2024/06/21

237)「女性活躍」!

 「小池百合子」の活字の上に「 緑のたぬき」の文字がタスキがけされており、思わず笑ってしまいました。新聞にあった週刊誌の見出し広告です。「かさね」や「あわせ」の先達、松岡正剛氏なら何と評されるでしょう。4年前の都知事選の時、私もこのブログで「たぬき目の小池百合子」と書きかけて妻に意見を求め、「やめた方がいいよ」と笑顔で言われ従ったことを思い出します(いま書いてしまいました)。

 白いスーツの蓮舫氏がさっそうと立ちました。ハブとマングースの戦いだ、いやタヌキとキツネだと囃す声があります。田村智子氏が蓮舫支援を表明すると、共産党とは一緒にやれないと国民民主が言い出しました。自公の小池支援は他に選択肢がないのでしょう。安芸高田市長の石丸伸二氏も都知事選に名乗りを上げました。対話によらずネットの力で人口2万6千の町を「改革」しようとしたこの人物に都政改革のプランがあるのか、経歴に花を添えたいだけなのか。

 候補者は50人を越えたそうです。やれやれ。しかし落選と分かって出る人を止めるわけにいかない、これも民主主義のコストだと思っていた私は時代遅れでした。今は出馬するだけで供託金を引いても儲かる場合があるとか。都内1万4千か所にポスターを貼りめぐらし、政見放送で一時的にテレビを乗っ取れば、ユーチューバーにとっては広告収入が大幅アップするというのです。世も末です。昭和に戻りたい。

 自民党の一部は「仕方ない、ここらでいっぺん女に総裁をやらせてみるか。」と考えているようです。しかし適材があるかなあ(男女とも)。高市早苗、野田聖子、稲田朋美、小渕優子氏らより上川陽子氏が「まだしも」に見えます。しかし、この動きが具体化したらまず当の女性議員たちは、「これまでさんざん軽んじておいて困った時だけ女性を便利使いするな!」と啖呵をきってほしいものです。

 もっとも、そんな人なら初めから自民党議員をやっていないかも。「上川首相」になっても同党の基本路線(憲法改変、対米べったり、大企業優遇、原発推進など)は不変でしょう。新しいワインを入れるなら革袋ごと変えなければ。解散総選挙はなさそうです。国政と都政は別物とはいえ深く関連しています。7月7日には、自、公、維新と関わりのない候補者の内から最もマトモで力のある人が選ばれることを私は祈るものです。

 さて、別の日の新聞の雑誌広告に「全国最年少女性市長の試練」とありました。本ブログの読者はよくご存知の人物による寄稿の見出しです。いつまでこれで食ってるんだろうと思います。「試練」の中には、年長の男性の部下から机を叩かれたという「鉄板ネタ」も入っているでしょう(この件は前に書きました「机を叩いたのは誰」)。近年この手の「パフォーマンス首長」が増えました。近くをなおざりにして遠くを「攻める」彼らの手法は、新自由主義的思考と人間不信の産物だといえそうです。候補者と有権者とのガチンコ対話集会を制度化して「まちがい当選」を減らしたいものです。

 いまさら言うまでありませんが女性と男性は完全に同等であるし、また完全に同等であらねばならないと私は思っています。しかし日本は、憲法ができて80年ちかくたつ今日なお男女格差大国です。毎日その空気を私たちは(若者も)吸っていますから厄介です。私自身は妻とともに歩んだ人生から大いに学ぶところがありました。思索を深めたというのでなく、この問題を自分及び二人の問題として捉えるクセがついただけのことですが。

 ところで女性天皇はアリでしょうか。私はおおアリだと思います。天皇と天皇制については色々と個人的感想がありますが、それはともかく憲法に規定された「象徴」を男性に限る道理がありません(男系男子を定める皇室典範は各論レベル)。これは理屈ではない、日本固有の歴史と伝統だと言う人も多いでしょう。しかし「該当者」がいなくなったらどうするか。この危機感から「右翼」の中にも女性天皇待望論があるようです。まず国会において自由にオープンに議論されることを期待します。

 それにしても「女性活躍」という言葉が早くなくなってほしいものです。議論の段階はとうに過ぎています。政界も産業界もジェンダー・クオータ制や同一賃金制などに積極的に取り組むべきだと思います。「意識が実態を変える」のではなく「実態によって意識を変える」べし。その後で必要があれば議論するという道順です。

 先日、妻の母の妹が訪ねてくれました。元気な叔母、89才。この人は長らく、三上山に登って反対側に下り、回れ右して再び頂上を経由し出発点にもどるという往復登山を楽しんでいました。最近は「ちょっと足がよわった」ので頂上から引き返すそうです。囲碁がめっぽう強く全国大会の常連でした。先週は大阪に一人ふらりと円空仏を見に行ったそうです。その人がわが家の机の上の「別日本で、いい。」に飛びつきました。

 「琵琶湖は日本のウツワだ」、「近江に恋して」、フーンいいやないの、、、表紙をみて独りごちていましたが、すぐにこれを買うと言いました。馴染みある白洲正子や田中優子の名前や、近江の美しい写真に惹かれたようです。よかったら貸すよと言う私に、いや自分のものとしてゆっくり読むと答えました。いわく、今さらだけど近江のことをもっと知りたい、自分の住んでいる所くらいちゃんと知っておこうと思うんよ。滋賀県は知るほどにいいとこだよ。

 これはよく分かります。私も(今さらだけど)近江、ひろくは日本に堆積している有形、無形のものの存在を確かめたい気が強くなってきました。ここ40年余の歳月への惜別感がまずあり、さらに遡って床しい気持ちが過去に伸びていくのは、やはりトシのせいもあると自覚します。帰宅したケイコちゃん(と呼んでいます)から「帰り道で近鉄の本屋によって注文したよ」とラインが来ました。文末に踊る黄色い絵文字。親しい先輩から活を入れられた気分です。




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