大津市は「公文書裁判」の敗訴を一体どのように受け止めているのか。大津市議会6月通常会議で八田憲児議員がこの点を質問され、佐藤健司市長が答弁されました。このブログでは前市長越直美氏の公文書不正をはじめ市民と法にそむく市政運営についての論評を終了していましたが(怒りと徒労感を感じつつ)、今回ようやく議場において市の公式見解が示されたのでこれにふれます。本件の中身は私自身の責任も含め詳細に述べたので省略します。八田議員の質問も大津市はこの教訓をどう生かすのか、すなわち「今後のこと」に力点が置かれており、私もそこが重要であると考えます。
佐藤市長の答弁要旨は以下のとおりです(下線は茂呂)。
・前市長及び当時の職員の行為はコンプライアンス上問題があり、組織として判決の内容を真摯に受け止める必要がある。
・特にあるべきはずの公文書が保存されていないことは大変遺憾であり、今後は適正な公文書の管理に努めていく。
・市はこれまでも公正な職務執行のための条例を制定しコンプライアンスの推進を図ってきた が、引き続き職員のコンプライアンス意識のさらなる向上と組織体制の整備を図っていく。
市は控訴を見送っており議会答弁も「仰せのとおりです」というトーンになっています。惜しむらくはもう少し踏み込んで頂きたかったところですが、それはさておき少し感想を述べます。本件は越直美氏が主犯、元人事課長が従犯、佐藤市長は係争の承継者という構図ですが、行政機関の継続性および事案の重大性に鑑みて佐藤市長が見解を示したうえ善後策を講じていかれることは当然かつ重要なことであると思います。
佐藤市長は「組織として」判決を真摯に受け止める必要があると答弁されました。組織とはもちろん「大津市役所」ですが、あえて分けると事案発生時の市役所(越市政)と今の市役所(佐藤市政)の二つがあります。佐藤市長は後者について語っていますが、それに加え、前者においてなぜ公文書不正を阻止できなかったかという検証が必要ではないでしょうか。
前市長と元人事課長の隠密行動でしたが、公開の法廷で多数の証拠が示され関係者の具体的な証言もあり、個人情報保護審査会と担当課のやりとりも繰り返し行われました。こうした中で「組織として」公文書不正に気づかなかったことはありえません。それにも関わらずなぜ不正に歯止めをかけられなかったのか、なぜ法廷で虚偽、不毛の主張を続けてきたのか、ふりかえるべき点はこれです。
もっとも「市長の不正を糺す」など組織において普通はありえないミッションで、市長に仕えることを本務とする市職員にとっては容易なことではありません。そもそも佐藤市長をはじめ大多数の市長のもとではこんなことは起きないでしょう。しかし大津市役所は現にそうした状況に陥ったわけです。最大最悪の責任者は越直美氏ですが今はそれを横において、大津市役所は「組織として」無謬であったかどうか。これは繰り返し言ってきましたが職員にとって「市長か市民か」という「公」の根幹に関わる問題です。いまさら検証委員会を立ち上げるわけにいかないのなら内部会議で振り返ってはどうか。少なくともまず、職員各自の胸の中で「こんな時にどうすべきか」を考えて見られたらいかがかと思うものです。
また佐藤市長は「あるべきはずの公文書が保存されていない」ことが大きな問題であると指摘されました。私もまったく同感ですが、「保存されていない」理由は事務的なミスではなく隠ぺいを目的とした意図的な廃棄であったこと、はじめは「文書が存在していない」と虚偽を申し立てたことがさらに大きな問題です。これはコンプライアンス云々ではなく「公務員失格」のレベルです。下手人は市役所を去りましたが、大津市役所がかかる犯罪行為の舞台となったことを「組織として」銘記すべきである、それが取組の第一歩であると私は思います。
今後について佐藤市長は「コンプライアンス意識の向上と組織体制の整備」を図っていく考えを示されました。そのためには市長ご自身が率先して範を垂れることが何よりも重要であると越直美氏の事例に鑑みて思うものです。部長、課長の姿勢も重要であり、職場に民主的な空気が漂っていることが大切であると思います(前にも同じことを書きました)。
風通しのよい職場で自由に意見が交わされ、職員の一人ひとりが「公」のクワで自らを耕すイメージを持ち得たらどんなに素晴らしかろうと思います。急いで付け加えなければなりませんが、私が課長や部長であったときも理想の職場環境は作れませんでした。しかし、一人でも多くの人が「そのように思う」ことの大切さをあらためて感じています。
この公文書不正に関する私の意見は、記事174(大津市と越直美氏が反省すべきこと)で述べたとおりです。「公」を内部から腐らせるような事案がなぜ起きたか、組織として未然防止や軌道修正ができなかったか、どのような教訓をくみとり今後に生かすか、に関する私見です。本来は裁判終結のタイミングで大津市が本件をひろく市民に説明して再発防止を約束するとともに、原告に対しても丁寧な説明、謝罪を行うべきですが、私の知るかぎりこれらはなされていません。
ともあれ「コンプライアンスの堅持」に関しては八田議員の問いかけで市の考え方を知ることが出来ました。大津市の今後の具体的な取組を心からご期待申し上げます。
ちなみに越直美氏が、前任者の不始末を処理する今の佐藤市長の立場なら「私自身も被害者であり、こんな卑劣な行為は許すことができません」と答弁をしたであろうと想像します。詳細な答弁書を代筆したい気さえしますが、さすがに本筋から外れるのでやめておきます。
なお、私事ですが、不整脈のアブレーション治療で短期入院をしたため、今回もブログ更新が遅くなりました。また、一緒に暮らしている母の様子を見るにつけ人生について考えさせらることが多いのです。赤の他人の皆さまが多少がまんしてなら読める、という書き方ができれば、いつか少しだけ書きたいと思います。
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