2025/02/07

番外)明け方にトイレに起きる方へ

 「21世紀日本の『公』を考えます」と大見得を切っておきながらこんな記事を書くのはさすがにアウトだろう、しかしこれまでから脱線すれすれだ、そういえば「笑って許して」という歌があったな、和田アキ子だったか(昔はよかったがもう身を引けばいいのに)、今回は一つ「許して路線」で行くか等と考えながら番外編を書くことにしました。私くらいの年齢の方のお役に立つことが万一あれば幸いです。

 私はもとはアヅマもうらやむ「安眠人間」でしたが今は睡眠薬が欠かせません。山歩きも晩酌増量も効果がないけれど、お風呂で温まり「ゾルビデム」を一錠のんで布団に入ると何とか眠りにつけます。ところが朝まで寝ることはまず無理で大抵トイレに起きるのです(トイレを必死に探しまわる夢もよく見ます)。時計を見ると3時とか4時。後はもう眠れません。これも齢だ、仕方ないと諦めていた私です。ところがある日のこと。

 身体のある部位の筋力をきたえることによって過敏な尿意を抑制できるという記事を見ました(私がよくやり玉にあげるネット情報です)。その記事をマイルドに表現すると ~ 人には大小二つの「出口」があるが、その周囲に出口の開閉に関与している括約筋がある。これを収縮させる(あたかも門を鎖すように力をこめる)、ついで緩めるという筋トレを行う。くり返すことにより筋力が増し結果として尿意が軽減される ~との説明です。「筋力」と「尿量」は関係がないけれど「蛇口を固くする」ことが決め手のようです。

 さっそく私はこの筋トレをやりました。失敗して損はありません。腕立て伏せやスクワットと勝手が違うけれど、トイレで温水シャワーを使用している時や無念無想でベッドで横たわっている時に相手の「存在」は感知できます。こちらが欲すれば随意筋のサガで素直に応えてくれます。いったんコツを飲み込んだら歩いてもよし座ってもよし。強弱、長短、緩急も自在です(変化をつけた方が目的に合いそう)。音楽に合わせるならウィーンフィルのニューイヤーコンサートでよく演奏されるラデツキー行進曲がお勧めというのは冗談ですが。

 これをひと月ほど続けるうち、私はトイレに起きなくなりました。不思議だが本当です。原因は筋トレ以外に考えられません。そこで昨年11月、うなぎを食べながらT君に意見を求めました(うまい具合に彼はお医者さんです)。T君は、「うーん、それもそうだねえ、、」と思慮深そうに答えましたが、にこやかな表情の下に一瞬、驚嘆の色が浮かんだのを私は見逃しませんでした。彼がこの新事実に心を動かされたことは明らかです。これで筋トレはお墨付きを得たと私は思いました。

 見解を聞きたいお医者さんがもう一人いますが、その人は上品で繊細な女性なので私も括約筋の話など気安くできません(T君が下品で粗野だというわけではないけれど)。そこで今のところセカンドオピニオンは得られていませんが、少なくとも私において顕著な効果がありました。似た悩みをお持ちの方には試される価値があるかもしれません。また、トイレの回数を控えるのも手だそうです。膀胱を膨張させるとその柔軟性が多少は回復するのだとか(これも筋トレのようなもの)。もちろんやりすぎはいけません。

 勢いにまかせてあと二つ。
 アヤハディオのトイレに「従業員もトイレを使わせていただきます。なおトイレでのご挨拶は遠慮させていただきます」というプレートが貼ってあるのを私は前から面白く見ていました。内容はもっともです。そんな場で「まいど有難うございます」とは言うのも聞くのもお笑いです。でもそこまでお客に気を使わなければならないのか。アヤハの従業員も平和堂で買い物するときは威張るのでしょうか。私はこうした貼り紙の裏に潜んでいる事情にいつも腹を立てています。

 話は変わって人間ドックを受ける際、「前もって二日分の検体を採取・格納してある緑色の樹脂製の小袋」を提出するのは、私の年齢になっても微かな緊張を伴う行為です。先方は仕事だから平気だとしても、こちらは少し申し訳ないような恥ずかしいような気分で、こんな時に気の利いた言葉の一つも添えたいものだとかねて思っていました。すると1月のドック受検の前日、「つまらないものですが」というセリフが浮かんだのです。うるわしく伝統的な言葉です。これはいいかも。

 相手が冗談の好きな人なら「わーありがとうございます。お昼にみんなで頂きまーす」などと調子をあわせてくれ笑顔のうちにことが運ぶ。しかし人によっては本物の「差し入れ」と勘違いするかもしれない。万一に備えて「たぶんお口に合わないと思います」と釘をさしておいた方が無難か、などと様々な想念が巡ります。しかし空振りに終わりました。一夜あけた病院の受付で係の人は瞬時に「つまらないもの」を回収し、開いている手のひらで待合スペースを示しました。名前を聞かれて答えただけの私は脱力してソファに座りました。

 コースの最後に控えている胃カメラで今年も七転八倒しました。看護師さんはすぐに「ああこの人はあかんな」と思ったのでしょう。ずっと私に声をかけ、背中を優しくさすってくれました。私は涙とよだれにまみれながら心の中で手を合わせました。受付も検査室もプロの仕事は頼りになるものです。とすると、上品で繊細な彼女も括約筋の話などへいちゃらだろうか。これは慎重な検討を要する事項です。次回は身を清めて金時鐘さんの講演会の報告を行います。

<追記>
 記事をアップした後、二人の友人に「あなたのことがブログに書かれているよ」と通報しておきました。Nさんからの返事に「自分は残念ながら上品でも繊細でもない」と前置きがあり(それが上品繊細の証拠なのですが)、「過活動膀胱の原因の一つに骨盤底筋の筋力低下があり、筋トレは理にかなっているようだ」と書かれていました。心強いセカンドオピニオンです。

 T君からは返事なし。というのもつい先日、彼が送ってくれた「肉とすっぽん ~日本ソウルミート紀行~」(平松洋子・文春文庫)についてメールのやりとりをしたばかりです(これは自治体職員OBとしても心惹かれる肉と地域と人々のドラマ)。彼はヒマ人の私より多読で「縄文人」や「暗闇ハイキング」のことまで知っています。無類のエッセイスト伊藤礼(伊藤整の子息)を教えてくれたのも彼です。まあいずれにしてもファーストオピニオンはゲット済みです。





 
 

 





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