前回記事の続きで自民党の裏金を告発した上脇博之教授の講演会の感想を少し書きます。フェリエ南草津の会場は130人の定員に220人が入って立ち見がでる盛況でした。しかし、と続けると語弊があるけれど、ほぼ全員が私と同年配か年長と思しき人々。若者にとっては休日も忙しく、そもそも講演会などまどろっこしいかも知れません。新たな問題が次々とが起こる中で裏金問題が後景に退いた感覚もあるでしょう。自らがかくあるべしと考えることのために体を張っている人の肉声を聞くチャンスであったのに、、、
いつもと同じバンダナ姿の上脇博之氏は温かい拍手で迎えられ、開口一番、教壇に立っても拍手はこない、これだけでもう自分は満足だが講演料をもらうまで帰れない、と皆を笑わせてから詳細な資料にもとづいて大きな声で話を始めました。すでに報道された事柄がメインですが、やはり「当事者の語り」には熱と力があります。ごく一部をご紹介します(私流に要約しています)。
・裏金事件の解明はひとえに「しんぶん赤旗」の努力に負うものだ。全国に58000の政治団体がある。総務省のホームページと各地域の選挙管理委員会の公表データを照合し、これらの中から「記載されていない数字をあぶりだす」作業は恐るべき根気と粘り強さがいる。「赤旗」の記者魂に敬意を表したい。しかし「分かった範囲でこれだけ」という面もある。
・「赤旗」のスクープと上脇氏による刑事告発(清和政策研究会の政治資金規正法違反容疑)が2022年11月に行われたが、一年後(2023年12月)の朝日新聞の報道をきっかけとして国民が広く知る大事件となった。私(上脇氏)も民主主義にとって情報がいかに大切であるかを痛感した。
・自民各会派は一斉に収支報告書(2020年~2022年分)を訂正したが、訂正額が当初記載額を上回るところが多かった。すなわち「裏金」の方が多いということ。その大半は議員にキックバックされていたが裏金プールに残る金銭もある。またこれらの「訂正」がどこまで正確かどうかは問題が残る。なお2023年分は今後明らかとなる。
・個人の収支を偽っていた「裏金議員」は自民党自身の調査で85人(馳浩石川県知事など5名を含まず)いるが誰も責任をとっていない。直接の法的責任を負うのは会計責任者だが、形式論で済む話ではない。特に「起訴猶予」となったケースは「不起訴」と異なり犯罪事実が明らかであり、関係議員らが知らぬ顔であるのは許しがたい(世耕、萩生田、三谷えり子、宏池会、志帥会等々)。
・自民党の受け取る政党交付金は160億~170億円ほどで収入全体の7割である。原資は税金だから、まるで「国営政党」だ。しかも同党は毎年のように政党交付金を上まわる金額を翌年に繰り越している。カネに色はつかないけれど当該年度の政党交付金は手つかずの状態、すなわち不要であったとも言える。
・内閣官房報償費(機密費)は会計検査院すら領収書のチェックができない公金(税金)であり、年間12億のうち9割は官房長官が自由に使用している(最高裁2018年判決による一部開示の結果で判明)。これは政治資金とは別の「政府のカネ」だが、自民党のために使用されている疑惑がある。
・調査研究広報滞在費(旧文通費)は事実上第2の議員報酬となっているが、年間1200万の使途の報告義務がない点が問題である。
・国民のための真の政治改革が必要。政治資金パーティーの禁止(企業献金は贈収賄に他ならない)、高額のオンライン講演会の禁止、政党が行う公職の候補者への寄付の禁止、機密費の透明化(機密度に応じ将来の使途報告を義務化する)、旧文通費の使途基準を定め報告を義務化する。あわせて衆院小選挙区選挙、参院選挙区選挙の改革により民意を歪めずに反映させることが重要である。
以上は講演からの抜粋で以下は私の感想です。
上脇氏は昨年の 「car of the year」ならぬ「person of the year」だと思います。ひょっとして自分の偏りをパワーに変えるタイプの人かと想像していましたが、それとまったく異なる「普通人」であると知りました。それどころか学問と実践を切り分ける研究者が多い中、生活の場においてその統合を目ざす人でもあります。
「出る杭は打たれるというけれど何らかの妨害はありましたか?」という会場からの率直な質問に答え、「弁護士からの注意に基づきホームの先頭で電車を待たないようにしているが、これまで特に圧力を受けるようなことは無かった」とのこと。おそらくそれは話半分で、不愉快な思いも多くあるはずだと私は思いましたが、深刻な様子ではなかったことは幸いでした。
好きな著書を問われ、「あえていえば椎名鱗三の『生きる意味』です」との答えでした。私の知らない本ですが、著者は共産党からの「転向」を余儀なくされた人で戦後から1960年代にかけて輝いていました。クリスチャンにもなりました。人生の経験を重ねて信仰に至る人とそうでない人の違いはどこで生まれるのかというのが私の疑問ですがこれは余談です。
私はこのような場でよく質問をします。この日も「上脇さんを動かしているものは何ですか?」という質問が浮かんだのですが控えました。それを聞いてどうする、結局は自分の問題だろうと思い直したわけです。質問のための質問はだめよとアヅマに言われていたことも頭をよぎりました。
パネルディスカッションには立憲民主、共産党、社民党の県連代表者が加わりましたが、話の内容(情勢分析と運動方針)はもっともながら、「話し方」に魅力がありませんでした。前も似たことを書きましたが(131「届く声を持つということ」)、言葉が身体から出ていないためどこか空疎なのです。私は十年一日という言葉を思い出しました。時間の制約もありパネラー相互のやりとりがなかったことも残念(そんな例はほとんどありませんが)。
偉そうな言い方をしましたが、しかし全体として悪くないディスカッションでした。立民関係者から「嘉田さんと斎藤さんが維新に行き、皆さんの支援を裏切ることとなって申し訳なかった」との謝罪の弁も出ました。票が第一という立民の姿勢が問題だけれど何といっても相手が悪い。嘉田さんは名うての「泳ぎ上手」です。ビワマスの友人なら「嘉田には魚道がいらん。滝でも登りよる」と言うでしょう。議員もいいけれどイトマンのスイミングコーチの方が向いていると私は思います。
最後にひと言を求められて上脇教授いわく。~ まだ裏金問題は終わっていません。これからも告発を続けます。告発は誰にでもできます。無理をする必要はないがあきらめてはならない。いまより良くなるんだと信じて自分に可能なことをする。それが明るい未来につながる。それを信じることが大切だと思う。主権者として発言すること。ともにやりましょう。~
私がさそった友人と2年ぶりに講演会場で会いました。彼女は「あざみ日和」というブログを書いており、おたがいブログを通して相手の健在を確認するような状況でした。顔をみて安心しました。私にとって「おまけ付き」の講演会の報告は以上です。
一晩ねて思い出したことを追加します。
講演会の最後に主催者挨拶があり、まだその後に若い男性(会場できびきび動いていた人)が司会の紹介をうけマイクを握りました。「政治が大企業に誘導され弱者に光が当たらない。一方で何十億何百億の税金がムダになっている。その分を授業料の無償化や若者の就職支援、こども医療などに回してくれたらどんなに助かるか。」という趣旨のことを彼は言い、ひときわ大きな拍手が起こりました。
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