2026/03/19

307)なぜ悪人が上に立つのか?

 世界のいたるところで悪人が上に立っており、また私たちの大多数は「自分が悪人でなく、上に立ってもいない」と考えていますから、「なぜ悪人が上に立つのか」という問いはもっとも至極に思われます。典型例はもちろんトランプです。彼は先日、イランの小学校をミサイル攻撃し(血がつき破れた教科書の映像が流れました)、記者の質問に「その件は知らない」と返答し、イラン指導部を「人間のクズ」と呼びました。他にも数え上げるときりがありません。

 本邦首相もこれと同類です。詐欺まがいの解散を強行し、そのため審議時間を削られた国会で被害者面を見せ、首相答弁を逃げ、衆議院の議論を短時間で打ち切りました。本来は「私が首相でよいですか?」でなく、「新年度予算案はこれでよいですか?」と問うべきです。いわゆる責任ある積極財政、青天井の防衛費、武器輸出、スパイ防止法等も国民の前でちゃんと議論されていません。高市氏は首相の責任を果たさず、ふてぶてしさに磨きをかけています。

 今回のテーマ「なぜ悪人が上に立つか」は英国の政治学者ブライアン・クラースの著書の邦題であり、~ 人間社会の不都合な権力構造 ~ というサブタイトルがついています(芝田裕之訳・東洋経済新報社)。これを読んだビワマスの神・O君が「めっちゃおもろかった」と言うので私も一読を、と県市の図書館に行ったけれど両館とも貸し出し中でした。ですから私はまだこの本を読んでいません。

 しかし、O君の書評(私あての長文のライン)が的確だと思われたし、彼に言われて関連するサイトも覗いたので、その範囲で少しだけ書きます。本書「なぜ悪人が上に立つか」における悪の定義は「 evil 」(倫理的な悪)ではなく「 bad」(高潔な権力者としての資質に欠如)であるとされており、著者は、「bad であるがゆえに権力者となるのだ」という倒錯した事情を次の3つの心的傾向から説明しています。

 その一、ナルシシズム。多くの権力者は過大な自己愛を持ち、自己中心的な心性を有する。特権意識があり他者からの賞賛を求める欲求が強い。
 その二、マキャベリズム。多くの権力者は権謀術数に長けている。目的達成のために他人を操作し、手段を選ばない冷徹さを発揮する。高い計算能力をもつ。
 その三、サイコパシー。多くの権力者は精神病質的傾向を有する。冷淡であり、感情や共感が欠如している。衝動性や反社会的行動に特徴がある。

 以上3つは既に脳科学の分野で Dark  Triad (ダークトライアド)として知られている「悪の三要素」であり、こうした傾向と権力との間には心理学的、社会学的に非常に強い相関があることが研究で示されています(デルロイ・ポールハスとケビン・ウィリアムズらによる)。ひと言で言えば、ダークトライアドの傾向をもつ人は権力を手に入れやすく、またその地位を維持するためにその特性をフル活用する場合が多いといいます。それは次の通りです

 ① 上昇志向と権力への執着 ― 自分が特別な存在であると証明するため高い地位を求める(ナルシシズム)。組織の力学を読み解くのが得意で戦略的に出世コースを歩む(マキャベリズム)。リスクを恐れず大胆な決断を下すため、競争の激しい環境で勝ち残る確率が高い(サイコパシー)。

 ② 有能に見えるカリスマ性 ― 第一印象が非常によくリーダーシップがあると誤認されることが多々ある。自信にみちたふるまい(ナルシストの過剰な自信)は、この人について行けば大丈夫だという安心感(錯覚)を与える。マキャベリストは相手の求めるものを察知し、自分を魅力的に演出する能力に長けている。サイコパシー傾向があると情に流されずリストラや厳しい交渉を行えるため、一部の企業文化では「強いリーダー」として評価される。

 ③ 権力の獲得・維持 ― 権力を手に入れた後、その地位を守るため他者を操作するダークな手法を用いることがある。部下の手柄を自分のものにしたり、ライバルを秘かに陥れたりすることに罪悪感を抱かない(操作と搾取)。
 組織の論理や自分の利益を優先し個人の犠牲をいとわないため短期的には高い成果を出すことがあるが、長期的には組織を崩壊させるリスクがある(共感の欠如)。

 本書に戻って著者のクラースは、「悪人が権力を握るのは個人の性格ばかりでなく社会・政治・心理面の複合的要因による、すなわち競争システムは悪人をリーダーに押し上げる構造になっている」と指摘します。選挙や昇進の競争は攻撃的、策略的で自己主張の強い人が有利であり、誠実で慎重な人はそうした争いから身を引きやすい。その結果、自然と権力に残るのは悪人傾向の人となるというわけです。
 またトランプに関しては次のように言っています。「米国民は知識社会を支配するエリートのサイコパスを妥当するために『下級国民の王』としてダークトライアドのトランプを選んだ」。

 そうか、そういうことだったのか。私が長年かかえてきた苦い実感の正体が分かりました。冒頭の二人以外にも実例は多数あります。おそらくプーチン、ネタニヤフ、習近平、金正恩らも「悪人」に違いなく、やや「見劣り」がしますが、橋下徹、吉村洋文、斎藤元彦、越直美らの諸氏も「悪人」です。このブログは越氏の誤った市政運営に警鐘を鳴らすことを動機の一つに始めましたが、閲覧数50万の大台に乗ったところで再度「悪人」を論じるのはやはり何かのエニシでしょうか。

 付言すると人間の心的傾向は連続的であり、例えば「ナルシシズムか否か」を線引きして区分できません。ここから右は悪人、左は善人という分け方もナンセンスです。そしてダークトライアド傾向の強い人にはそれなりの魅力を有している場合があります。また、「善人が上に立つ」実例にマハトマ・ガンディーやネルソン・マンデラ等があって、私たちはこうした重要な事実も忘れるわけにいきません。

 もう一つ。先に書いた通りこの本において「悪」とは evil(邪悪) ではなく bad(不適格)であると定義されていますが、「権力者として不適格である」ということは、その影響の大きさ、深刻さを考えると、「邪悪な存在である」ということに他なりません。ゆえに「上に立つ者」が 「bad」 である場合は同時に「 evil」 であると私は考えます。大統領通算5年目のトランプは双方に当てはまります。就任して日の浅い高市氏がこれに追随しないことを祈ります。両氏の会談が注目されます。



0 件のコメント :

コメントを投稿

1月9日をもってコメント受付をすべて終了しました。貴重なご意見をお寄せ下さったことに心からお礼申し上げます。皆さまどうも有難うございました!なお下の(注)はシステム上の表示であり例外はございません。

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。