粘り腰の石破氏がついにギブアップし、待ちかねていた人たちが舞台に出てきました。次期総裁を決める必要があるのは百も承知だけれど、やれやれまたかという感じです。自民党と無縁な私ですが、どうせなら石破氏より政治家として優れた人がバトンを受け継いでほしいと思います。
そんな目で候補者を見ると、逆に石破氏の美点が浮かび上がってきます。噛んで含めすぎる話し方はさておき、石破氏は自前の言葉で話せる数少ない政治家の一人です。議論低調の国会において、石破氏と立憲・野田氏の応酬は聞く人の耳を傾けさせるものがありました。自分の考えを人に通じる言葉で語ることは政治家の基本資質ですが、この点で石破氏に並ぶ候補者がいるでしょうか。
かつて石破氏は自民党主流派に異論を唱えて党内野党と呼ばれました。多数に与せず正論を述べんとするその姿勢を評価する声は確かにあったし、党内の「リベラリスト」に擬せられる存在でもありました。また安倍、麻生、二階、萩生田氏などと比べて「金権度」が低くてクリーンなイメージがありました。1年前の自民党はこのような人物を求めていたわけです。
しかし石破首相は「石破らしさ」を出せずに終わりました。党内の期待は第一に「選挙に勝つこと」だったでしょうし、国民(少なくとも私)は石破氏が「正論」を少しは実行することを期待していました。しかし、「日米地位協定の見直し」は米大統領との会談で「ほのめかし」すらされず、「核兵器禁止条約会議へのオブザーバー参加」は見送り、「選択的夫婦別姓」も先送りとなりました。「金まみれの腐敗議員」も不問のままです。
いやそんなことより選挙に負けたことこそ問題だ、トップは責任をとるべしいうのが自民議員の本音でしょうが、そのような思考回路だから選挙に負けたのであって、2回の国政選挙の結果は、参政党が良かったのではなく自民党が悪かったことを示しているのだと思います。この結果を「党首の辞任」でチャラにできるという考えが虫がよすぎます。
サントリーの新浪会長がややこしい薬に手を出して辞めたのは「引責辞任」として理解できるけれど、石破首相が辞めることは、いったい誰に対して、どのような責任を果たすことになるのでしょう。「けじめ」や「落とし前」のレベルを超えた論議が求められるけれど、いずれにせよ自民党内の話です。それよりこの2カ月ほどの政治の停滞については誰が責任をとるのでしょうか。
自民党は自ら選んだ石破氏という人間を生かせずに終わった、という見方もできます。一年たって潮目が変わったとも思えないけれど、今度はどのような人を選ぶのか、選ばれた人はうまくやれるか、党はその人を生かすことができるのか。与野党の関係も変わるだろうし、国民の目先も変わります。とにかくマシな人が選ばれてほしいと思います。
私は各候補者の政策を比較検討するつもりはなく(そこまで興味がない)、たんに彼らが石破氏より資質的に劣っているのではないかという私見により書いています。かといって石破氏が優れた政治家だとも言いません。世の中に本当に優れた高潔な人がいて、それを私は社会の一員として有難く思いますが、そのような人はたいてい政界の外にいます。政治とはなにか、いや権力とはなにかという問題につながる現実です。
話は変わって、前回の記事(スマホ厳禁)を読んで友人O君が感想メールをくれました。彼は、うなぎ店主の頑固さに一定の理解を示したうえで、店主があわせ持っている独善性や偏狭さを指摘しています。そしてそんな店がつぶれず営業を続けているのは、店主の流儀を結果的に受け入れている「東京の客」の根性がないからだと論じています。以下にO君のメールを引用します(例のとおり驚異の言文一致体です)。
「うなぎ屋の記事おもろい。そんでもおやじに共感できるとこもあったわ。俺が鰻屋でもうまいもん食いに来たことを楽しんでほしいやろな。スマホさわってな済まんような気でおられたら場所と時間の意義を分かっとんかい、て感じ。そやけど、客ちゅうのは不特定多数の他人やんか。おやじには共感を伝える工夫が足りひんな。しかるべき表現手段できちんと客の理解を求めたら、 社会への提言にできそうな気がするわ。それに茂呂のケースは必要に迫られたスマホの使い方で、 おやじがそのニーズまでツベコベ言うたらアカン。その辺歩いとる奴らのすることにいちいち文句言えるの?やんか。
おやじは視野が狭いし思考が鈍い、それが土台の横柄さがある。それが証拠に茂呂が食うのやめることまで、 おやじは予測できとらへんた。ふつう食うのやめるに決まっとるやんけ。そいでもトラブルになる一歩手前で無関心に逃げ込むちゅうのが東京流で、 客がおとなしいし従順や。『もうリピはないねえ』とかキザったらしい言い方しよって仕返ししたつもりになっとるねん。リピせん前にひとことおやじにひと言文句言うて来いと俺は言いたいわ。」(引用おわり)
ご覧のとおりO君はばりばりの関西人ですが、東京の大学を出て関東圏で仕事をしていたので私より見聞が広く、また同い年と信じられないほどインターネットへの造詣が深いのです(凝り性で新し物好き)。たったいまO君に電話し、ブログで総裁選のことと君のメールを書きたいがいいかと聞くと「おお、かまへんで」と快諾し、同時に石破氏を惜しむような言葉を発しました。私と似たような気持ちだろうと推測しました。
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