2025/03/29

270)第三者委員会の報告について

 ビワマスにやさしく斎藤元彦にきびしい熱血漢のO君が、兵庫県の第三者委員会の会見動画を見るようにメールしてきました。あいかわらず深夜まで怒りながら動画を見ているらしく発信時刻は午前4時すぎです。「知事のパワハラが職員の意欲をそこなう。それが県政の停滞につながる。藤本委員長はそう言うてはった。大津通信でも書いてたなあ、思い出すわ。あれとおんなじや!」とありました。

 私は朝にメールに気づいて動画を見ました。及び腰だった百条委員会とは違い、第三者委員会は、知事のパワハラ・おねだり疑惑は一部真実であったことと、知事らが行った「告発者つぶし」は違法であることを明瞭に認定し、そのうえで県政運営に言及しています。藤本委員長の情理をつくした説明を聞いて、この人が知事ならよかったのにと私は思いました。

 「ほんまに無理がとおって道理がすたる世の中や!」と嘆くO君は、その憤懣を分かちたい思いとブログのネタを提供してやろうという親切心からメールをくれますが、斎藤問題は書いたばかりだし(記事267)、それをとうに先取りしていた越問題(拙劣市政運営)もすでに昔話です。そこでトンデモ首長の話はやめ、藤本委員長が語った組織論について少し述べます。

 第三者委員会の報告書によると、同委員会は所属事務所の異なる6人の弁護士で構成され、6か月にわたって兵庫県職員(元職員を含む)116人からの聞き取り、各部局から提供された120の資料、百条委員会との共通資料などに基づいて調査を行い、県庁の知事室・秘書課・保管庫などの視察を実施、12回の委員会を開催して216ページの報告書を作成しました。
 
 報告書は、元県民局長の通報内容には「真実」と「真実相当性のある事項」が複数あり、県政に対する重要な指摘を含むものであったと指摘した上で、「うそ八百」、「公務員失格」などと知事がコメントしたことは、通報者に精神的苦痛を負わせるばかりか職員一般を委縮させ勤務環境を悪化させるものでそれ自体がパワハラであると認定しました。また県職員がパソコン内の通報者の私的情報を流出させたことも重大視しています。

 なぜこんなことになったのか。報告書の一部を要約すると次のとおりです。~ 斎藤知事は、就任後に「新県政推進室」を新設して以前から面識のあった職員らを中心に若手を登用した。話をする相手は推進室メンバーばかりで、自分の施策や思いもメンバーを通じて庁内に発信した。職員からの報告や意向伺いも彼らを通じて受けた。同時に知事はこれらの側近に対して過酷、理不尽な要求を行ったが誰も反発せず忠実に従った。そこで知事と側近の同質化、一体化が進んだ。

 職員は知事と直接のやり取りができず、県庁内のコミュニケーション不全が進行した。その結果、知事協議の場で認識の違いが明らかになったり、知事の知らない報道がなされるという事態が頻発した。そんな時、知事はいらだって事情を聞かずに叱責し、机をたたき、協議を打ち切る等の行動に走った。このようなコミュニケーションの不足とギャップがパワハラの素地となった。

 一方で兵庫県の職員は総じて仕事熱心で、無理をしてでも上司の要求に応えようとする傾向が強い。しかし高すぎる要求や過剰な要求はすでにパワハラである。それに応えると次には更に高い要求がなされる。職員の無理な頑張りはパワハラの連鎖を生む。一人の問題ではなく周囲の職員まで委縮させ勤務環境を悪化させる。たとえ自分は我慢できてもパワハラは許すべきではない。この点で兵庫県職員の我慢の風土とパワハラ感覚の低さが問題を深刻にした。~

 以上は第三者委員会の指摘、以下は私の感想です。報告書に示された知事と職員の関係は真実に違いありません。20年続いた井戸県政を引き継いだ斎藤知事が、刷新を急ぐあまり従来の県庁の情報共有の手順や指揮命令の系統を無視し(うまく使えばよかったのに)、お気に入りの若手グループを重用し過ぎた結果、「知事・側近」と「一般職員」の間に乖離と相互不信が生じたのでしょう。これは原理的に知事が悪いのであって、しかも斎藤元彦という人間の資質が拍車をかけました。

 職員にとって知事(首長)は選挙によって県民の信任を得た特別な存在です。社員にとっての社長よりずっと重い存在だろうと私は思います。地方自治法に職員は首長のために働くべしと書かれていますが、言われなくても知事のために働きたいというのが職員の基本的心性です。しかし兵庫県職員は、「知事が何を考えているのかよく分からない。せっかく協議の機会を得ても話が通じないし理由もなく急に怒り出す。これでは仕事にならない」と感じたでしょう。

 知事にとって職員はどのような存在だったでしょう。斎藤元彦には兵庫県庁が伏魔殿に見えていたと思います。「古池にすむ背中にコケの生えた亀みたいな職員が県民ではなく自分たちの都合いいよう仕事をしている。とくに幹部連中は井戸県政の残党で油断できない。比較的ましな若手グループを使って『維新』を進めるしかない。いまの主人は誰かを全職員に思い知らせてやる」と斎藤は思っていたはずです。

 本来なら副知事がパイプ役を務めるべきところですが、片山副知事にその意志は弱かったようです。そこで見かねて立ち上がったのが元県民局長でした。元局長にしてみれば知事は話して分かる相手ではないし手段は公益通報しかなかったでしょう。その心情は察するに余りあります。それを踏みにじったのが被通報者である知事本人ですから、O君のいうとおり無理が通って道理が引っ込む世の中です。

 知事の側近グループは職員から裏切り者とみなされているでしょう。白羽の矢を立てられて高揚し、必死で働き、害悪の拡散に手を貸すことになった彼らもまた大きくは被害者だと思います。第三者委員会は兵庫県職員の中にパワハラを容認する風土があったと指摘しますが、私の見方は少し違います。先述したとおり職員にとっては知事は「県民の代表者」であって、知事がふっかける無理難題は「県民のお叱り」に見えるのです。パワハラでなくカスハラです。だからよけいに我慢してしまうのです。

 報告書の最後の「まとめに代えて」はよい言葉です。「県当局の仕事は、住民の多様な願いを受け止め、複雑に絡み合う利害を調整し、光の当たらないところにも目を配り、取り残される者のない社会を実現していくことである。政治は、少数のエリートだけで行いうるものではない。現場の職員が献身的に働くことにより初めて実を結ぶものである。そのためには、職員がやりがいをもって職務に励むことのできる活力ある職場でなければならない。活力ある職場であるためにはパワハラはあってはならない。」

 全文を引用したいぐらいですが、私はこの意見に200パーセント賛成です。市役所職員として40年働いた実感そのものです。考えてみれば当たり前の言葉であって地方自治体に限らず中央官庁にも当てはまります。斎藤元彦はもちろんですが、兵庫県以外の公務につく全ての人に読み直してほしいと思います。

 先日、ひさしぶりに桐生の頂上まで行きました(いつもは山すそか中腹まで)。あちこちでウグイスが鳴き始めています。稜線に出て風に吹かれ湖南平野を見ていたら、「はい、こんにちは」と声をかけられました。ふりかえると中年の女性二人です。こちらも挨拶したら「お兄さん一人ですか?」と聞きます。はいと言うと「そっか、それは淋しいねえ」と言われてしまいました。やんぬるかな!

 私は「ジモティ」で不用品をもらいに来たベトナム青年から「おじいさん」と呼ばれ、訪問セールスの人から「お父さん」、桐生では「お兄さん」と呼ばれています。それはどうでもいいけれど、二人称の呼称が多様なのはいかにも日本的です。学校では「あなた」だと教わりますが、婉曲をよしとする世間の感覚に照らすと「あなた」は、指示・限定のニュアンスが強い(ストレートすぎる)と感じられます。主語がしばしば省略されることも関係するでしょう。

 ところで「はい、こんにちは」という挨拶はなんら不適切ではありません。しかし私には「どうしてか説明しにくいけれど何だか馴れ馴れしくて押しつけがましい感じがする」のです。といって私は山の上で行き会った女性に悪い印象を持ったわけではなく、むしろ元気でいいなと思いました。私が腰を上げかけたらその女性が「耳岩はどこですか?」と聞くので「あなたがいまご覧になっている岩ですよ」と返事したら、二人で手を叩いて笑い出しました。陽気な二人は白石峰へ、私は天狗岩にむかい「お気をつけて」と言い合って別れました。

 天狗岩でお茶を飲んでいたら今度は背後の絶壁から人が現れて驚きました。私は人の顔が覚えられませんが、さわやか、機敏、日焼けの3拍子そろったこの人は以前にも出会った岩登り名人のO氏であるとすぐ分かりました。今日は生徒を教えているとのこと、岩に打ち込まれたボルトにカラビナをひっかけあっという間に断崖に消えました。もし、仮に、この人を斎藤の代わりにすえたら兵庫県庁はきっとうまく行くはずです。

 一晩たって追記します。書くほどのことでもないけれど橋下徹が「斎藤元彦は知事の資質に欠ける」と評したそうです(ネットではこの手の短信を避けられません)。おまえはぬるぬるして気持ちわるいとナメクジがナメクジに言うがごとし。吉本新喜劇なら全員がずっこけるところです。普通はおらんかと思ってしまいます。





 
 
 

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