1年延期した今は「人類が新型コロナに打ち勝った証」として五輪を行うと菅首相が発言しています(4月の会見時にもなお)。私はこうした人々の頭の構造を見てみたいとつくづく思います。

 はじめから大義なき五輪ですが、さすがに今は政府も内心は開催を諦めているでしょう。先日の二階氏の「中止発言」も観測気球と後日の言い訳(柔軟かつ多角的に内部検討を行っていた証)の二つの狙いがあると思われます。開催予定まであと2か月余。もはや将棋の投了前の「形作り」の状況ではないでしょうか 。はやく投了して感染拡大の上乗せをやめ、医療体制の維持に注力すべきだと考えます。

 そのほかにも日本のコロナ対策に関して私たちが忘れてはならないことは沢山あります。国の報告書とは別に全体を視野におさめた客観的なレポートが出てくることを期待したいと思います。次回は社会と個人の関りについて書く予定です。




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