大津市労連の発行する「労連ニュース」(10月14日付)を読みました。大津市の公文書疑惑をめぐる国家賠償請求訴訟の公判を報じています。そこから市職員の方々が公務の在り方について鋭く深く自問しておられることが伺え、不肖のOBとしても一言書かずにはいられなくなりました。そう思い立ってからあっという間に半月が過ぎてしまいましたけれど。
職員諸氏は、越直美前市長のもとで行われた公文書の隠ぺい・改ざん・廃棄の真相を究明することにより、いったん損なわれた市民の信頼と自らの公務に対する誇りを回復したいと願っています。なぜならそれが公務員として当然の心情でありますし、公判には毎回少なからぬ現役・OB職員が傍聴席で耳を傾けてこられたという事実がその証拠である、私はそのように考えています。
そして10月7日、衆人環視のなか前市長越直美氏が出廷して証言台に立ちました。その証言について労連ニュースは詳細に報じています。書き手の義憤が伝わってくる数か所を紹介します。
「公文書を隠ぺい?・・(中略)・・当初、市は、『存否について答えることができない』と主張していましたが、審査会には『公文書は存在しない』、続いて『作成したが1年の保存期間後に廃棄した』と答えました。そのような市の態度に対し、審査会は2019年6月の答申で『審理を徒に遅延させることになったことは否めず、遺憾』と述べています。これらの経過について、越氏は、審査会や訴訟への対応は『人事課に任せていた』、それらについての相談や協議についても『なかったと思う』、人事課からは最高裁判決の説明も『なかったと思う』、その後の対応も『人事課に任せていた』・・(中略)・・と証言しています。」
「公文書の廃棄を指示?・・昨年7月、前市長は廃棄された公文書のコピーを個人ファイルに保管していて、最高裁での市の敗訴後、そのファイルの廃棄を秘書課の職員に指示していたことがわかりました。越氏は、個人ファイルは『職員が持参した資料や秘書課に差し入れられた資料で、秘書課の職員がファイリングしていたもの』で、”差し入れられた資料”は重要なものではなく『あまり確認していなかった』とのこと。(中略)問題のファイルの廃棄を指示したことは『覚えていない』、問題の資料が含まれていたことは『認識していない』、隠ぺい目的で廃棄を指示したのでは?との問いには『そのような事実はありません』との証言でした。」
「感想『そんなはずがない、あまりにひどい』・・(中略)・・裁判官が証言をどのように判断するのかわかりませんが、『良心に従って真実を述べる』と宣誓した直後の証言とは信じられず、前市長の下で仕事をしてきた私たちには、『そんなはずはない、あまりにひどい』と感じられました。一人の市民である原告とその家族に長期間に多大な困難を押し付けたことへの謝罪の気持ちや、関わってきた多くの職員への誠意や敬意も全く感じられませんでした。」
すでに申し上げたとおり私はコ氏について論評をする気はもはや全くありません。法廷で問われていることの真相はこのブログ(記事85以降)で詳細に説明ずみで付け足す何物もありません。労連ニュースでは、コ氏が「良心に従って真実を述べる」と宣誓したあとに繰り広げた「知らない・指示していない・覚えていない」の「3ない作戦」を手厳しく批判しました。もっともな話です。
どうしてこれが偽証罪に問われないのか。それは、証言は「証人の主観的事実」を述べることで良しとするという暗黙の前提があるためであると私は思うのです。裁判所は証人の「記憶違い」や「忘却」まで責めることはない。これら証言は物証という「客観的事実」と合わせて比較考量され、最後に総合的な見地から判決が導かれるのであろうというのが私の素朴な考えです。
もしその通りなら、証人が自分の証言を「信じ込んだふり」をすれば、それが法廷で通用することになります。かといって拷問して自白させるわけにもいかない。なんとも歯がゆい話ですが、私の証言とコ氏および元人事課長の証言が相反するのはこうした事情によります。「良心に従って真実を述べる」と宣誓させたところで良心のない人間には何の足かせにもなりません。おっと、この辺で止めておきます。「労連ニュース」の後半は、公務員が全体の奉仕者であると憲法および地方公務員法で規定されていることを指摘した上、次のように続けています。
「たとえ市長の指示であっても、私たち職員は『全体』への奉仕になるのか『一部』にしか奉仕しないことになるのか、指示が『公共の利益』のためになるのか、見極めなくてはなりません。また、地公法第32条には『職員は(法令等に従い)かつ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。』とあります。上司の命令に対しても、法令に照らして『できないことはできない』と言わなければならない時があるのは当然です。」
よく言った!それが公務員だ!赤木氏を追い詰めた財務省は大津市労連ニュースを読め!偉そうな言い方ですみません。しかし、これが公務に携わる者の矜持だと思うのです。このニュースを読めたのは近来になく嬉しいことでした。労連ニュースの末尾をご紹介して記事を終わります。
「先の証人尋問で元人事課長は『市長からの指示はなかった』と言い、前市長も『人事課に任せていた』とのことで二人の証言に食い違いはありません。前市長は『忖度』したであろう職員さえ守ろうとしませんでした。長への『忖度』は国でも問題になりました。大津市でもこの件を特異な2人の例と捉えるのではなく、どうやって『全体の奉仕者として公共の利益のために勤務』することを実践していくのか、職員一人一人が考えていく必要があります。」
いま大切なことは、大津市の公文書の隠ぺい・改ざん・廃棄
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