2024/04/11

231)英語スピーチ

 岸田首相が米国議会で英語の演説をするそうです。練習に励んだとの報道もありご本人は気合いが入っていますが、これで岸田氏の点数が上がるでしょうか。英語は国際語であるとはいえ、日本の首相が外国に向けて発した言葉を日本人の多数が翻訳によって理解することに違和感を覚えます。だいたい岸田氏は演説そのものがヘタです。これを英語で行うとどうなるか?  ひょっとしてマイナス同士の掛け算のようにプラスに転じるかも知れませんが。

 それにしてもわが国の政治家は「言葉が命」のはずなのにスピーチがふるいません(共産党の小池氏など少数の例外があるけれど)。古くは言霊信仰があり説法や話芸の伝統があり、近代に言文一致体を獲得して久しいのですから、この社会にもっと豊かなスピーチが生まれてもいいはずです。芸術や科学の分野の講演はまあまあですが(私の知る狭い範囲で)、対話の姿勢を根本に据えつつ自分の主義主張を広く訴えることを本旨とする政治家の演説は粗末です。これをテーマとする研究論文があってもいいくらいです。

 もっとも今回は岸田氏がいかに喋るかより何を喋るかの方が重要です。グローバルパートナーシップというと聞こえはいいけれど、米軍基地の存在と運用一つをとっても日米関係の実態は家来と主人です。中国やその向こうのロシアはたしかに脅威ですが、米国に忠誠を尽くすことが長期にわたって日本の安全を高めるベストの方策であるとは考えられません。やはり憲法を頼りに平和希求国家としてふるまうことが「得策」です。攻められたらどうする、との意見もあるでしょうが、米国の前線基地として攻撃される可能性とどちらが大きいか広く議論すべきであると思います。

 三井寺(天台寺門宗総本山 園城寺)は大津の代表的な名刹の一つで私たちは学生時分から数え切れないほど訪れました。しばらくご無沙汰で、昨年はようやく円珍関係文書の拝観に出かけました。今年の桜はもう散りかけているでしょう。このお寺は「戦後70年」の節目に憲法堅持の声明を出しています(ホームページで閲覧できます)。当時進められていた集団的自衛権を含む安保法案の問題点を指摘し「次の戦争」を引き起こすことなく豊かな国土を次世代に伝えていこうとの声明です。お寺の今日的・社会的な存在意義についての自問が底流にあります。

 今回は三井寺の魅力を書くつもりで岸田首相の件は前置きだったのですが「英語演説日」が明日と知ったので一旦ここでアップします。私はむしろ大谷選手の英語を聞きたいところです。彼は岸田氏と違って日本の「公的代表」ではありませんし、英語圏で生きており、しかも疑惑の渦中にありました。英語で記者会見するのに支障ないどころか最善の方法であったはず。冒頭にジョージ・ワシントンと桜の木の逸話を引くとなおよかったと思います。私は野球にまったく興味がないけれど(攻守の順番が決まっていて退屈)大谷選手の隠れファンなのです。4号ホームランを待っています。




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