2019/12/08

104)裁判報告③~元人事課長証言「公文書改ざん」~

<事実経過>
 元人事課長の証言概要をご紹介する前に経過を整理します。H262月、原告が「保有個人情報開示請求」を行い、翌3月、市は「不開示決定」を行いました。その後原告側は、市が不開示を決定するために作成した起案文書を公開請求し、入手しました。その起案文書は本来「部長決裁」で済むところを「市長決裁」としており、また表紙に書かれた標題、すなわち「部分公開決定してよろしいか」という伺い文の「部分開示」の箇所が「不開示」に手書き修正されていました。

 そして、原告側が同時に入手した文書(原告の異議申立てを受け情報公開・個人情報保護審査会に諮問する際に作成された起案文書)には、「不開示決定」の起案文書(文書管理番号が一致する同一の文書)が参考として添付されていましたが、この文書においては標題が「部分開示」のままで「不開示」に手書き修正されていませんでした。「部分開示」の起案が市長決裁を受けた後に「非開示」に書き換えられたとしか考えられません(ブログ94・回答書のとおり)。

 これに対し、当時主幹として文書を起案した元人事課長は、最初は「部分開示」で起案したが、決裁を持ち回るいずれかの段階で誰かから疑問が呈され職員課や市政情報課長と協議を重ねた結果、起案を「不開示」に作り替えて市長まで決裁を受けた、と証言しました。その際に標題の「部分公開決定してよろしいか」という箇所を修正し忘れ、審査会への諮問後に気づいて手書き修正したと説明しています。
 
<尋問概要>
「質問」
 いずれかの段階で疑問を呈されということですが誰がそのような指示をしたのですか?

「元人事課長」
・誰に言われたかは覚えていません。
・専門部署である市政情報課に言われたかと思いますが総務部長かも知れません。
 
「質問」
 手書き修正したのはあなたですか?

「元人事課長」
 ・起案を作りなおしましたが、件名は「部分開示」のままで修正するのを忘れました。
 ・起案の中身は不開示の起案となっています。
 ・手書き修正したのは私である可能性がありますが書いたことまで覚えていません。
  
(茂呂注:当時の職員課長は、「市長決裁というのはそれだけ細心の注意を要し、件名と中身が違うものを決裁した記憶はない」と証言しています)

「質問」
 どこを修正したのですか?

「元人事課長」
 内容のところです。

「質問」
 専門部署の市政情報課も入って何回も協議したのなら、根拠条文が部分開示の18条のま
まのはずがないのではないですか?

「元人事課長」
 修正するのをもらしました。
 
「質問」
 内容を修正したといいますが、起案の本文には「部分公開することと決定し」とあり、通知文(案)も「部分開示決定通知」となっています。一体どこを修正したのですか?
中身はどう見ても部分開示のままですが。

「元人事課長」
 いずれも修正するのをもらしました。

「質問」
 審査会の答申では、「条例第20条の適用を検討してよい状況であった」と指摘しています。これを検討すらしなかったのは、初めから「不開示」と決まっていたからではないですか?

「元人事課長」
 ・・・・・・(沈黙)

「質問」
 決裁はどこまで回っていたのですか。普通は、おおむね上位者に根回し、というか合意形成してから決裁をまわすものではないのですか?

「元人事課長」
 課内まではそれで回していました。

「質問」
 決裁をやり直したとして、1回目はどこまで回したのですか?市長までは行っていないのですか?

「元人事課長」
 市長までは行っていません。

「質問」
 個人情報開示請求を不開示にする決定について、なぜ部長決裁を市長決裁にしたのですか?

「元人事課長」
 前の公文書公開請求のときも市長決裁としたので同じようにしました。

(茂呂注:前の公文書公開請求は部長決裁でした)

<参考:個人情報保護条例>
(裁量的開示)
20条 実施機関は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報(18条第5号の情報を除
く。)が含まれている場合であっても、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示することができる。

<所感>
 起案文書(決裁文書)が市役所を動かすのですから職員は皆その重要性を理解しています。特に市長決裁となれば起案者も決裁者(通常数人から十数人)も最大限の注意をはらいます。さらに、「一部開示」と「不開示」という正反対の処分の文言を起案を見た職員全てが見逃したとは、とても考えられません。急ぎの持ち回り決裁においても、最低限、伺い文(~してよろしいか)のところは確認します。「ここを見なくてどこを見る!?」というポイントです。

 なにより強調したいのは、当時、越市長を除くすべての関係職員が、法廷で事実に基づく公正な審理が行われるために情報を開示するべきだと考えていたことです。したがって決裁の途中で疑問が呈されたことはあり得ず、もしそうであったら、何を置いてもまず私に相談があったはずです。今回、関係職員がそろって証言を拒否したのは当然の話なのです。今は有耶無耶にされている当時の状況に照らしてみれば、元人事課長の証言の不自然さが一層明らかになってきます。踏んではならない踏み絵を踏んだ結果です。










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