2026/09/01

318)お座敷民主主義

 前回は精神科の名医であった中井久夫の著作「世に棲む患者」を取り上げました。といっても原文を多く引用して賛辞を添えただけのこと、論評と呼べるものでなかったことは皆さまご覧のとおりです。さっそく友人O君(ビワマスの守護神、斎藤元彦の天敵、驚異の言文一致男)から鋭い突っ込みラインが入りました。(やはり来たか!)

 ~ おはよう! 今回は引用が長かったなあ。思索というより感慨の一文やったな。アパート全焼の話をもっと深掘りして欲しかったわ。こういうケースで市に責任あるとしたらどういう責任?とか、守秘義務のたった4文字でなんで大家がナットクせざるを得ないのか?とか。そこに茂呂独自の「世に棲む」が出て来たやろと思うねん。

 薬売ってるときは、精神科の医者も行ってたわ。3つか4つの病院が集まるカンファレンスの手伝いもしてた。どう診断してどう治療すべきかという症例を持ち寄る場やけど、そこに実際の患者さんが来るねん。難しい症例の患者さんが話すことは支離滅裂で、AからB、BからC、CからDと辻褄の合わへんことを話し出す。医者たちはA、B、C、Dが表に出てくる芯には何があるのかを探しとった。頭の根っこの働き方を診断するという感じで。結論に行きついた時の医者たちの卓見は目からウロコで、あれはインパクトのある仕事やったわ。

 この前、「敵」ちゅう映画をネトフリで見て、茂呂と朝飯が食いとなった。鮭ひときれだけとかめちゃ質素。そやけどきちんとした朝飯。それ以来、バローで買うた鮭の甘塩切り身に自分で追加の塩をして冷蔵庫でもうちょっと熟成させるというのをやってるねん。~

 「引用が長かった」と指摘するO君のラインをそっくり引用させてもらいましたが、彼の文章もまた生き生きしてよいのです。さて前回記事で、市職員である私が見つけたアパートに入居した生活保護受給者の女性が自室に放火し建物が全焼した、と書きました。このことに対する市の責任についてもっと述べよとO君は言います。それにより行政が一枚加わった『世に棲む患者』の在りようが見えてくるはずという彼の意見はもっともです。

 火災にあった大家さんが問題にしたのは、「本人が精神病院に入院していた事実を知っていた私が、それを大家さんに伝えなかったこと」でした。しかし、これはずばり個人情報(当時この言葉はありませんでした)であるうえ、病状が改善し社会に戻れると医師が判断して退院に至ったわけですから、あえて入院歴を大家さんに伝える必要もないと私は判断しました。精神疾患と放火の因果関係も定かでありません。

 この時、入居契約の連帯保証人はおそらくいなかったと思います(記憶があやふや)。私が保証人になるわけにはいきませんでしたが、いずれにせよ大家さんには、「市の後ろ盾」という安心があったはずです。すると私がケースワーカーとして適切に訪問、支援を行っていたかどうかが問われますが、この点に落ち度はありませんでした。「世に棲むこと」が軌道に乗りかけて私が安心した時に火事が起こったのです。

 結局、市が負うなら「道義的責任」であったと思います。行政が関与していたために大家さんがごく自然に抱いたであろう信頼感を結果的に裏切ったわけですから。今なら訴訟になっていたかもしれません。すでに書いた通り、課員総出で焼け跡を片づけ、大家さんも仕方なく矛を収めてくれました。火災保険がたくさん出たことを今も祈ります。O君の納得を得られそうにありませんが、以上、追記といたします。

 話かわって、トランプが国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長を制裁対象にしました。その行為の是非は論じるまでもなく、理由や動機もしかりです。とてつもない権力におぼれエゴの肥大化した愚人の度し難さはすでに述べました(なぜ悪人が上に立つか)。一番の問題は、日本政府はこの事態にどう対処するかです。しかるに、「法の支配による国際秩序の維持」を一つ覚えとする奈良の女が、見て見ぬふりをしているではありませんか。

 高市首相は「残念に思う」とか「今後とも米国を含む各国と意思疎通を図っていく」とか言ってる場合じゃないでしょう。日本政府よしっかりせい、という署名活動が行われていることを、友人Rさんのブログ「あざみ日和」で知りました。その最新記事のタイトルは「署名しました」というものであり、主語はもちろんRさんです。私もこれに倣うことにしました。

 要請文のあて先は高市首相、茂木外相、平口法相および米国政府で、内容は次のとおりです。~ ICCの中根所長に対する米国による制裁の即時撤回を求めます。日本政府は制裁を拒否し、赤根所長を支持・保護する具体的な行動をとって下さい。~
 日本が米国に毅然たる態度を示すことでトランプの機嫌を損ねたとしても、総合的に考えると国益に利すると考えます。
 ご参考までに署名のページを掲げます ⇒ https://hrn.or.jp/news/29397/

 政権に抗議したいことは山ほどあるのに街頭に立ちもしない私がクリック1つで参画するのはまことに安直ですが、ユニセフのマンスリーサポートにせよ原子力情報通信室への寄付にせよ、私の「活動」は所詮そんなものです。お座敷民主主義上等と開き直っています。
 また、各地の豪雨も氷河の崩落・大洪水も地球の緊急警報ですから、まったくあせることばかりです。





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