2024/05/07

233)再発防止に異議あり!

 企業の不正が発覚すると、昨日までのほほんとしていた社長が慌ててカメラの前に現れ、平身低頭してツムジを晒しつつ再発防止を誓います。ビッグモーターはわざわざ車を傷つけて板金塗装を行い50億円の保険金を詐取していたことが発覚し、社長はお詫び会見のついでに「靴下にゴルフボールを入れて車体を叩くことはゴルフ愛好家への冒涜だ」という珍説を述べました。

 ダイハツは30年にわたって衝突試験のデータ改ざんを繰り返し国の認証を受けていました。タイマーでエアバッグを膨らませる、運転席ドアのテストを行わず助手席ドアのデータを転記する、衝突時に頭が揺れる加速度をごまかす、タイヤの空気圧を変えるなど「あの手この手」です。どちらの企業犯罪にも第三者委員会が設置されました。こうした社会的不正について「原因究明」と「再発防止」が重要であることはいうまでもありません。

 しかし私は、当事者が「再発防止」を口にするたびに違和感を覚えます。この言葉は、例えば「複数の要素が相互に関連するシステムのどこかに不具合が発生し、それがチェックをすり抜けて全体に及び、本来の目的に反する不良品を生産・出荷していたことが判明した。こんなことは二度と起こすまい」等という場面に使用されるのが日本語として伝統的かつ模範的な用例でした。すなわちその「出来事」が偶発性を帯び、当事者に責任はあるものの顕著な悪意や常習性は認めにくいというケースです。

 しかるにビッグモーターもダイハツも「全社あげて」とはいわないけれど明らかに組織的に、かつ継続的、目的意識的に不正を行い、不当な利益を得てきました。承知の上の悪事です。そこの社長から「再発防止に努める」と聞くと、「他でもないアンタ自身の話じゃないか」と突っ込みたくもなります。この話法は「実は自分には責任がないのだ」という防衛本能の現れです。この手の社長が多いけれどこれは組織代表者の態度ではありません。

 以上が前置きです。岸田氏は字義どおりの「外遊」から戻って開口一番、自民党派閥の裏金の「再発防止」に努めると語りました。耳にたこ、岸田氏と犯罪企業の社長がダブって見えます。自民党・派閥・所属議員は組織的、継続的、目的意識的に裏金を集め、自分や仲間のために使ってきました。判明しているだけで裏金議員は85人、収支報告書不記載額は17億円、議員へのキックバックは6億円、しかも5年間より過去は闇の中です(話は違うけれど二階氏が5年で50億円の政策活動費を使途の制約なしに貰っています)。

 前にも書きましたが、これらは長年の自民党の国民軽視・脱法・金権体質(特に第2次安倍政権以降)の産物であり、今の責任者である岸田氏がもっともらしい顔で「再発防止」を唱えるのはちゃんちゃら可笑しいと私は思っています。くどいようですが再発防止は必須です。でもこの言葉をもてあそぶ岸田氏および自民議員の「他人事話法」は許し難いし、それを容認する野党やメディアにはしっかりせよ!と言いたいところです(内閣支持率が上がった聞いて耳を疑いましたが、考えてみればそれもあり得る話です)。

 では自民党および所属議員はどうするべきか。この期に及んで自分たちの「負け幅」を最小限に食い止めることしか念頭にない彼らにクリーンな政治を求めることは、カツオノエボシに「砂漠で暮らせ」というに等しい話です。法や制度の改正はむろん必要ですが、最大の問題は自民党が「与党であることに安住」している点でしょう。自浄が無理なら他浄しかありません。やはり民意による政権交代が理屈の上だけでなくある程度の頻度で起こることを私たちの社会が「経験」することが重要だと思うのです。

 ならば米国の混乱がよいのか、そもそも日本には自民党に拮抗する野党がない、等の反問が聞こえそうです。ごもっともです。しかし私は「制度」と「現実」を区分した上あるべき姿を模索することが大切であり、また、とかく「長いものに巻かれたがる」私たちのメンタリティについても自省する必要があると考えます。

 これで「本論」が終わりです(お粗末様でございます)。源氏物語について書く予定が今回も脱線しました。いま大津市歴史博物館で紫式部の企画展が催されているので、一度見せてもらって記事にしたいと思います。といっても私は源氏物語や式部日記を読んだことがありません。大津とのエニシを頼みとするばかりです。





 

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