大津市政13 ~教育行政~ 英語教育

② 英語教育 

 越市長は、グローバル人材育成のため小学校1年生からの英語教育を充実させたいと考えられ、予算の押し付けを行われました。「押し付け」とは不穏当な言葉ですが、教育委員会が内部議論の上で練り上げた予算要求に対して厳しい査定を行い、一方で教育委員会がまったく要求していなかった英語教育の新事業実施を主張されたのです。
 当然ながら教育長はじめ教育委員会がこぞって反対意見を述べましたが、越市長は予算権をたてにご自分の考えを押し通されました。そして協議の中で若干の歩み寄りがあり、追加項目を加えた予算要求書が再提出され、外形上は「教育委員会の要求を市長が認めた」ことになりました。
 しかし実質は「押し付け」と言わざるをえません。これは私も協議に参加していた平成26年度予算編成時の出来事です。 
 この予算に限らず越市長と教育委員との協議は何度も行われていましたが、基本的に越市長が自説を主張される場であったとの印象を持っています。
 それに対し教育委員の方々が、教育の理念や学校現場の実態について、真剣に、穏やかに、粘り強く説明されていた場面の数々が記憶に残っています。
 私の出席が認められた場合には、私から、教育委員会の意見に十分に耳を傾けるよう越市長に進言し実りある協議となるよう微力を尽くしましたが、たいてい自分の力不足を痛感する結果となりました。

 ここで英語教育の重要性を否定するものではありませんし、子どもが英語に親しむこと自体に反対する市民はまずいないと思います。現に文部科学省は、平成32年度から小学校で実施予定の次期学習指導要領の改訂について中教審に諮問しました。その中で、外国語活動を現行の「5年生から」を「3年生から」とすることが検討されています。これは先に記した学校教育の目的や特性などに鑑みてゆっくり慎重に実施に移されていくことと考えます。
 これに対し大津市では、平成28年度からすべての小学1年生に対し週3回の英語教育が始まる予定です。確かに「先進的」ですが、実施に至るプロセスに本当に無理はなかったのか、この試みの評価をいつ、どのような手法で行うのか等、大きな疑問が残ります。

 元来、小学校低学年では、意思疎通の手段であり全教科の学習の基礎となる国語の教育が最も大切とされ、多くの時間が充てられています。子どもが国語を学びコミュニケーション能力を高めることと、その能力を発揮し地域での日常の生活を通じてアイデンティティの獲得を図ることを目的としたこの時期の国語教育は、同時にグローバル人材の「原石づくり」の側面をもっています。
 教育現場では、こうした考えに基づき綿密なカリキュラムを組んでおり、ひとコマずつの授業が必然性を持っています。その中に新たに英語の授業を加えると他の教科の削減に直結します。
 時間数の面でも全体的な教育目標達成の面でも必ずシワ寄せが出てきます。
 押し付けが許されない大きな理由はこのような教育現場の混乱です。だからこそ十分な議論が必要です。

 もし、越市長が、どうしても英語教育を充実させたいと望まれるなら、まず理念のレベルで教育委員会に伝え、現在の教育目標や教育課程から見てどう評価できるかについて謙虚に「耳を傾ける」ところから始められるべきでしょう。
 その結果、OKとなれば先ほどの話のとおり、様子を見ながら少しずつ実践に移していくことになるでしょうが、主体はあくまでも教育委員会・学校です。
 繰り返しますが、仮にこのようにして「英語教育の充実」が上手くいったとしても、次の市長が異なる主張をしたらどうなるのでしょうか。ころころ変わる猫の目教育の被害者は子どもです。
 だからこそ教育は、「熟議のうえのマイナーチェンジ」を旨とすべきだと考えます。

 今回の地教行法改正で新たに設置された総合教育会議でも、首長と教育委員との協議調整は行うものの最終的な執行権限は教育委員会に留保されることとなったのは当然のことと考えます。
 越市長のたっての要請により外部から招かれた優れた前教育長が辞任された後、今度は内部登用(元秘書課長、教育部次長であった職員)の教育長が誕生しました。
 この新体制での総合教育会議が本当に実りある協議となり、大津の子どもの健やかな成長のために機能することを願わずにはいられません。
 以上、越市長と英語教育について振り返りました。
 法の趣旨に沿っているか、教育現場の声を聞いているか、教育委員会の考えを尊重しているか、予算権をかざして教育委員会を従わせようとしていないか等々、自治体の首長が自らを再点検する際のチェックポイントがここに幾つも含まれていると私は考えています。

6 件のコメント :

  1. 沢井はじめ2015年9月23日 10:47

    予算権をかざすというのは、いうとおりにしなければ予算を組まないということでしょうか?
    教育委員会は独立してるのではないのですか?
    予算権があるからと言うことを聞かせる事が出来るというのは、独立ではないのでは?
    教育って、そんな事で左右されるものなんですね。

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  2. 小1からの英語教育が英語堪能な大人を生み出すことは、まず間違いありません。
    私は多くのフィリピーナを知っていますからそう考えるのですが、一緒にアメリカ映画を見ていましても、字幕よりも先に彼女たちが笑い出します。それくらいに英語が分かっています。洋楽のカラオケでも素晴らしい発音です。
    聞けば、小学校から英語漬けだったといいます。学校で母国語を使ったら廊下に立たされたそうです。教科書まで英語表記だったと言っていたように思いますが、高校になったらすべての教科が英語で書いてあると聞いたことはよく憶えています。

    フィリピンの場合、仕事を国外に求めざるを得ない貧しさがあり、海外労働者から家族への送金が外貨獲得の重要手段だという国情があります。つまり生きるための道具として英語能力が必要とされています。この相違を抜きにして日本でも小学校から英語漬けにすべきだと論じるのは早計ですが、越直美市長の早期からの英語教育作戦が英語堪能な人材育成に役立つであろう点については、私の知るフィリピーナがいい実証モデルだといえます。

    このような実利的効果と、そもそも小1の教育がどのようにあるべきかという理念との間で、まずスリ合わせが行われるべきです。そのスリ合わせは多岐にわたるはずで、おそらく時間も要するはずです。第一段階としてプロジェクトチームのような形態で検討を進めることが、責任ある教育行政の姿です。
    教育予算の時点でいきなり持ち込んでしまってもいい改革だとは思いません。

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  3. 予算権についてのコメントが寄せられたので。首長の担任事務として、地方自治法第149条第2号に「予算を調整し、及びこれを執行すること」という規定があり、予算案を作成し議会へ提出する権限は首長しか有しておりません。また、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第29条では「地方公共団体の長は、歳入歳出予算のうち教育に関する事務に係る部分その他特に教育に関する事務について定める議会の議決を経るべき事件の議案を作成する場合においては、教育委員会の意見をきかなければならない。」とあり、教育に関する予算編成について、首長は教育委員会の意見を聴く義務を規定しています。
    この規定は、「教育に関する予算編成権が教育委員会にあり、それを首長が総合調整で減額する場合には教育委員会に意見聴取しなければならない」、とした旧教育委員会法の趣旨を引き継いだものです。教育に関する独立性を担保するための規定なのですが、これはもちろん「首長になるような人は教育委員会の意見を十分聴く姿勢を持っている。」という性善説に基づいています。

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  4. 教育委員会事務局と市長との協議が平行線なのは、富田前教育長が日経ビジネスに書かれています。英語教育の予算だけが突出していることに異を唱え、何度も協議したが聴いてもらえず、意見が合わなかったことが辞めた原因であると。
    教育委員会事務局と市長の協議の場では茂呂さんが両者の間に立って何とか市長に話を聞いてもらえるよう努力されていたのを思い出します。当時のやり取りを詳細に書くことはここではできませんが、茂呂さんが「熟慮すべきで簡単に結論を出す問題ではない。」と意見を述べるのに対し、市長は「予算権は私にありますよね。」と激高されていたことや、地方自治法の規定上できないことを、何度も何度も検討するよう指示されていたことなど、おおよそ、ここに書かれているとおり協議にはなっていなかったと思います。
    なお、市長は平成26年6月市議会で「茂呂氏、富田氏が辞任したことに対し、自らの政治姿勢を省みることは」という質問に対し、「職員との関係においては、私は従来から職員とのヒアリング等の協議に最も時間をかけ~職員との意思疎通を図ってまいりました。」と答弁されています。

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  5. 予算と人事により市長は権限を十分に発揮して、市民に分かり易くマスコミを通して伝わる看板のために、日々市役所職員は働いているのですね。長い目で見て、大津のためになるかはさておき。

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  6. 予算権は私にあると激昂、、、
    金を出してるのは私だ!いう通りにしなければ金は出さんぞーって、どこの金持ちですか。

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