2021/06/27

148)権力者のウソ

  いま一度ふりかえりましょう。2017年2月の衆院予算委員会において安倍首相(当時)は、「私や妻が森友学園の認可や国有地払下げに関係していたということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」と明言し大きく報じられました。そしてこれが前代未聞の組織ぐるみの公文書改ざんの引き金となります。発言の勢いまかせの杜撰さからみて、この時点では安倍氏自身の判断にもとづく一人芝居であったと思われます。

 それにしても学園の名誉校長が昭恵夫人であったこと、彼女の学園礼賛の熱烈な言葉とともに籠池夫妻とのスリーショットが報道されたこと、何より国有地払下げが異例ずくめであったこと等を見れば「無関係の証明」が至難のわざであることは誰の目にも明らかでしたが、安倍氏は、ここは気合いで乗り切るべしと考えたのでしょう。忖度風呂の長湯で身体にしみ込んだ全能感も後押ししたはずです。

 しかしその勢いは続きません。安倍氏は、2018年5月の参院予算委員会において次のように述べました。「不正というのは何でしょうか。不正というのは、例えば金品を授受をして、授受をしてですね、行政にこれはこういうふうに政策を変えろと、こういうことであります。これがまさに今まで政治の世界においては大きな問題になってきた、贈収賄として問題になってきたところであります。まず、それでは全くないということは申し上げておきたいと。そして、そういう私は文脈の中において、一切関わっていないということを申し上げているわけでございます。、、、」いやまったく、聞いているこちらが恥ずかしくなる弁明ではありませんか。

 安倍氏の第一発言をうけ、財務省理財局長佐川宣寿氏が近畿財務局に対し決裁文書改ざんを指示したこと、すなわち安倍氏の発言に合わせて事実を書き換えるよう命令したことが「赤木ファイル」で改めて明らかとなりました。財務省の報告によると、佐川局長は「文書は外に出せないと『反応』した」のだそうです。「反応」というこれまた気恥ずかしく意味不明の言葉はリトマス試験紙を想起させますが、佐川氏は酸にふれても決して赤くなることはないでしょう。

 安倍氏が二つの発言の間に財務相麻生氏と対策を練ったこと、麻生氏が佐川氏に「善処」を指示したことは間違いありません。そして佐川氏は指示がなくても自らの権限で「善処」する気でいたであろうことも私は疑いません。かくして首相が真っ赤なウソをつき、財務相が追随し、担当局長が命令を発し、組織ぐるみで決裁文書の改ざんが行われました。そして、国民に仕えることを本分と考える赤木俊夫氏に対し、公務員の道を踏み外すよう強いて死に追いやりました。

 この件では政府の使った二枚舌も鮮やか(?)でした。訴訟でファイル公開を求める赤木雅子氏に対しては、「文書改ざんの経緯や内容については争いがないので回答の必要がない」と主張し(2020年12月大阪地裁提出書面)、衆院の予備的調査でファイル提出を求める野党に対しては、「訴訟に関わることであるため回答を差し控えたい」と存否すら明らかにしませんでした。

 まだあります。赤木氏の元上司の証言などにより国はようやくファイルの存在を認めましたが、このほど地裁に出した意見書では「ファイルは行政文書ではなく個人的に作成した文書である」と主張しています。もちろん公開されたファイルは予想のとおりバリバリの行政文書。「すみません。嘘でした」と言わないためなら二枚舌、三枚舌も平気、明日には虚偽とわかる言い訳も厭うものではありません。いやはや。組織防衛が正義であるという信仰を「選択」した政府関係者の視野には国民の影ひとつ映ってはいません。  

 安倍晋三、麻生太郎、佐川宣寿ら権力者の嘘は国民に対する重大な背信です。嘘や詭弁を弄する政治家、役人は枚挙にいとまがありませんが彼らを決して許してはならない。真相は徹底的に究明されるべきであると考えるものです。事情を知る人がもっと声をあげることも必要であり、それも公務員の務めであると思います。

 このところパソコンに向かうことができず、気になりつつも間があいてしまいました。なんの制約もない個人のブログとはいえ、ご覧くださっている皆さまに対しては無断欠席した生徒の心境です。どうもすみません。読者の多くは大津市職員の方々だと思われますが、自分の都合でラッパを吹くだけの国に振り回されて毎日が大変でしょう。どうか健康に留意いただき市民のために本分をつくされますように。いずれまたこの場でお目にかかります。








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